背信者
だいぶ間開いてすみません。・(つд`。)・。
プロット立てては破棄、プロット立てては破棄してました('A`)
ユウトは薄暗さが更に増した廊下を、軽い足取りで歩いていた。
右のポケットに手を入れる──先程院長から出世払いで借り受けた金貨が二枚──硬い触感を確かめるようにして、それに指を這わせた。
不意に、ユウトの鼻腔がスープの香りを感じ取った。
その香りで意識が現実に引き戻される。
窓から見える空の色が昏い紫紺に染まり変わり、天に架かる月が細い鈍色の光を放っている。
時間的には、夕食の時間になっていた。
先程通った道を逆に戻って食堂に入ると、明るい時間に別れたヒロが帰ってきていたようだった。
「……僕より早く帰らなかった?」
「ボクの体力と足の速さをユウトを一緒にしないで欲しい……」
ヒロは少々むくれてユウトを恨めしそうに見ていた。
「ごめんごめん」
ユウトが食堂に入ってきた時から若干の違和感を感じていた。
先程別れた時より、明らかに晴れやかな表情をしている。
──余計な事をされたようだ。
苛立ちを覚えた。
あのまま諦めてくれていれば良かったのに……と。
純粋な彼に、この世界の理は残酷すぎる。
──院長め……。
手柄にしたいという邪が透けて見える。
01に全幅の信頼が置けるわけでもない。
向こうとしても、ボクは信頼に足るものではないだろう。
──背信者
それが司法局がボクの背中に押した烙印。
足抜けした迷宮試験官の僅かに残った良心と理性、そして罪状。
それでも、背信者に成ることを選んだのだ。
01という悪魔に魂を売り渡してでも、だ。
無彩色のこの世界で、『僕』に取っては『彼』だけが彩られた存在。
──何があっても護りたい。
僕に残された微かな……なのだから。
迷宮試験官として、本来の名前も姿も大部分の記憶すら奪われたけれども──ただ一つ、忘れることのなかったもの。
僕に残された、数少ない、もの。