第8話 俺は爆炎の勇者
俺は草原に帰ってきた。
ひたすら平坦な道を進んでいく。ここには魔獣や罠も何もない。
俺は周りの景色を楽しみながら歩いて行く。そして一匹のスライムを見つけた。
可愛い。俺は思わず頭を撫でた。そして手が溶けた。
俺は力を抑えて自爆した。せっかくの平原を壊したくないから。
だが戻ってきても奴は何ともない様子で佇んでいた。
ナニコレ?スライムって弱いんじゃないの...
力を抑えたって言っても凄い威力だったはず。俺はだんだんと近づいてくるやつにどうすればいいか必死に考える。
多分奴には物理的攻撃は効かない。だが俺は物理攻撃しか使えない。
終わったな...俺はこのまま一生奴の身体で溶かされ生き返り解かされるんだろう...
俺は最後のあがきとして剣を振り回す。
だが、スライムは剣に触れると直ぐに蒸発した。
どうして?俺は疑問に思って剣を見つめる。
..確かこれは魔剣だったから何か魔法的な力があるのかもしれない。
俺は思わない所で魔剣に救われて少し嫌悪感が薄れた。
俺はそれからも草原を歩いて行く。珍しい花などもしっかりと見ていく。
スマホがあれば写真に撮って保存できたんだけどなぁ。そう残念に思った。
俺はそんな感じでたまに変な植物に食われそうになりながらも辺りを見て回った。
俺は久々に和んでいた。戦いもなくただ花を愛でる生活を楽しんでいた。
俺はそんな俗世から離れた世界で三年間過ごした。
俺はいつも通り丸太小屋のベッドで目を覚ます。そして近くで取れるカカオを使ってコーヒーを飲む。
そして俺は何時ものようにそこでだらだらと過ごす。好きな物を食べて好きなことをして、偶には外に花見にも行く。
...何か忘れている気がするが気にしないでおこう。
俺はそんな生活をしていると一人の魔族がやって来た。赤いローブで身体を包んだ女だった。
「ここに居たのですか爆炎の勇者様よ!」
そう言って振り返るとあどけない顔をした一人の少女が立っていた。もちろん胸も顔相応の平原だ。
「爆炎の勇者様よ!私達を導いてください!!」
そう言われても事情が分からないので何とも言えない。
俺は彼女から事情を聴くことにした。
どうやら彼女達はいつ頃かの騎士が言っていた爆破の悪魔の一族のようだ。
そして彼女の一家は今、壊滅の危機らしい。
話によると彼女達は魔王城を間違って半壊させてしまったらしく、魔王に追われる身となったようだ。
そこで俺に自分たちの身を守るために一緒に戦ってほしいとのことだった。
俺は勿論答えた。嫌だと。
だって目的が一致しているとはいえ相手は自分たちのボスの家を破壊する頭のおかしい連中だ。そんな奴らとやっていける訳はない。
だが、彼女は諦めなかった。
俺が頷かなかったらこの丸太小屋を爆発すると言ったのだ。俺の思い出の家を。
俺はどうすればいいか考えていた所、体に激痛が奔る。
...そう言えば俺が自爆したのいつだっけ。俺はすぐに焦ってその場で自爆した。
俺の丸太小屋ごと、ここら一帯が吹き飛んだ。