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60話 騒乱の天能咲市

 4月20日午後6時。

 会社が終わり、帰宅しようと俺は電車に乗ろうとした。

 だが電車が止まっている。

 仕方ないので、タクシーで帰ろうとするがよく見ると、車が走ってない。

 いやまばらだが走っているが、数が少ない。


 何かがおかしい。俺はそう感じたので、ネットを覗いてみた。

 するとノーちゃんねるではどうも祭みたいなことになっていた。

 リバースに賛同するも集めている各スレで。

 そうして一部のノーちゃんねらーが賛同している。

 何故かと言うと、アンチバリアシステムが無効化されたみたいだ。

 この世界の建物や人物には能力アンチバリアシステムがなされている。なので能力による破壊などは出来ない。

 人物に対してもあまりダメージを与えられない。

 なので強い能力者が暴れ出してもあまり影響がないのである。

 まあレベル5だと流石にヤバいが、それでもアンチサイキックが出動してすぐさま無効化されるのだ。

 アンチバリアシステムがないので各地で騒乱となっていると報道されている。


 だが、この辺り、帝黒塔市だが俺の会社のある場所は暴乱は起きてない。

 一体どういうことなんだ?



――――調の旋律を奏でる音の調律者が守るセカイは、大変な帝拠を確実に守護することになる。金色の髪を揺らし、琥珀色の瞳で街を視るものがいる。勇気がいることなのね。そう……この日は来ることが決まっていたのね……


 金色の音色が帝黒塔の周囲を包み込む。騒ぎを起こそうと考えていた愚か者を鎮めて、家路についた。


 舞台は天能咲市に移る。


 銃弾が炸裂する。壊れていく物や人。武装する一人の銃愛好家が起こした暴動だった。女や子供が蹂躙され、重傷を負う。誰も止められないと感じていた。


「ひゃっはーーーーー!! もう誰も俺を止められないぜ!! 殺しまくってやるぜ!!」


 眼は濁り、暗礁としない雲行きで誰も見ていない。ただ銃を撃ちたいがために銃を揮うそれが彼の欲望。その欲望にピリオドをつけた人物が現れた。


 懺刑の破断斬。放たれた技で瞬時に銃愛好家が無力化された。朱家雫あけやしずくがこの辺りに来ていたので、向かったわけだ。まつりも来ている。

 まつりが重症者の救護を行っている。まつりの手から淡い光が放たれる。


「まつり……あなたのその力に言及はしないけど、あなたの隠していることをいつか教えてくれるのなら力を貸すわ」


「しずく、今は緊急事態だから仕方ないわよね。そうね、魔法とだけ言っておくわ」


「ふふっ。魔法ね確かにあなたのやることなすこと魔法でもなければ説明できないわね。さあ暴徒者の鎮圧に行きましょう!」


 しずくとまつりが暴徒者の鎮圧に急いでいるとき、別の場所では……




 火炎能力者が力を揮い家を粉々に焼失させていた。アンチサイキックはあまりにも緊急事態で各地に出動していた。なのでこの能力者を止められるのは警察ぐらいだが警察では歯が立たなかった。逃げ惑う人々を燃やし尽くす非道の火炎能力者は街行く人々を燃やし焦がしていた。火炎能力者はもう完全に人間としての常識を失っていた。人を燃やし尽くす瞬間に喜びを感じていた。快感に身を委ねて脳からアドレナリンが排出されていく中――


 紫電が空間に走る。雷鳴が鳴り響く。轟音と共に空が曇り、雷雲が現れる。

 雷の音と共に一人の人物が現れた。


 流線形の雷のマークを模した仮面をつけて、黄色のヒーロースーツに身を包み、マントを羽織る謎の人物が火炎能力者に相対した。


「なんだ、お前?」


 火炎能力者は尋ねる。仮面の人物は答える。


「お前のような愚者に名乗る名前は無い」


「なんだとてめぇぶっ殺してやる」


 火炎能力者が火炎弾を放つ。雷のヒーローは火炎弾を手で払いのけるようにするだけで火炎弾が横にそれる。


 雷のヒーローは雷撃の槍を作り出した。それを投げつけた火炎能力者に。火炎能力者はそれを躱す。だが、直ぐに雷の仮面人が眼前に迫り、雷の剣を生み出して、斬撃を喰らわす。火炎能力者は僅かに躱すことに失敗するが、傷は浅いほうだ。血が少しだけ肌に滲み出る。火炎能力者は思った、もしまともに喰らっていたら命はなかったと。


