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たまご酒

 「クッ……ゲホン、ゲホッ!」


 思わず笑いがこみあげてきたのを咳でごまかす。

いや、だって。

 鼻血だして倒れるって……思春期の男子高校生みてえ。原因が俺の裸だというのだから益々面白い。

ま、今どきの男子高校生だってそれぐらいじゃ鼻血もださなければ倒れたりもしないだろうが。

 

 もちろん、これは白鷺さんには言えない。

 そんな事言ってしまったら。


 『なんですか! なんですか!? それ! なんかもう! なんとなく! すごく! 嫌ですよ!』

なんて顔を真っ赤にして怒るに違いないのだから。


 ――いや、アリ、だな。

 顔を真っ赤にしてプンスカ怒る白鷺さん、すっげえ可愛い。

……なんて想像に浸っていると。


 「高遠さん……」

 「はい?」


 心配そうな白鷺さんの声。

彼女はさっきから俺にかまってもらいたくて仕方がないといった感じ。

 嬉しすぎる。にやけた顔は見せたくないので振り向かずに返事をする。


 「もしかして風邪ひいたんじゃないですか? 大丈夫ですか?」

 「ああ、大丈夫ですよ。違います。ちょっと……小麦粉のせいかも」


 ちなみに小麦粉を使う料理はしていない、が……まあ大丈夫だろう。

どうやら心配させてしまったらしい。

 俺がろくに体も拭かずに風呂からでてるのみてるからなあ……風呂……裸……


 「プッ……グホッ、ゲホッ!」

 「高遠さん!?、やっぱり風邪ですよ!? それ!」

 「い、いや、ほんと大丈夫。体は頑丈なんで。ちょっと粉がね……!?」


 フライパンの蓋をとる。

ジュワァ~と音を立て、美味しそうな香りを放つ。

 今日は人参のハンバーグ。フードプロセッサーですりおろした人参を混ぜ込んだ。

 そして人参のポタージュ。人参が甘すぎたのか妙に甘ったるくなってしまい微妙な味になってしまったのだが。

 白鷺さんは野菜が好きじゃないからこっそり人参づくしにしてみた。

まあ、出したものは野菜でもちゃんと食べてくれるから別にこっそりやんなくてもいいんだけど。


 「ちょっと……かなり早いけど晩ご飯にしましょう」


 時間はまだ十七時。晩飯にはかなり早い時間だが、いいんだよ、これで。

飯くった後はゆっくりしたいだろう? まあ、色々と、ね。


 「――そうですね、うん。早く食べてゆっくりした方がいいですよね……」


 さすが白鷺さん。わかってらっしゃる。

 

 テーブルに料理を並べご飯をつぐ。

 「いただきます」

 「いただきます」


 ハンバーグを一口食べて白鷺さんの箸がピタリととまる。

気づいてしまったのか!? 人参の存在に!


 「柔らかいですね、これ。美味しい~」

 「そうですか~。よかったです」気づかれなくて。


 パクパクと大きく口を開けて食べていく白鷺さん。

初めて一緒に食事した時にも思ったけど、この人、良い食べっぷりなんだよなあ。


 大きく口を開けるからといって下品、というわけではない。

美味しそうに、綺麗に食べてくれるのが嬉しい。


 ちょっと甘すぎる人参ポタージュも彼女の口には合ったようだ。

一口食べて驚いたように目を大きく見開くとアッという間に飲み干してしまった。


 俺も箸をすすめ料理をたいらげる。

洗い物は明日でいいな。


 「高遠さん、お薬あります? 飲んだ方がいいですよ」


 白鷺さんはまだ俺の体の事を心配しているらしい。

心配はかけたくないのでとりあえず薬を飲む事にする。


 ゴクリ、と咽喉がなったのを確認した白鷺さんは満足して……はくれず。


 「さあ、もう横になって休んでください」


 ――な、なにィ!?

思いも寄らぬ方に話が進んでいく。

これでは俺の計画が丸つぶれなんだが!


 「あの、白鷺さん、俺ほんと、風邪じゃなくて」

 「風邪の引き始めは皆そう言うんです」


 いや、あの……何かを言おうとするもどう言えばいいのやら迷ってる内に俺の部屋に押し込まれた。

俺は、眠りたいんじゃなくて! 

 ――このベッドで違う事をしたいと思っているんだけど!


 「じゃあ寝ててくださいね。台所かります、たまご酒つくってきますね。風邪によく効くそうですよ」

そう言うと足早に部屋をでていってしまった。

 ……なんでこうなる……。


 数分後、白鷺さんがもどってきた。たまご酒を持って。

酒は好きじゃないのでたまご酒がどーいうものかすらよくわからない、が。

いいのか、これで?

 酒にスクランブルエッグが浮いているんだが、こーいうものなのか?


 「熱いから気を付けて飲んでくださいね」

 

 ニコニコとたまご酒を差し出す白鷺さんから受け取り、飲もうと口までもっていく。

酒の匂いがプーンと漂い、酒の苦手な俺は顔をしかめる。


 チラリと白鷺さんをみると期待に満ちた目で俺をみている。

飲むしかない、のか……。


 息を止め、一口。ゴクリ。

 あっちぃ! そしてマッズ!

え、なに? 病気の時って皆こんなの飲んでるの!? まじで!?

 ゲフゲフゲフ……むせる俺の背中を優しくなでる白鷺さん。


 「そっか、高遠さん、お酒苦手ですもんね……えっと、じゃあ……そうだ! 頭冷やしましょう。タオル濡らしてきますね!」


 そう言うとまたまた足早に部屋を出て行ってしまった。

 風邪でもなければ熱もないんだが。

わかったぞ、どうやら彼女は『彼氏の看病をする彼女』を楽しんでいる。

 

 はぁ……深い深いため息。

思い通りにいかない。

 今日は白鷺さんともっともっと親密になれると期待していた。

 ――が。倒れた彼女をみて、俺は急ぎすぎてると思った。

もっとゆっくりでもいい。

 そう考えなおしたものの、白鷺さんが俺に触れたいとか嬉しい事ばかり言ってくれるから、俺はまた期待してしまう。


 が、何故かやはり上手くいかないんだ。なんでだ。


 濡れたタオルをもって白鷺さんが戻ってきた。

ベッドに座っている俺を見ると「寝ててくださいよ~」と俺を押し倒す。


 そして。


 ギュッ、と体を押し付けるように俺に抱き着くとスッと離れた。

顔を近づけ、心配そうに俺の目をのぞき込む。


 「早く、よくなってくださいね」


 全身の毛が逆立つのがわかる。


 ああもう!


 ああもう、これだから彼女にはかなわないんだ!

 

 

 

作中のたまご酒、白鷺さん失敗してます。たまご酒について詳しく知りたい方は某レシピサイト等をご覧ください。お手数おかけしますが。

今回ちゃんとご飯食べれたので良かった。タイトルに偽りなし、でいけますよね、これで。

あと、今回ちょっと入れたかった話があったのですがいれられなかったので残念。

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