ブサイクなティラノサウルス
みらーいみらーいあるところに、とても優秀な博士がいました。
博士は長年も研究の末に、恐竜を復活させることに成功をしました
博士が復元したのは、恐竜の中でも屈指の人気を誇る「ティラノサウルス」でした。
このニュースに世間は大注目、みんなが期待してました。
そして、世間に始めてティラノサウルスが発表されました。
「皆さん、こちらが本当のティラノサウルスです!」
幕が降ろされ、その姿をみんな目にすると、みんな首を傾げました。
発表したティラノサウルスは、とってもブサイクだったからです。
『ブサイクなティラノサウルス』
ティラノサウルスといえば、強靭な顎に凛々しい顔つき、力強いしっぽや脚を持つイメージでした。
しかし、みんなの前にいるティラノサウルスは、なんだかぽやーっとしてとても弱そう。
顔つきもぼんやりしてて、一言でいえばブサイクでした。
このニュースには、世界中がガッカリしました。
せっかくティラノサウルスが復活できたと思ったのに、出てきたのは不細工なトカゲモドキ。
これは本当にティラノサウルスなのか?と疑う人も出てきました。
一方、ティラノサウルスは泣いていました。
せっかく生まれたのに、誰もが僕のことをいじめる。
登場すれば悪口ばかり言われるので、ついにはノイローゼになってしまいました。
そして、それをいつも慰めるのが博士でした。
泣いているティラノサウルスの隣に座り、背中を擦りながら言います。
「お前は本当にティラノサウルスだよ、間違いない」
しかし、ティラノサウルスには自信がありません。
彼は世界でたった1匹のティラノサウルス。何が正しくて、何が間違いなのか分かりません。
しかし、貴重な恐竜なので、ティラノサウルスはあちこちの仕事に引っ張りだこ。その度に、彼はガッカリした人々の顔を見ることになるのでした。
博士はいつも通り言います。
「お前は、間違いなくティラノサウルスだよ」
でも、ティラノサウルスには自信がありません。
なので、なぜそんなにティラノサウルスだと信じられるのか、博士に聞いてみました。
「誰も君をティラノサウルスだと言わなくなったら、誰が君を信じるんだい?」と言われました。
ティラノサウルスには、意味がいまいちわかりませんでしたが、博士の言葉には不思議と納得できてしまう妙な感覚がありました。
ティラノサウルスはそれだけで自分自身でいられるきがしました。
そんなある日、博士は亡くなってしまいました。
おじいちゃんだった博士は寿命でした。
ティラノサウルスは今までに無いくらいの悲しみに包まれて、わんわん泣きました。
ずっとずっと泣き続けて、いつしか人前にも出なくなり、研究所の片隅にいるだけになりました。
ティラノサウルスのことをティラノサウルスと呼んでくれる人は、もう誰も居なくなりました。
他の研究員からも「泣き虫」だの「ニセトカゲ」等と呼ばれ、すっかり邪魔者扱いでした。
ティラノサウルス自身、すっかり気力を無くし、自分が本当は何者なのかわからなくなってしました。
人間でも、他の動物でもない。世界にたった一人ぼっちの生き物…。そう思い、彼はまためそめそと泣くのでした。
ある日、彼は恐竜図鑑を見つけました。
表紙には、イメージされていたティラノサウルスの姿があります。世間ではすっかり彼のことは忘れ去られ、今ではこのイメージがティラノサウルスだと言われております。
かつて古代に栄えた恐竜たちの強靭なイメージが書かれており、彼ははっと思い出しました。
それは、かつての古代の記憶。彼が化石になる前のことでした。
トリケラトプスは、こんな角イメージのを持っておらず、とってもか弱い生き物でした。とっても方向音痴でおっちょこちょいなのが、彼らでした。
ブラキオサウルスは大きいなくせに気が弱く、小さい音でもすぐに逃げ出す。尖ったものが大嫌いで、いつもいじめられていました。
プテラノドンは大きな羽をもっていましたが、鳥のように飛べず、いつも空を見上げてました。
そして…ティラノサウルスは間違いなく、今の彼と同じ姿をしていました。
そこで、彼は博士の言葉を思い出しました。
『誰も君をティラノサウルスだと言わなくなったら、誰が君を信じるんだい?』
そうだ、僕は間違いなくティラノサウルスだ!
ティラノサウルスは、久々に立ち上がりました。
周りの研究員が、不思議そうにこっちを見ています。
周りが「泣き虫」「ニセトカゲ」などの悪口を言います。
ティラノサウルスは大きく息を吸い込み、叫びました。
「ガォオオオオオオオオオ!!」
ティラノサウルスの咆哮はとても力強く、周りの研究員はみんなびっくりしました。
ティラノサウルスもびっくりしました。こんな大きな声が出るとは思っていなかったのです。
しかし、研究員達は思いました。
「すごい力強さ…もしかして、彼は本当にティラノサウルスなのでは?」
彼らの見る目が変わりました。
あれから数年後。
ティラノサウルスは研究員達と一緒に世界中を周り、自分がティラノサウルスであることを証明し続けました。
まだまだ彼をティラノサウルスだと認めてくれる人は少ないけど、少しづつ、彼をティラノサウルスだと認めてくれる人が出てきました。
彼は少し自信をつけて、得意の咆哮も段々上手くなって来ました。
時々博士のことを思い出して、ホロりとしてしまうこともあるけど、その度に博士の言葉を思い出すようにしてます。
『誰も君をティラノサウルスだと言わなくなったら、誰が君を信じるんだい?』
そうだ、僕の名前はティラノサウルス。
世界中誰もが呼んでくれなくなって、自分自身でもわからなくなってしまっても、僕のことを信じてくれた博士のことは信じられる。
その思いを信じながら、今日もティラノサウルスは吠えるのでした。