第2話 ソノ場所、ソノ者達
その後、糸冬と陰裏は歩いて、拠点へと戻っていっていた。
樹「そういえば、今回のルーラー、何か情報あった?」
渚「いや、なかった。ただのルーラーっぽい。これじゃ、何も進展がないな。」
樹「そっか。うーん、やっぱり、あそこに突撃するしかないのかな...」
渚「いや、それはダメだよ。」
樹「だよねー。また会議で決めよう。しょうがない。」
そんな会話を繰り広げながら、二人は拠点へと帰っていった。
そして、現在。
二人は、拠点の目の前にいた。
二人の所属している組織の名は、「TRIGGER」。
ルーラーを殲滅するために作られた組織のうちの一つである。
個性豊かなメンバーから形成され、その経歴も様々。
メンバーは組織の中でも一番少なく、正直言って、世間からあまり認知されていない組織である。
依頼される任務も普通の私立探偵と同じようなものばかりで、ルーラーに関する仕事はたまにあるぐらいである。
もはや、何でも屋と思われている。
と、言うが、実際は信用されていないだけなのかもしれないのが事実である。
それをさらに加速させているのが、場所である。
アオギリ区に存在する4階建て、地下2階のとあるビルの地下2階にその拠点を構えており、どう見ても怪しいようになっている。
拠点に客が来ることは滅多にないので、基本的にはネットを通じて依頼を受けている感じになってしまっているのが事実である。
基本的に能力者が大半を占め、残りは無能力者の事務員が占めるのが普通なのだが、この組織は何ということか、メンバーは全員能力者である。
そんな組織に、二人は所属しているのである。
二人は、荷物を抱えながら、地下へ続く階段を下って行っていた。
二人は何も疑問を抱えないが、普通の人なら疑問を抱えるような光景が、そこにはあった。
地下2階の扉がある場所。
そこには、さらに地下に続く階段があったからだ。
そう、そこは、TRIGGERの面々だからこそ知っている場所なのである (そもそもケモノが来ることはないのだが)。
樹が扉を開け、中に入っていく。
そこは、なんとも言えないコンクリートの壁と天井と床で出来た廊下だった。
この場所全体が、コンクリートでできているのである。
正直玄関とも言えない場所を通り抜け、二人はズカズカと奥に進んでいく。
その間、渚に変化が訪れた。
先ほどまで光のあった目は一気に光を失い、顔全体が暗くなり、歩き方も少しのそのそと歩くようになり、姿勢はさっきよりも少し低く、まるで別人になってしまったようだった。
だが、その変化を見ても樹は何も感じない。
そう、これが当たり前なのだ。
糸冬 渚の変化。
それはTRIGGERの全員が知っていることなのだ。
二人は歩いていくと出てきた扉を開け、その中に入る。
そこには、なんとも言えぬ空間が広がっていた。
10個のパソコンの置かれたデスクと椅子が並んでおり、その奥には一つだけ大量の資料とパソコンが置かれた少し大きめのデスクと椅子が置いてある。
その横には一応接客用と思われる椅子が一つの机を交わって置かれており、その奥にはさらに扉があり、その上には「医務室」と書かれた板が吊るされている。
そして、デスクの前に座っているケモノが二体だけいた。
一体は、男型の体型で、緑色の体毛に、フードのない黒色のローブに身を包み、服から出た手と足だけでかなり細身であるのがわかる、140cmもない大きさのケモノ。
このケモノの名前は、「黒葛原 莉久」。
もう一体は、女型の体型で、桃色の体毛に、見た目からして医者というような白衣を着ており、見たまま医者とわかる服装をしている、黒葛原 莉久とほぼ同じ身長をしたケモノ。
このケモノの名前は、「野原 柚葉」。
二人とも、能力を持った、TRIGGERの一員である。
樹「帰りましたー。」
莉久「あ、お疲れ様です!どうでしたか、ルーラーのほうは。」
樹「今回も手掛かりなし、ただのルーラーだった。」
莉久「そうでしたか。やっぱり、情報出にくいですね。」
樹「そうだね。まぁ、昼に出てきたルーラーだからね。しょうがないよ。」
柚葉「そういえば、二人とも怪我はありませんか?」
樹「自分はないけど、渚は?」
渚はその質問に対して、ただ横に首を振るだけだ。
そして、その行動を行った後、手に持っていた荷物を近くの物置場に置き、渚は部屋を出てどこかへ行ってしまった。
樹「あ、渚!うーん、やっぱり長く光に当たりすぎたんだ。」
柚葉「そうですねぇ。私の能力でも、精神面は治せませんからね。そこは彼に頼るしかありませんよ。」
樹「そうなんけど...そういえば、なんか人数少なくない?団長さんもいないし...」
莉久「風能さんと、赤座さん、ネロさんはルーラーを探しに行って、左さんは依頼を終わらせに行って、左海さんと、園崎さんは買い出しに行ってます。団長さんは、いつも通り上です。」
樹「なるほど、それでやけに人が少ないわけだ。」