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序 お姉ちゃんは魔法使い
「ねぇシャケお姉ちゃん。どうしたら魔法使いになれるの?」
握られた右手が微かに強ばったのを覚えている。
「そうね。鴎がもう少し大人になったらなれるんじゃないかな」
「大人っていつなれるの?」
「もう、鴎は質問ばかりね。それじゃ大人になるのはまだまだ先かしら」
子供だった僕が手を引かれながら夕暮れの田舎道を歩く。遠くの山でカラスが鳴いているのを聞きながら、隣を歩く近所のお姉ちゃんの言葉をひとつ残さず聞き取ろうとする。しかしお姉ちゃんはクスクスと笑ってばかりで、それ以上答えようとはしなかった。
それからお姉ちゃんは1年もしないうちにいなくなってしまった。その半年後、お金持ちのおじさんに僕の住む村は買い取られ、出ていくことになった。