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62話 戦いの後のお食事タイム

 天能咲市のとある繁華街で、美知みしる鈴子すずこは戦いの後で、酷く体力を消耗していた。二人はたまたま異変には察知していたが、襲ってくる能力者の暴漢の対処に追われることになった。


 やはりと言うか、美知はよく見ると、小柄ながら少年のような顔つきに見えるが、よく見るとそこ儚い純情そうな性格に見えるし、大人しそうに一見見える。なので美知は暴漢に襲われそうになった。


 鈴子はと言うと、こちらは小悪魔的でキュートに見える風貌で、黄色のクリンと跳ね上がった、前髪と相まって、人を惑わす妖美な美しさが感じられる幼い顔つきの中に、男を引き付けるものがあった。


 とまあこんな感じで、たがが外れた能力者のいわゆるロリコンが迫って来たので、美知と鈴子は撃退したのであった。


 とまあだいたいはたいしたことない相手ばかりだったのだが、数が数である。敵の数は何故か次々と現れて、二百人ぐらいと戦った。


 天能咲市にこれほどのロリコンがいたことに驚きだが、それらの奴らが美知と鈴子に狙いを定めたのが何か仕組まれているようなそんな疑念も生じるが、わからないのであった。


 美知と鈴子はいつの間にか戦いながら移動している中出会った。


 二人は仲良しで本音で話し合える唯一の女友達だ。年齢も一緒なのでより話し合いやすい。そんな彼女たちは怖い思いをしたので、お互い出会えてほっとしたのはお互いさまだ。


 美知は竹男のことを考えていたが、彼ならなんとかなるだろうという安堵の感情もあった。美知はそれだけ竹男のことを信用している。美知は竹男のことが狂惜しいほど愛している。普段は顔にも出さないし、言葉にも出さないが、美知としては早く自分の貞操を奪って貰いたいと期待していた。


 美知は意外にも大胆な面がある。いつもゲームを竹男とするとき、竹男の足にのっかかる。おやつを貰いたいとき、おねだりもする。その時の表情は恍惚なほど妖美に見える唇を開き、舌を出して、欲しそうに竹男に顔を近づけるほどだ。


