表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

62/92

王女の采配

 余裕がない、を「だから切り捨てよう」と解釈されてしまったらしい。


「私が言った『余裕』は別の意味よ」

「うん……?」


 状況がよくわからないのか、獣人ふたりは首をかしげている。


「私はサウスティの姫なの。地位が高いぶん、部下にもそれ相応の立ち振る舞いが要求されちゃうのよ」

「特に従者は主の一部とみなされることが多いですからね」


 雇用の自由度が高い分、責任も重大なのだ。

 サウスティ王宮に彼らを連れていくなら、最低限まともな服を着せて、礼儀作法を叩き込まなくてはならない。侍女ひとりおらず、自分の身の回りのことさえままならないのに、さらに2人も人間を抱えて養うのは無理だ。


「不要には変わらないじゃないか。やっぱり……!」

「だからどうしてそこで『殺される』って結論になるの。所有する余裕はないけど即、息の根を止めなきゃいけないほど切羽詰まってないわ」


 なぜそこまで恐れられなくてはならないのか。

 絶対原因はエメルだよね!?

 あの子、戦闘奴隷をどう扱ってたの。


「で、結局どうするつもりなんだ?」


 ルカがにやにや笑いながらたずねてくる。

 君は君で、他人事だと思っておもしろがってるな?


「とりあえず、殺すはナシ。生かす方向で考えましょ」

「だが、お前の従者とするのは反対だ」


 オスカーが低い声で断言した。

 それは私もわかってる。

 私はふたりの獣人、特に黒い毛並みの獣人の顔を覗き込んだ。


「ええと……あなたたち、私に従うって言ってるけど、本当にそうしたい?」

「……?」


 言っている意味がわからなかったらしい。獣人はこちらを見つめ返してきた。


「ディーの話だと、あなたたちはアギト国に捕まって奴隷にされたのよね。もともと誰かの所有物になりたかったわけじゃ、ないんじゃない?」

「そう……だが」

「今ここで縄を解かれて、好きにしていいって言われたら、どこに行きたい?」

「……うぅ」


 灰色の毛並みの獣人が、もうひとりの腕をぎゅっと握りしめた。

 黒い毛並みの獣人が、ごくりと生唾を飲み込む。

 彼は唇を震わせ、おそるおそる、願いを言葉にした。


「白き嶺に……集落に、帰りたい……」

「帰るところがあるのね。だったら、そうしましょう」

「え……!」


 私はサイラスを振り返った。


「いろいろ手配してもらった後で申し訳ないんだけど、ふたりぶんの食糧と路銀を都合してあげられないかしら」

「白き嶺がどちらかわかりませんが、まあ、可能な範囲でしょう」


 獣人たちは、こちらを食い入るように見つめている。


「いいのか……?」

「殺せない、連れてもいけない、なら故郷に帰してあげるのが一番でしょ。女神の力で服従の呪いを解いてるから、アギト側に戻るって可能性は低いと思うし」


 こく、とオスカーがうなずく。

 護衛はその案に賛成ってことらしい。


読んでくださってありがとうございます!

もしよろしければ、広告の下↓↓↓までずずいっとスクロールしていただき、「☆☆☆☆☆」評価お願いします!

作者の励みになります~!


もちろん、お気軽な感想、ブクマ、レビューなど大歓迎ですので、よろしくお願いします!!


2025年3月28日「クソゲー悪役令嬢⑥」が発売されます。

詳しくは活動報告をチェック!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓書籍版はこちら!↓
表紙絵
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