配信初回 プロローグ
世界観とか考えなくてもいいものを書き散らかしたくなってやりました。
暇なときに書き散らかしていく所存。
今暇すぎるって人は読んでください。
暇だ。
素振りをしながら思う。
世界中でウィルスが大流行。緊急事態宣言も出て、仕事も休み。
それはまあいいとして、居合の稽古も休み。
ついでに言えば見学に行き、ちょうど始めるはずだった槍と薙刀の稽古も休み。
ちょっと東京まで行って稽古をつけてもらおうと思っていた弓もこの分じゃやってないだろう。斜面打起しを習いたかったんだが。
仕方がないので真剣で素振りをする。
普段使う居合刀でも、重さが真剣以上の自作櫂型木刀でもなく、今回は真剣を使っている。
というのも、素振りにも種類があるからだ。
居合刀は普通は真剣よりも少し軽く、取り回しがしやすいものがオーソドックスだ。型の練習などにおすすめだ。軽いので扱いやすく、型が崩れにくい。
真剣以上に重い櫂型木刀は筋力をつけるのに向いている。ゆっくりと丁寧に、かたちを意識して振るのがおすすめだ。ちなみにこれを使った後は、真剣がとても軽く感じる。
今やっているのは、休みで身体が鈍らないように重さのある真剣で、鋭く振る練習をしている。
刀身に樋が入っているとよくわかるのだが、そういった樋入りの刀を振ると樋音がする。ある程度刃筋がしっかりしていれば普通樋音は鳴るものだ。
今使っているのは樋の入っていない真剣で、それでも鋭く振れば刃音は鳴る。
それを鳴らす鍛錬中だ。
刃音を鳴らすのは樋音を鳴らすのと比べると難易度が結構違う。
人間の身体というのは関節や腱、まあいろいろと可動に関して制約がある。骨が最もスムーズに動くように骨の向きを整え、下手に力まず鋭く振ると、刃音が鳴る。
ちょっと甘くなると鳴らない。結構シビアだったりする。
とまあこんな素振りをずっとしているのもきついものがある。
もちろん素振り以外にも、型の足さばきの練習をしたり、畑の横に作った弓の練習場で的当てをして遊んだりもする。試斬だってする。田舎なので屋外の遊び場所は結構広く使える。
しかし仕事が休みだとさすがに毎日毎日一日中稽古漬けというのもきついので、普通にネットサーフィンとかもしたりする。
動画を見たり、小説を読んだり。
そんな折、ネット小説でVtuberが主人公のものを読んだ。
動画も見ていると言ったが、もっぱら武道関係だったりミュージックビデオだったりしたので、Vtuberは全然見ていなかったのだが、ちょっと興味が湧いたので覗いてみた。
(そういえばこんなジャンルのもあったな。ゲーム実況と歌ってみたが多いかな?)
暇で暇で仕方なかった俺は、勢いに任せてなぜかVtuberをやってみることにした。
おそらくこのときは脳みそがバグっていたんだと思う。暇すぎて。
ネットで調べてみると、簡単にVRアバターを作成できるソフトがあったので、それでちゃちゃっとVRアバターを創る。
(せっかくだからむさい男より見栄えのいい女性型にするか。髪型は普通に黒で武道に邪魔にならないように……ポニーでいいか。武道をやるならある程度筋力が欲しいからちょっと初期設定より太めにして、そうすると胸と尻もちょっとでかくしないとおかしいか。尻はともかく、胸はこれ絶対邪魔だけど、まあいいか。目尻は上げよう。眼光鋭くしたいが、ちょっとこれいじりすぎると変になりそうだし、こんなもんでいいか)
そんなこんなで道着を着た3Dアバターが出来上がった。
(つぶやくやつもVtuberってみんなやってるみたいだな。まあ大SNS時代だしな)
そんな中、時代に取り残されている俺。
必死こいてつぶやくやつのアカウントを作る。
(あー、名前か。武道家だしなぁ……。武道……武道でたけみちって読みにするか。下の名前のほうは俺がよく使うアカウント名がneruだから、寝と書いてねると読もう)
こうして新人Vtuber 武道 寝 が誕生してしまった。
なぜ作ってしまったのか。ひと月もしたら過去に戻りたい思いである。
◆◇◆
「うーん……」
キャラ付けはとりあえず、一人称は己と書いておれと読む。性格はクソまじめ。話し方は~でございまする。とか時代劇でよく聞く感じにした。すぐに化けの皮が剥がれそうだ。
それより今唸っているのは動画の製作についてだ。
大学生の時には狩猟ゲームのプレイ動画なんかを作ったりもしたものだが、もう何年も前である。
動画の作り方なんてものはさっぱり覚えていない。
というか、ずっと使わなかったせいでそれ関係のソフトがアップデートされていないため、インストールし直す事態になった。めんどくさい。
(最初は自己紹介動画か~)
どうやら自己紹介動画というものを最初に投稿して、どんなキャラクターか知らしめるようだ。
Vtuberについて調べているうちに録画、編集ソフトのインストール完了。
というわけである程度録画ソフトや編集ソフトの問題をクリアしたので、とりあえず作ってみる。
ちなみに実家暮らしで家は日本家屋、ふすまや障子などで部屋に鍵なんてないし、防音性も全くない。
仕方がないので録音は車の中で決行とする。ちくしょう。
◆◇◆
「初めまして。己の名前は武道寝と申します」
なんたらかんたらととりあえず自己紹介。
その過程で、普通はVRアバターが画面スミにいて、あとはゲームのプレイ画面、というのが普通っぽいのだが、俺の場合はゲームの代わりにリアルの俺の鍛錬風景が垂れ流されることになった。なんでこうなった?
原因として、俺のノートPCが貧弱すぎてゲーム配信とか無理そうなこと。VRアバターがリアルの俺をゲームキャラのごとく操作する体であり、なんかゲームとリアルが逆転するってよくね? とかいう変な発想。俺の鍛錬風景とれば俺自身の鍛錬にもなるしいいじゃん、という効率的に見えてただ単にネタ探すのを面倒くさがっているだけという怠惰っぷり。その他いろいろ。人生いろいろ。男もいろいろ。
自己紹介動画を振り返ってみて何かが足りないことに気付く。
「とりあえず歌うか」
自己紹介動画で一曲ぶち込んで、即興だったのでミスりまくり、尺も長くなり、絶対見づらくなったであろう自己紹介動画完成。
そして投稿して気づく。
「俺の自己紹介動画BGM入ってないじゃん!」
必要なのは歌ではなかった。おしい。