67話 美知と鈴子の奮闘戦
美知と鈴子と森男は城下町を走っていた。
すべてはリバースの追っ手を振り切るため。
だがそんな追ってもなんとか倒して振り切り、もう既に夜中の0時を迎えていた。
仕方なく鈴子が能力を使用して隔離空間に移動した。
安全高域という能力名だ。
ここなら敵からの目も無い。
三人はなんとか一夜を安全に過ごすことが出来た。
次の日、朝8時ぐらい。
鈴子が奇跡の種により発現した能力、迷彩処理を使用して、迷彩処理を施した。
鈴子の杖に乗り、飛行魔法を使用して、竹男を探す。
高域探索を使用して、探し出そうとする美知。
なかなか見つからない……どうしようと考えていた。
美知はある人物を見つけた。
七星菜愛を見つけた。
一人で何故か近くにいた。
直ぐに現場に急行する美知と鈴子と森男。
そこには何か呆然と立ち尽くす一人の少女がいた。
「七星さん! どうして一人でいるの?」
「……………………美知ちゃん……竹男が連れ去られたの……」
「竹男が!? どういうことなの!?」
鈴子が絶叫するように大きく叫ぶ。
遡ること6時間ほど前……
――パンドラの影響下で力を制御できないでいた竹男の前に謎の男が現れた。
竹男に掌底をぶつけたら、竹男をひょいっと肩に背負い、持ち上げた。
七星菜愛が七星の力を使用して、七つの星の輝光弾をぶつける。
謎の男はその場で手を地面に充てて、魔法陣を発生させた。
そして気づいたらみんなばらばらになっていた。
これが6時間前に起きたことである。
菜愛は泣いていた。
目からぼろぼろと涙を流して、大粒の涙を流して。
竹男が連れ去られた。
自分の責任だ。
張り裂けそうなほど胸が苦しい。
こぼれるように自分が憎らしい。
あぁ、これが悲しみなのか……
七星菜愛は失意のどん底にいた。
それが彼女を新たなステージに到達させるなんていうのも皮肉なものである。
七星菜愛は特大の悲しみのエネルギーを纏い、自分の体を変化させた。
【悲痛の犠牲天使】
黒いナース姿とでも言おうか、それに背中に堕天使の翼を背負っている。
「あああああああああああああああああああああああああ竹男おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
そのまま遥か高くに飛んで行ってしまった。
「七星さんはこのままにしておこう。それより敵を見つけたよ」
「美知ちゃん……まあそうだよね。でも今更敵をたおしてどうこうとかあるの?」
「下っ端から得られる情報と言うのもあるはずだよ」
――軽く下っ端を拷問して情報を吐き出す。
リバースの仮アジトの場所を見つけた。
直ぐにそこに行く。
廃工場のようだ。だが、隠れ家にはうってつけのようだ。
そこにはリバースの末端団員が集結していた。
美知は大明理流拳法で敵を粉砕していく。
鈴子は魔法を使用して敵を打倒していく。
森男君も弓矢を具現化してなんとか倒していく。
「美知さん~! 鈴子さん~! 速いですよ~置いてかないで~~~!!」
「なんでついてきたのよ森男。あんたみたいなひよっこその辺で寝てればいいのに」
「酷いです~鈴子さん。いくらなんでもそこまで言わなくても~~!」
「くそっーーー!!! 総員速くあの小娘どもをぶっ倒せ!!」
団員の下っ端のまとめ役みたいなやつが叫ぶ。
だが鈴子の風魔法とかで吹き飛ばされる。
美知の気功砲で吹き飛ばされる。
森男君の風の弓矢で吹き飛ばす一応。
「一応ってなんですか一応って!!」
「何言っているの森男。変な奴」
「何か天の声らしきものが聞こえて……」
全ての末端団員を倒して、敵の心臓部分に到達する鈴子と美知と森男。
そこには一人の男がいた。
仮面を被る男がいた。
後ろには糸のようなもので縛られている竹男がいた。
鈴子は内心苛立ちに溢れていた。
竹男をこんなところに幽閉してしまう自分の愚かさに憤慨していた。
美知はこの仮面の男がなんなのか、どういう存在なのか考えていた。
仮面の男が言葉を発した。
「美知……俺の目的は美知とこいつの交換だ。美知は俺のもとにこい」
美知は一瞬驚いたが、予想が付いた。
この男の正体に。
正確には声で気づいた。
「なるほどね……あんただったのか、尾宇野」
「なんだもうばれてしまったのか、ならこの仮面はもういらないな」
そう言って仮面を外す男こと尾宇野。
「俺はリバースとは関係ない」
「どういうことだ!」
「俺が独自に動いているだけだとしか言えない。いや正確にはリバースには刺客を送り込んでいる」
「なんだと!?」
鈴子が叫ぶ。
「まあ俺がリバースを利用させてもらったわけだ」
「尾宇野……お前は前から変な奴だとは思ってたが……まさかリバースを利用しているだなんて」
美知が残念そうに言い放つ。
この時美知は殆ど納得していた。尾宇野は昔から自分のことを慕っていたが、少しばかり裏があると思えていた。
たまに魅せる黒い顔が本心だとは思っていたが。
まさか自分の前に敵として現れるとは思わなかった。
「美知、俺はお前が欲しい」
「はっ!?」
(まっさかただの色恋沙汰なのかね……)
鈴子は内心ほくそ笑んでいた。
だが直ぐに茶番は終わる。
尾宇野が糸を鋭利な棘のようにして鈴子に飛ばしてきた。
邪魔者を始末するためだ。
だが鈴子もそれを難なく回避する。
鈴子はこの瞬間よりも前に全体身体強化魔法と加速と神雷力をかけている。
これにより超越的な身体能力を得ている。
だが、尾宇野のほうも超伸縮護謨神経強化により神経一つ一つをゴムのように強化している。
これにより超人的な動作が可能だ。
尾宇野と鈴子の攻防が続く。
鈴子が雷の槍を飛ばす。
尾宇野は糸の防壁により難なく防ぐ。
(クソッ!! なかなか攻撃が通らない!!)
「まだやるか? 指場?」
「もちろん! あんたを倒すまでね!」
尾宇野が小さくクスリと笑う。
そしてゆっくりと言葉を発する。
「それはお前には無理だな……」
この時鈴子は何言っているんだと思ったが、自身の実力を過信していた。
尾宇野の実力を計れていなかった。
尾宇野は糸巻を使用して自身の動作速度を加速させた。
さらに糸巻する。
加速していく尾宇野。
そのまま鈴子の背後を盗り、糸捕縛を使用してついに鈴子は捕縛された。
「しまった!?」
「だから言ったんだ……無理だと」
尾宇野はこの時美知を奪うチャンスと思った。
だが、そこに立ちふさがる人物がいた。
「待て!! お前の相手はこの僕だっ!!」
森男君が立ちふさがった。
足が震えているが、何とか立っている。
「どけっ!! 雑魚が……」
「うわっ!?」
糸による攻撃で森男君は跳ね飛ばされた。
そのまま昏睡してしまった。
「美知……さあ俺の元に御出で」
「嫌……来ないで」
「五月蠅い……糸洗脳」
糸が美知の頭の中に入り込むそのまま美知の眼が虚ろになる。
糸を脳細胞一つ一つを操作して洗脳してしまう尾宇野の使える技術だ。
尾宇野は糸に色々な能力を付与することが出来る能力を使えるようだ。
「さて、この人質はもう用済みか……川にでも捨ててくるか」
そうして竹男は近くの川に気絶したまま投げ込まれた。