 とこういうことがあったと鈴子に話している美知が。


 鈴子も負けずと、竹男とキスをしたことをなんども話す。もちろんマジックバトルオンラインの時にゲームの中での話であるが。


「ずるいよ……鈴子ちゃん、私だってキスしたことないのに……」


 鈴子はこの時内心勝ち誇っていたが、美知の立場を羨ましかった。

 自分も竹男と遊びたいという感情があった。


「じゃあ今度は私が竹男の家に行って遊ぶからね」


「えええ~~~!! 駄目だよ! 竹男とゲームするのはわたしだけだよ」


「なんで、そんなの決まってないよ。美知ちゃんの物じゃないよ竹男は」


「そうだけどさ……でも悔しいよ。鈴子ちゃんは竹男とどこまでいってるの?」


「まだ現実ではデートもしてない」


「そうなんだ。少し安心した。でもそれじゃあこれからする可能性もあるのかな?」


「うん、今度デートするという約束を取り付けたよ」


 何時の間にか、二人は繁華街のハンバーガー屋の扉を潜っていた。

 そして何故か暴動が起きているのに、このハンバーガー屋は平常運転していたのだ。


 だが、店員は二人しかいず、やはり店内の客はまばらだ。


 二人は適当にバーガーを一つずつ頼み、ポテトのLサイズを一つ頼み、コーラを各自一つずつ頼み、席に着いた。


 美知と鈴子は軽く先ほどの話の続きをし始めた。


「美知は竹男のどこが好きなの?」


「どんなところって…………そりゃあ竹男の全てだよ」


 美知はポテトを一つ摘まみながら、口に含んで、答えた。

 そのままジュースを飲んで、一息ついた。


「本当のところはね……」

 美知は髪を手で掴みながら、ポテトをコーラに浸して、遊んでいた。

 この世の泥水を飲んできた、空っぽな底を黒色の液体で満たすように、底が二重底でなかなか埋まらない。


 美知は知っていた。竹男の性格を。

 自分を知らないから言えない。

 美知は腹の底から世界を否定したい。と記憶を捏造していた。逆さから世界を眼にして、穴の深い黒い理想を胸の内に秘めていた。


 竹男は光の世界に生きていた。


 自分は闇より深い、どん底のほの暗い暗闇より、力を逆走させる、天啓が私を狂わせる。


「私は竹男と一緒にこの世界を一度作り変えたいと思うの」


 静寂と自壊した戦慄の鼓動が破壊するように鈴子と美知を震わせた。


「おもしろいね、美知……なんでそんなことを私に……言うの?」


 鈴子は眼を凛とさせて、熱暴走させる網膜を。

 赤い彗星のごとき白紙の視線で美知に問う。


 鈴子は応じさせない美知の意外な発言を止めるつもりはない。


 言い換えると、鈴子は美知を親友と感じている。

 親友だからこそ思いを止めることなく、本音で語り合えると想像していた。

 かつ、夢なら冷めても良いといつも思い、かつて自分が異世界を旅していた、自分を忘れないことを、時間の経過により、私はそこで止めた。


 思考を停止していた。鈴子は暗黒の飲み物を飲みながら、揚げた塊を齧る。


 ゆっくりとお互いがお互いを冷静に分析する。


「この事態をどう飲み込む?」


「何を……その……誰がやったか?」


「両方かな」


 鈴子は答える。

 リバースの目的はどうあれ、この世界の構造を変革させるための革命を起こそうとしているということだ。


 規則ルールを自分たちの都合のように作り変える。


 昔から時の権力者がやって来た、普通の方法だ。

 リバースのやり口は至極簡単である。

 力には力を。

 金には金を。

 施しには施しを。


 実際問題リバースはこの世のあらゆる構造を変革させたいという堅い意志を感じる。

 鈴子の洞察を聞いた美知は冷静に答えた。


「リバースはこの世の構造を変えたいという意思を感じるが、まだ掴みとれないけど、強い意志を感じる」


「それはどんなかな?」


「許せないんだよ、不条理なこの世界を」


「不条理…………ね……まあそうかもしれない」

 鈴子は考える。

 確かにこの世界は色々と可笑しいと。


 人身売買、麻薬、電子犯罪、詐欺、殺人、強姦、ストーカー、医療ミス、虐め、虐待、脅し、強請り、数えてもきりが無い。


 ありとあらゆる人間の悪意を呼び覚ました悪意の塊。

 全ての人ではないが、この世の悪の部分が一層充満していると最近感じる。


 美知もこの世界は可笑しいと思っている。

 昔も今も、ずっとだ。

 鈴子もこのような腐りきった世界は早急に変革しないといけないと思っている。

 とまあこんな堅苦しいことを美知と鈴子は考えながら、ハンバーガーを食べても楽しくないと思い、と言ってももう食べ終えるので、もう御終いにした。


「ふわぁ~~~なんだが眠くなってきたね鈴子ちゃん」


「う~~~ん、そうだね美知ちゃん」


「もうここで寝ちゃおっか?」


「いいね、24時間営業だから問題ないし」


「おやすみ~」


「おやすみ~」


 というわけで現在時刻はそろそろ午後10時をまわる時間。

 二人はこんなデンジャラスな状況で寝るという大物っぷりをさらす。

 しかしここで邪魔が入るのであった。


「ちょっ、ちょっちょっと待て―――――――――!!」


 突如若干離れている席についている、怪しげなフードを被った男が声を上げた。

 美知と鈴子はいきなり安眠妨害? な感じで眠りそうだった眼を開いた。


「でっ、誰なのあんたは?」


「そうそう誰あんた?」


「俺か…………いいぜ、教えてやる」


 フードを捲り正体を現す男。

 

