一話 砕け散るこの世界から、今救い出す
一話 砕け散るこの世界から、今救い出す
「朝倉、朝倉はいる?」
「名前は自分でおきめ下さい。純一のままでも構いませんが」
「いたわね、純一。ダカーポ良かったわよ」
「ちなみに自分は宗也と申します」
「聞いてないわ」
「にべにもございませんな。で、どなたがお好みでしたか?」
「美春。涙が止まらなかったわ」
「彼女のシナリオは自分も涙いたしました」
「よね。後、鮭おにぎりが食べたくなったから屋敷の外のコンビニまで買いに行って」
「承知しました」
「知ってるわよ、続編もあるのでしょう?」
「流石の慧眼。FDはもちろんのこと、ツー、ちなみに今はスリーまでございます」
「ロングセラーじゃない」
「自分は初代が一番好きですが、グラフィックはツーが好きだという方が結構いらっしゃいますね」
「じゃあ次はツーでお願い」
「それと、もう一つの選択肢を。ここらで一つ、神ゲーというものに挑んでみては?」
「神ゲー!? い、いいのかしら、初心者なのに」
「それなりの水準ができてしまいますが、良いエロゲを知るのも楽しみの一つであります」
「タイトルは?」
「グリザイアの果実など」
「! コンシュマーにも出てる神ゲーじゃない!」
「ダカーポの方もコンシュマーは出ておりますぞ」
「しかも割と新しめじゃないの!」
「可愛い彼女のお願いは聞いてあげたいのであります」
「愛してるわ、純一!」
「自分、宗也でございます」
「じゃ、早速持ってきて頂戴!」
「かしこまりました」
私室に戻って、エロゲーを準備する。
彼女の部屋は二階の奥。一階は客間が主だが、婚約者の俺は奥の部屋を頂いている。
往復がちと面倒だけど、まぁ惚れた弱みだ。
「持ってまいりました」
「結構。早速プレイするわ。主人公にボイスはないの?」
「ありませんな」
「じゃあ朗読しながら一緒にプレイしましょう」
「はぁ。構いませんが……お飲み物も用意しましょうか」
「お菓子もよ。チョコが良いわ」
「はい、かしこまりました」
「主人公に声がつかないものかしら」
「今度は主人公に声の付いているものをお渡しいたします」
「あるのね!」
「少ないですが、おおよそ名作が多いのです」
「楽しみね!」
「あまり熱中しすぎて、学業を疎かにしないようお願い申し上げます」
「分かってるわよ」
「左様でございますか」
「後……一緒に、いたいのよ」
「……お嬢様は犯罪的に可愛いですな」
「やめてよ、そんなホントのことを」
「すぐ調子に乗るところも良いところです。豚もおだてりゃ木に上る」
「誰が豚よ!」
「愛らしいあなた様でございます」
「……まぁ、いいわ」
「チョロ可愛いのも魅力です」