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高遠さん

その時高遠さんは……!

 彼女を抱きしめながらこのまま時間が止まればいいと思う。

腕の中には愛おしい人。幸せだ。


 白鷺さん……耳が真っ赤だ。そう、俺を意識するといい。俺の事だけを考えてればいい。

俺の視線に気づいたのか白鷺さんが俺を見つめる。

 その瞳に、俺と同じ熱い欲望の炎を見た気がした。まさか! 俺の願望に違いない。

視線を外し、もう一度確認してみる。


 うるんだ瞳に欲望の炎を宿し、焼けるように熱く俺を見つめる白鷺さん。

今、自分がどんな顔をしてるのか知っているのだろうか?

 薄く開いた唇が誘っている。キスしてほしいと。


 飢えてるのは俺だ。君に。

でも、白鷺さんも飢えた俺のキスに答えてくれる。

 もしかして白鷺さんも飢えてるのか? 俺に? 


 ――ドンッ!


 突然の拒絶に俺の目は丸くなる。

何故だ。さっきまであれほど上手くいってたじゃないか? なんで俺を拒絶する。


 そんなつもりじゃなかっと。

 誘惑するつもりはなかったと。


 誘惑? 何をいってるんだ? 俺は彼女にからかわれたのか?


 俺の作った料理をおいしそうに食べる白鷺さん。

 たわいもない話をニコニコ聞いてくれる白鷺さん。


 お酒と男の匂いをさせて俺を誘惑する白鷺さん。

 俺を拒絶したくせに「好きだ」と……「抱きしめてほしい」という白鷺さん。


 もう、わけがわからない。

俺は彼女に遊ばれているのだろうか?


 目に涙を溢れさせた彼女を見て、これも彼女の遊びの駆け引きなのかと考えた。

それでも。それでも俺は彼女が欲しい。


 初めて白鷺さんを『怖い』と思った。

彼女が好きだ。だけど、あんな風に拒絶されるのは耐えられない。

俺は彼女のゲームには付き合えない。


 ――だから


 もう白鷺さんと晩ごはんは食べられない。

 彼女には近づけない。


 傷つきたくないんだ……。


 

 白鷺さんをアパートまで送る。

いつもなら部屋の前まで。でも今日はアパートが見えるところまで来て別れた。


 「おやすみなさい、白鷺さん。……明日からは、晩ごはんは違う人と食べてくださいね」


 俺じゃない他の誰か。

白鷺さんのゲームに付き合える誰かと。


 遠くで白鷺さんの呟きが聞こえた。俺は獣人なので耳はいいんだ。


 「おやすみなさい」「……さようなら」


 泣きそうだ。いい歳した男が。獣人が。大声をあげて号泣してしまいそうだ。

早くも後悔している。

 遊ばれても、退屈しのぎでもいいから彼女の傍にいればよかったと。


 自分の家につき、ぐったりと椅子に座りこんだ。

こんな時、自分の鼻が良すぎる事を恨まずにはいられない。

 まだ、部屋の中に彼女の香りが残っている。

彼女の肌の柔らかさを、唇を思い出しながら……俺はその夜声を出さずに泣き続けた。



 そんなわけで。

朝は最悪の気分で目覚めた。いや、目覚めたというのは少し違う。そもそも寝てないような気がする。

目をつぶっては思い出して泣き、また落ち着いたら目をつぶる。そしてまた思い出して泣く。


 そんな情けない夜だったのだ。

目は腫れぼったいし、喉は乾くし窓から差し込む朝日は目に染みるし。

 とりあえずは顔を洗ってみたものの、全くスッキリもしないし。



―― ピンポーン


 時計をみる。

朝5時だぞ……?


―― ピンポーンピンポーンピンポーン


 煩い!

一体何だっていうんだ!


 不審に思いながらも警戒しつつ家のドアを開ける。



 「おはようございます……」


 そこにはスーツ姿の白鷺さん。

顔を真っ赤にしてばつの悪そうな顔で立っている。


 一体……なんだっていうんだ……?










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