ラーメン
嫌でしょうがなかった。今の時代日本の大多数が通るであろう、高校受験という大きな壁が差し迫っていて、私も母も焦りを感じていた。周りの仲のいい子も勉強をし始める中、1人バスケに音楽に好きなことをする私。私はやりたい事が沢山あったし、自由でいたかった。大人になりたくなかった。どこか自分と周りとの温度差に違和感を感じてたものの、私はきっと夢ややりたい事を追い続けるというみんなから見て、自由な人間に見られたかったのだと思う。だけど、どうにもこうにも逃げずには居られなくなり、お兄ちゃんも通っていた学習塾に通うことになった。
初授業まであと2時間。
「ほんとにいやだ、知ってる人居ないし、まじで終わり。行く必要ある?」そんな言葉が頭をグルグルとする。気持ち悪いか頭痛いか生理が来たか。どれを言ったら許してくれるかとも考えた。そんな私の気持ちなんて聞こえるわけもなく、刻一刻と時計は進んでいく。
友人であるゆづと初授業だからと待ち合わせして教室に行くことになった。授業15分前から校舎の外で待つ。手の感触が気持ち悪い。中にいる人は楽しそうに話している。この中に入れるのか?これから誰も知らないところで勉強するのか?疑問が止まらない。ポケットから鳴るバイブ音と共に『ごめん!デカいの出そう!先行ってて〜!』
そんなLINEと共に大きなため息が蒸発する。とにかく帰ろうとした。もう行く意味もわからなくなったし、こいつには1週間は食べ物を食わせないと誓ったほどだ。あれが15年という中で一番の絶望だっただろう。
深呼吸をして、これから始まる受験生活に力を入れ、ドアを開けた。『こんにちは〜!!!!!』下腹部に力の入った、いかにもスポーツをやっていたであろう体の男が現れた。校長らしい。「苦手だ。」一言呟く。はやいとこ、この男の光る笑顔の裏側を見たいと思った。それだけ私は、弄れた、拗れた、中学生だったのだ。
チャイムが鳴り最初の授業が始まった。ゆづはまだ来てなくて、目線さえも放ったらかしにされたこの空間で息が詰まっていた。私までお腹を壊しそうだ。
チャイムが鳴ってから3分程経った頃にガラッという力強い音と共に、後ろのドアが開いた。大きな挨拶なのに鼻につかない挨拶だった。すぐに気になって振り向いた彼から目が離せなかった。雷に打たれた様だった。ベタな表現で少々気が引けるがまさにそうだった。何も聞こえなかった。それが世にいう"一目惚れ" だった事に気づくのはもっと後のことだった。