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避難場所

「うわ、どうしたんだよその顔」


 その日の夕方、ルカの部屋に行ったら顔を見るなり驚かれてしまった。気持ちはわかる。

 ディーに目の腫れを治してもらったものの、顔色がひどいのは相変わらずだったから。


「ちょっといろいろあって。少し避難させてくれる?」

「いいけど」


 ルカが後ろを振り返ると、奥で控えていたブラウンの髪の侍女がすっと移動する。人払いの意図をくみ取って、彼女は部屋から出て行ってくれた。


「ありがと……」


 私は部屋のソファに座った。

 後ろからついてきたディーが、すぐ横にちょこんとお座りする。


「人が本読んでる間に、今度は何やらかしてきたわけ?」


 ルカの座るソファのサイドボードには、何冊も本が積みあがっていた。許可をもらったから、早速借りてきたらしい。

 子供のルカがこんなに勤勉なのに、私ときたら。

 はあ、と思わずため息が出てしまう。


「オスカーのプロポーズを断ってきた」

「は?」


 ルカが持っていた本をばさりと落とした。


「それはいいんだけど、いやよくはないんだけどね? なんか、オスカーがプロポーズするのを城中の人間が知ってたみたいで……みんなソワソワして腫物扱いしてきて、めちゃくちゃ居心地悪いの」


 なにしろ、十七年間生まれ育った王城だ。私とオスカーがどんなつきあいをしてきたのか、城勤めの人間のほとんどが知っている。

 そんな彼らに恋愛的なあれこれを心配されるのは、思った以上にしんどかった。

 ここに来たのは、ルカが付き合いの浅い知人だからだ。

 今は私のこともオスカーのこともあまり知らない人間のほうが、気が楽でいい。


「だったら受けときゃよかったんじゃねえの? 幼馴染なら気心知れてんだろうし、騎士団長の息子なら家も安泰だろ」

「条件だけよくてもしょうがないの」


 私は行儀悪く肩を落とす。


「それで隣国の王子様と結婚しようとして、破棄されたんじゃない。政治的な理由での結婚なんてもうコリゴリ。いくら幼馴染でも、国王命令のプロポーズなんて受けられないわよ」

「バッ……お前それ……」

「結婚するなら、ほんの少しでもいいから、私のことを好きだって思ってくれる人がいい」

「んんん……」


 またため息が出てしまった。

 モテなさすぎる私が、求められて結婚するなんて、夢のまた夢だ。


「プロポーズに想いを伝えない人間のことなど、気にする必要はありませんよ」


 ぽんぽん、とぷにぷに肉球で肩をたたかれた。

 ありがとうディー。

 今となっては、君の肉球だけが癒しだ。


「お前ソレ甘やかしていいタイミングなの?」

「もちろん。私は主を守るのが仕事ですから」

「……コレットがそれでいいなら、いいんだけどさあ」

「いいに決まってるでしょ」


 何があっても味方をしてくれる従者ほど、心強いものはない。

 さっき大人バージョンのユキヒョウにいいだけ抱き着いて撫でまわしていたせいだろうか。子ユキヒョウのディーもおとなしく頭を撫でられてくれる。

 ふわふわ毛皮の癒し効果、無限大。

 柔らかな手触りを堪能していると、ドアがノックされた。


「コレット、いる?」


 返事をすると、金髪碧眼の青年がひょこっと顔を出した。


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