64話 世界を愛している人たちは良い人たちだと感じる
限界を振り絞った千ノ宮春美は表裏変化した。
【Psycho Dual Disorder】と変容した。
苦しまないほど人格との垣根を入れ替えて、逆転させる歯車を停止させる。
そして正の方向から裏の回転に頭の輪音を入れ替えた。
春美は赤き閃光の稲妻と共に、焔の影を纏い、風を味方につけた。
背中に感じる視線は嘲笑の視線だろうか、天や神の力なのか?
高圧的なチャイナ娘の花輪が青龍のような鋭い視線でヴァルゼンを睨みつける。
その動圧的な人を殺す視線をヴァルゼンは受け流すのではなく、反射した。
超圧的な態度を見せる花輪が先に動こうとしないのは、解釈の問題である。
あらかたの力を温存するのも目的だから、それがこの重要なプロセスなのである。
ヴァルゼンは思った。
(この青チャイナ娘をどうするのカ……消えねえように破壊しないといけネぇな)
動く、瞬動術を使用し、ヴァルゼンが先に跳びだした。
地を千里を駆ける勢いで、脚を踏んだ。
白雪が降り積もる地面を、浄過の足捌きで地面擦れ擦れを音速の速さで移動した。
縦横無尽に動き回るヴァルゼンは、花輪を360度の方向から翻弄する。
だが、花輪も馬鹿ではない、そのような動きなど想定済みだ。
しかしここでヴァルゼンの一撃が通りそうになる。
「暁のシャドーブレイド……斬り影、、、、、、!!!!!」
幻影のようなその切先は花輪の眉間に迫る。
だがすんでのところで躱されてしまった。
その隙をついて、花輪の花のような青の閃光拳が決まる。
「蒼桜火拳::否、魅瑚ノ月影掌」
蒼き桜が火に包まれるような幻影が見えた瞬間、月の影から竜泉の湖が波動の勢いで押し寄せた。
ヴァルゼンに竜の水流砲撃かと思われるほどの圧縮波動砲が放たれた。
術式の展開が間に合わない。
ヴァルゼンは気術をしようして、全力で防御した。
回転する焔を円盤状に前に展開した。
名を輪焔壁盾と言おう。
十四の灯火を円の淵に灯して、それを超速の速さで回転させる。
ヴァルゼンのこの気術というのか……否、もはやヴァルゼンの時にしか出来ない。
魔術の領域に突入しているのかもしれない。
ヴァルゼンはもう一人の春美でしかない。
つまり春美本人でもある。
春美の真の人格を否定するわけではないが、この荒々しい凶暴なヴァルゼンはまさに獣のような狡猾さがある。
が、頭脳の針もひとえに糸を伸ばすように鋭く伸びて縮む。
頭の回転の速さはオリジナルの春美よりも上である。
しかし冷静さが若干落ちるのが欠点でもある。
だが、それでもヴァルゼンのほうがポテンシャルはやはり上なのかもしれない。
「少しダケ、全力だすネ」
「!?」
花輪の気の高まりが女傑族の血を疑わせる魔仙の波動のように広がる。
気が充満して、この辺り一帯を震わせている。
建物は揺れて、降り積もった雪が旋風のように竜巻となった。
花輪を中心に荒々しい空気の逆流が起きている。
それが引き金となるとは思わなかった。
七星がついに気付いた。
そのまま七星菜愛は。
天星形態の一つ魔天の星女傑を霊装した。
否、天装を行った。
霊装の一段階上の段階を天装と言う。
霊装→天装さらにその上の領域も存在するが、今の菜愛にはまだ無理であろう。
七星菜愛は花輪の背後に一瞬のうちに回り込んだ。
だが、花輪も負けづ劣らず、気合だけで吹き飛ばした。
「くっ!?」
弾き飛ばされた七星菜愛は七つの星の力に頼るしかなかった。
月星、火星、水星、木星、金星、土星、日星の七つだ。
これらの星の力を引き出すことが出来る生まれつきの特性が備わっている。
七星菜愛は七つの星の力を結集した。
二つ目の天星形態になるしかなかった。
「聖天魔法少女」
光り輝いたその天装は金色の魔法少女のような衣装で、聖なる母のような光り輝いた天使がいた。
次元の違う少女がそこにいた。
「そっちがそれで来るナラ……こちらは……逃げるネ」
刹那、花輪の存在が消失した。
限界した世界から虚空のように消え去ってしまった。
七星菜愛は天装を解いた。
ヴァルゼンは春美に戻る。
「どうしたんだ? 後ろなんて見て二人とも?」
「そうですよ春美さん?? どうしたんですか?」
「なんでもない……」
「お兄ちゃん歌でも歌おっか~☆」
「いいなそれ、俺も歌好きだし」
かくして、花輪の襲撃は一時止んだ。
だが、まだ終わりではないのであった。
◇◇◇
???「さあ……そろそろ私も動くか……」
「ここまで来たんだ。やるしかない。やって見せる必ず、」
「待っていろ竹男。自分が一番大切な何かを思い出さしてやるから、待っててね竹男私の一番大切な人…」
長髪のクールビューティーな女性がこの世界に降り立った瞬間だった。
彼女は……彼を助けるために、この世界に来たのである。
混相の迷宮に囚われたのは誰だろうか? さすれば、時間に取り残された放浪者は一人の男を救うために、真の目的を持って、動き出す。
ここで物語の確信を握る人物投入です。誰なんだろうね




