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ご機嫌伺い

 私たちと同じように、王城で一日休んだ兄様も軍服から普段のゆったりした服へと着替えていた。


「やあ、ルカ王子。部屋の住み心地はどうかな?」

「とても快適です。お気遣いありがとうございます、ジルベール殿下」


 すっと猫をかぶり、王子様モードで頭をさげるルカを見て、ジル兄様が苦笑する。


「そうかしこまらないで。妹に接してるような口調で、全然かまわないよ」

「しかし……」

「ここの迎え入れた以上、家族として扱うって言ったでしょ?」


 それに、とジル兄様はいたずらっぽく笑う。


「俺も、君の砕けた言葉が聞いてみたいなあ」

「だったらいいけどさあ」


 被っていた猫をおろして、ルカが行儀悪く椅子に座り直した。ジル兄様はくすくすと笑っている。


「足りないものはない? 部屋にこもってばかりだと退屈かなって思ってるんだけど」

「それはさっきコレットにも言われた。図書室にいれてくれるって」

「ああ、それはいいアイデアだね。俺からも警備に話を通しておくから、好きな時に行くといい。ついでに家庭教師もつけようか」


 ルカはまたうんざり顔になる。


「だからそれはいらないって。本はともかく、めんどくせえ教師に睨まれて、勉強させられるのは勘弁」

「それは教師次第だと思うけどね?」


 ジル兄様はまた苦笑した。

 本に興味があるなら、十分勉強の素質があると思うんだけどなあ。


「無理強いもよくないし、城での過ごし方についてはおいおい考えていこう。さしあたって、これからの予定を考えるのはどうかな?」

「これから?」

「義姉さんのところに挨拶に行こうと思ってるんだけど、君たちも一緒に行かない?」


 レイ兄様の妻のサラお義姉様のことだろう。身重だからと離宮にこもっているはずだ。


「実はここに来たのも、半分はコレットに声をかけるためでね」

「ただでさえ大変な時期なのに、私たちが入れかわり立ち代わり来たら、お義姉様が疲れちゃうもんね」

「ん~……」


 ルカは部屋の中をぐるっと見回したあと、首を振った。


「俺はやめとく」

「なんで?」


 離宮への散歩はいい運動になると思うのに。


「昨日、レイナルド陛下も言ってたろ、出産が近いから警備を強化してるって。部外者の俺がついてったら兵が緊張する。それに、王妃殿下にしたって、いきなり知らん子供に会わされても困るだろ」

「君はなんというか、いろいろと聡いねえ……」

「コレ一本で生き残ってっからな」


 にやっと笑うルカにはかなわない。

 結局、私たちはルカを置いて、サラお義姉様の暮らす離れに向かうことにした。当然のような顔をして、ディーがあとからついてくる。


「お義姉様が初対面なのは、ディーも一緒なんだけど」

「それ以前に、私はあなたの従者です。おそばを離れるつもりはありませんよ」


 ぴんとヒゲを立てて歩くディーを見て、ジル兄様がへにゃっと眉を下げた。


「君は警戒対象というよりは、癒し枠かなあ」


 ふわふわもこもこのユキヒョウの赤ちゃんは、お義姉様が喜びそうだ。



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