65話 遊んで、笑って、休んで、それでいいんだよ
遊んで、遊んで、遊んで……遊びまくって何が悪い!!
テルネアスは一人だと気付いた。
それが間違いの世界だと知りたくなかった。
夢の狭間に囚われた、テルネアスはこの海のような狭間の波を乗り越えようとしていた。
時間の波を超えられるか? その解は否なのか正なのか?
駄目だ…………わからない。
テルネアスは世界を超えていこうと思う気持ちが先走り、世界渡の乗り物を作り出した。
遊休の夢想船
遊び休むための想いの船である。
これで夢の世界を渡り歩くしかない。
テルネアスは夢を想う船に乗った。時間すらも忘却する夢の世界を渡り旅する船だ。
船と言っても宇宙船のように宙を浮く。
ただ、ゆっくり動く、外敵から全ての攻撃を無効にする代わりに、こちらからも攻撃が行えない。
そうこの船は遊休の船。
遊び休むための船。
傷ついた座を乗せてしまい、遊ぶために休むために船は
夢の想いが具現化した、平和な世界に突入してしまう。
◇
病室で一人、佐倉崎夏錬の警護をする虹浦天都は一人悶々と音楽を聴きながら、悩んでいた。
(なんでわたしがこんな女の警護をしないといけないのよ~~~)
(そもそもこいつはわたしの恋敵だし、テルネアスお姉さまはこんなやつの何がいいのよ)
(とにっかくっ……!)
危険が隣り合わせにやってくる。
背後から気配がした。
振り返ると、リバースの手の者かと思われたが違った。
「来て欲しい、私と、お願い」
「あんたは……確か虹咲真歌じゃなかったっけ」
「そう……あなたと同じ虹の名を受け継ぐ者通し同じ血を分けた者よ」
「!?…………そうそうゆうことなの……ならわたしも虹の一族の末裔ということになるのかな」
「あなたは虹浦ね天都ちゃんって言うらしいね…………でもまだあなたは虹一族の力を使いこなしてない」
「本気出してないだけよ」
「本気を見せてじゃあ……」
真歌が言霊を発するが天都には効果が無かった。
「嫌よ、そんな言いなりになんかなってたまるかよ」
「私は味方よ竹男を探しているの」
「わたしはこの眠っている女…の子の夏錬って言う娘の警護をテルネアスお姉さまに頼まれたの」
「…………!! この女の子もしかして……!?」
「どうしたの?? 真歌さん……どうした……」
真歌が眠っている夏錬に触れる。
そのまま何かを読み取る真歌。
真歌は何かを見抜いたが、解決方法が判明しない。
ゆっくりと説明をする真歌。
「この夏錬って人……夢蝕病に犯されていると私は推察するわ」
「夢蝕病?? なにそれ……どういうこと??」
「夢蝕病は……夢を侵食されて食べられるの何者かに……それで永遠に夢が見れないから夢を見ようと眠り続けてしまう病気なの」
「そんな病気があったの!! 知らないよそんなの!!」
「私も知り合いの特殊治療師から聞いたのだから詳しいことはわからないわ」
真歌は手を振り、合図を送る。
すると、一人の女性が入ってきた。
「こんにちは……おはようございます」
その女性は髪がぼさぼさで、肌色が悪く、眼元に隈が出来ている。
だが、それなりに美人な女性であった。
白衣を身に纏い、それだけだが、どう見ても研究者か医者にしか見えなかった。
「紹介するわ……彼女は喰霊鏡子特殊治療師よ」
「はじめまして……天都さん…………眠いですね、夜勤明けで……つらいんです」
「おお……」
アマトは驚愕に包まれた。
このような非常識な状況だと特にだが。
なんだろうこの治療師はと思った。
治療師としての尊厳もなさそうな眠そうな眼をしている。
だが、そんなことはどうでも良い。
私はテルネアスお姉さまに言われた任務……などはないが、それでもテルネアスお姉さまの親友の命を守らなければならないのだ!!
そこで、スピーカー付ラジカセ(充電式小型タイプ)を持ちこんで、夏錬さんに私の自作の曲を聞かせては起きるのを待つ。
だが、起きないのは明白だった。
それもそのはず、音楽の力で起きるのなら、既に起きていても仕方ない。
天都は思った、このような無駄な時間をかけていていいのか……それもそのはず。
このような状況で最適な正解はただ一つ――思いの力だ。
私は天都は起きるように思う。
呼びかける。
「起きて! 起きなさい!! 起きるんだって!!! 起きてよ!!!!!」
だが、無理なもんは無理だった。
ならば……もう後は、寝る。
天都は寝た。それだけだ。
その後数分後真歌と喰霊治療師が来た。そのような顛末だ。
喰霊の力をもってすればと誰かが言いそうだが、喰霊一族は元来治療を行う術士と思われてきた。
喰霊――霊を喰う。文字通りその通りで霊を喰うことでその人に悪しきことを行う悪い霊を食べることでその人を良くしてきた。
現在でも霊喰いの一族として有名である。
が、喰霊鏡子は相手を鏡と捉えて、自身を相手の移す鏡と思い込む。
そうすることで相手に真摯に接して、心を落ち着かせることで、相手を和やかな気分にする。
人は常に相手を映す鏡であると言われているが、そのような星の元に生まれたのが彼女喰霊鏡子である。
(眠い……どうして夜勤明けなのに、こんなところにいるんだろ……? まあ真歌ちゃんの頼みだから仕方ないけど)
喰霊鏡子は真歌の頼み、佐倉崎夏錬を診て欲しいと言う願いを聞いて遥か遠くとまではいかないが、京都からはせ参上したわけである。
「で、このこね……どれ……………………診てみます、うんそうね、わからな……いわね」
喰霊鏡子は眼を使い隅々まで観察した。眼に心刹を籠めて、優しく内を見つめたが、真の病が見えずにいた。
いつもなら真の病が大抵判明するのだが、まったく見えない。
こんなこと初めての経験だった、喰霊鏡子にとって。
世界を止めるような血を塞き止める波動が流れ込んでくることさえもあるはずがない。
喰霊の血を使い、鏡子は心察を行うのであった。
◇
午前零時――四月二十一日
円閑の誘いがまつろわぬ神の社で木霊する。
偽遊の神殿で伝説の神の使いが現来していた。
『これで、チェックメイト』
「負けた…………私の負けよ」
『それじゃあ約束通り、竹男の守護神使いにならしてもらうわよ』
「はい……その約束ですね、」
黒髪の金糸繋ぎの緩やかな桜のような髪の神々しい存在が赤と金と碧の片右眼、もう片目が白と銀と蒼の左眼でテルネアスを見通す。
その存在の名はまだ存在しないが神の使いになる前の名前は存在していた。
名をパンドラ。
伝説の淑女の名である。
まだ、神の使いになりたての存在が、テルネアスと共に協力関係を築く。
世界を不幸のどん底から救い出すために、偽遊の儀式を行い続ける。
遊びの翔蕾船は天能咲市の上空を異次元から陽空するのであった。
さあ……全てを賭けた闘戦遊戯を始めよう!!!!!!! 諸君