 青髪、眼は座っているが、まあまし、耳にピアス、鼻筋はまあ普通。

 そんな特に普通の男と言っても結構若いと思われる。

 年齢は美知と鈴子の予想でしかないが、18、19ぐらいと予想が一致する。


「あんたは……」

「もしかして……」


「そうだ……俺は…………」


「誰でしたっけ?」

「知らないな~」


「てめえらちょっと表出ろや」


 素直にバーガーショップから出て広場に来る美知と鈴子と謎の男。

 謎の男が説明する。


「俺のことを知らない……まあフード被っているからな、そうだよな……」


「でっ? あんた誰なの結局?」

 美知が問う。

 すると男が名乗った。

「この俺はリバース最高幹部の一人……青柳様だ!!」


 静寂に包まれている夜の広場が騒ぎ出そうとしている。

 だが、鈴子は案の定心当たりがない。

 が、思い出した。

 たしか梅田事件の時に後から現れたフードの男がリバースに青柳と呼ばれていた。


「なんだ、あの時のかませか……」


「かっ……ませ…………だと!? この俺が……許さねえ……発言を取り消せ! てめえら……!!」


 青柳が怒りに震えている。周りのコンクリート製の地面にひびが入る。

 木はゴオゴオと揺れ動き、噴水の水が歪んで、バチバチと電流が走る。

 空間の裂け目が見えそうなぐらいに辺りは電子の衝突が走っており、今にも割れそうだ。


 青柳が荷電粒子砲を鈴子にはなった。

 鈴子はそれを右手だけで防ごうとした。


 だが、そこで突如鈴子が胸を押さえて、苦しみだす。

 ぐらりと倒れそうになり、片膝を地面につけた。

 とっさに美知が前に出て、荷電粒子砲を右拳を裏拳で弾き飛ばした。

 右拳に気を籠めているので、美知はまったく怪我を負ってなかった。


「どうしたの! 具合悪いの……鈴子ちゃん」

「ちょっと…………なんだが知らないけど、胸が苦しくなって……」

 鈴子の様子が可笑しい。尋常ではない不安を美知は感じた。

 このままでは不味い。

 美知は青柳の実力をあまり知らないが、どう見積もってもレベル5相当のいやそれ以上の力があると踏んだ。

 もともとの力はそんなにないはずだが、たぶんリバースによる影響だろうと考えていた。


(どうする…………鈴子ちゃんがこの状態では……こいつには勝てない可能性があるかもしれない……だが、逃げると言う選択肢も取りずらい……私は鈴子ちゃんを連れて逃げられるほどの実力もとい逃げ足があるとは…………いやここは逃げたほうがいいか……こいつはある意味危ないと思うし)


「そもそもな……てめえとてめえだよ…確か鈴子と美知とか言ったな」


「さっきの会話盗み聞きしてたの? 嫌な奴」


「うるせえ……お前らはな俺の感だが、危険な存在だ」

 青柳が続けて説明する。

「特に鈴子とか言う今苦しそうにしているガキはどうも危険だと俺は思う。こいつはリバース様ののちのちの脅威になる可能性がある。一回戦っただけだが、戦闘センスだけではなく、技量も少女とは思えねえほど高かった。流石レベル6と言ったところだが、それだけじゃねえ……眼だ。眼が違う。眼の色といい、眼の鋭さが、俺達の総統リバース様と同等いやそれ以上だと感じた」


「へ~お前、リバースの顔を見たことがあるの?」


「いや、ないな……正確にはモニタ越しで顔とか声とかも加工していて見てない。ただ、一度だけ会ったことがある生身で、その時ちらりと眼が見えた、フード越しだが…………リバース様はそこの倒れそうな女みたいな眼よりも真剣で、重厚な、よりこの世界をよくするために動いてくれる、博愛的な人だった。

 すまん顔も一様見たことがあるが……たぶんあの顔は変装か、能力を使用して本当の顔を変えていると俺は感じた。素顔ではないと認識だ」


 青柳は眼を細めて、目の前の少女たちを見る。

 この少女たちの雰囲気や圧力、もとい青柳の第六感が警告を放つ。


 特に鈴子という少女、こいつだけは消さねばならないと青柳は感じた。

 何故だがはわからない。だが、そう感じるのだ。

 逆にこの美知とかいう少女は……確かに脅威を感じる。

 底知れない実力を隠し持っているような……いや何かひっかかるが戦闘力はたいしたことないと感じるがそれ以上の凶悪な感覚を刺激しそうな、こうなんだろう……一見普通の少女に見えるがヤバい、ヤバいが何故か自分には危害を加えないという幻想を感じさせる。そんな感想だった。


 青柳はここで提案を出した。


「鈴子とかいう奴を俺に引き渡せば、お前は見逃してやるぞ」


「嫌だと言ったら?」


「仕方ないな……両方とも俺の城に来て貰うことになる」


「交渉決裂だね」


「ああ……」


 青柳が荷電粒子砲を5発放った。

 狙うは美知の足と肩と右手だ。


 美知は回避しようとした。

 だが、不覚、回避した瞬間背後から荷電粒子砲が三発放たれた。

 一発が美知の左膝を貫通した。


「ぐわっ!? しまった……油断した」


「ざまあねえな……じゃあいっしょに来て貰おうか二人とも」


 鈴子は完全にもう地面にあおむけになって倒れていて、呼吸が荒くなり、今にも病院に連れて行かなければ危険な状態だ。

 美知は鈴子ちゃんだけは病院に連れて行ってと頼んだ。


「大丈夫だ……鈴子とやらはうちの治療部隊がいるから普通に直せる。さあ俺に捕まれ」

 青柳は鈴子をおぶった。

 美知は考える。ここで着いていくべきなのだろうかと。

 素直に捕まったほうが良い場合もあるが、竹男と合流できないまま敵の手に落ちたらどうなるのかわからないので、危ないと感じた。


 捕まったら最後洗脳されて、竹男達と戦うように仕向けられるかもしれない。

 そうなった場合のことも考えないといけない。

「さあ……どうしたこい!! おら素直に言うことをな……」


 その時天から光り輝く矢が青柳に向けて落ちてきた。


 青柳は咄嗟に鈴子を捨てて回避した。

 美知はそれを逃さず鈴子を無事取り返した。


「美知さん!! 鈴子さん!! 今の内です! 逃げましょう!!」


「あんたは……森男君!」

 かくして森男君と美知と鈴子は青柳の魔の手から脱出に成功した。

 青柳は悔しそうな表情である。


「まあ、いい……あんなやつらほっといてもリバース様の脅威になり得るわけがないからな……」


今回からArcadia版と内容が一部変更されてます。気になるのならお読みいただけると、これからのお話に深みが増すと思います。

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