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壊れた世界の迷宮で  作者: 風見渉
6/8

背信者

だいぶ間開いてすみません。・(つд`。)・。

プロット立てては破棄、プロット立てては破棄してました('A`)

 ユウトは薄暗さが更に増した廊下を、軽い足取りで歩いていた。

 右のポケットに手を入れる──先程院長から出世払いで借り受けた金貨が二枚──硬い触感を確かめるようにして、それに指を這わせた。


 不意に、ユウトの鼻腔がスープの香りを感じ取った。

 その香りで意識が現実に引き戻される。

 窓から見える空の色が昏い紫紺に染まり変わり、天に架かる月が細い鈍色の光を放っている。

 時間的には、夕食の時間になっていた。

 先程通った道を逆に戻って食堂に入ると、明るい時間に別れたヒロが帰ってきていたようだった。


「……僕より早く帰らなかった?」

「ボクの体力と足の速さをユウトを一緒にしないで欲しい……」


 ヒロは少々むくれてユウトを恨めしそうに見ていた。


「ごめんごめん」






 ユウトが食堂に入ってきた時から若干の違和感を感じていた。

 先程別れた時より、明らかに晴れやかな表情をしている。


──余計な事をされたようだ。


 苛立ちを覚えた。

 あのまま諦めてくれていれば良かったのに……と。

 純粋な彼に、この世界の理は残酷すぎる。


──院長め……。


 ()()にしたいという(よこしま)が透けて見える。

 01(エース)に全幅の信頼が置けるわけでもない。

 向こうとしても、ボクは信頼に足るものではないだろう。


──背信者(ユダ)


 それが司法局がボクの背中に押した烙印。

 足抜けした迷宮試験官の僅かに残った良心と理性、そして罪状。

 それでも、背信者に成ることを選んだのだ。

 01という悪魔に魂を売り渡してでも、だ。

 無彩色のこの世界で、『僕』に取っては『彼』だけが彩られた存在。


──何があっても護りたい。


 僕に残された微かな……なのだから。

 迷宮試験官として、本来の名前も姿も大部分の記憶すら奪われたけれども──ただ一つ、忘れることのなかったもの。

 僕に残された、数少ない、もの。

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