 火炎能力者はここに来て少しだけ恐怖と言う感情が出てきた。轟音と共に雷が木に落雷したかと思えば、雨が降ってきた。しとしとと落ちる雨粒は情勢が悪い火炎能力者にとって、最悪の状況になっていた。薄暗い天空から雷の仮面人が手を天に向かって上げたと思ったら、手を振り下ろした。瞬間、天から裁きの雷が火炎能力者に轟き落ちた。


 火炎能力者は何が起きたのか一瞬わからなかったが、数秒後理解した。その後、その場には雷の仮面人しか残ってなかった。

「縛っておくか……」

 そう言い、どこから用意したのか縄で火炎能力者を縛っておいた雷の仮面人。

 そしてその場を後にした。


 30分後ぐらいにアンチサイキックが到着した時に一人の男が気を失い縛られていた。事態をこっそり見ていた住人により、謎の仮面の人物火炎能力者を無力化したと報告していた。アンチサイキックは調書を取っていく過程で、その謎の人物に興味を抱いた。

「雷を使用する仮面のヒーローか……そうだなサンダーとでも名付けるか」

 アンチサイキックの部隊長がそう名付けた瞬間だ。

 そしてなぜか巷にも快傑サンダーとして彼の名が知られることになるのはそう近い話だと思われる。

 快傑サンダーとはいったい……謎の人物は天能咲市を駆ける。

 また別の場所では……死闘が起きていた。



――――悠然と立ち並ぶ大型ショッピングモール。

 そこでは略奪と買い物に来ていた人たちへの弾圧が起きていた。


「おらおらおらっ!! さっさと大人しくしろ!! 俺様は兵刀連合の団長様だ命が惜しいなら、大人しく俺に従え!」


 荒々しい筋骨隆々の野蛮そうな中年の男が刺身包丁を手にその場で買い物をしていた人たちに向かい、脅す。

 人々は逃げようとするが、兵刀連合の仲間が何人か捕まえる。

 そして刃物で脅す。しかし諦めてその場に立ち止まってしまう人たちがいる中一人の男性が震えた声で叫ぶ。


「やめろ!! お前みたいな獰猛な奴の言うことを聞いてたまるか!! みなさん逃げて下さい!!」


 他の人たちはでもっ……と言った顔で困惑している。それもそうだその男性はとてもじゃないがひ弱そうで強そうに見えない。こんな状況ではどうしようもないと感じていた。だが、勇気のある男性はさらに続けた。


「僕は超能力者です。レベルは3ですがこんな奴らならなんとかできます」


 そこでみな少しだけ安心した。だが、レベル3の場合ここにいる十数名の荒くれどもを退治できるのかという疑問はあったが、ひとまず安心した。


 兵刀連合の団長が手前よく大きい声を出して恫喝する。


「なんだと馬鹿かてめえは俺様はな能力者なんかに後れを取らないほど死線を潜り抜けてきたんだぞ!? 二十年前のガイア戦争にも派遣したんだからな。てめえみたいな若造にはやられねえぞ」


「なら試してみますか? 僕と一対一で戦って僕が勝ったらその人たちを解放して自首する。僕が負けたら僕もあなた達に好きにされるそれでいいですか?」


「いいぜ。まあてめえの命を貰うだけで勘弁してやるぞ。命知らずめ」


 そうして団長と青年が相対する。他の買い物客ははらはらと見守っている。


 団長が刺身包丁を投げつけた。青年は油断していたが、それをなんとか躱す。

 だがその隙に団長が迫り、パンチを一発入れたと思ったら、そのあとは一方的な蹂躙劇だった。青年は防御しているが蛸殴り状態だった。そして最後には団員たちが束になって殴る蹴るの繰り返しだ。青年はやめて下さいすみません命だけはなどと命乞いをする。最後には土下座までしていた。団長ははったりだったんだなと尋ねると青年はこう答えた。


「一応精神感応系の能力者なんですけど実際に心を読んでも実戦だと体がついていかないようです。すみませんでしたーーー!!」

 なぜか最後に叫んだ青年。あまりにも間抜けな青年に団長は呆れて声も出ない。


「それで団長。こいつどうしやすか。殺しますか? それとも好きにしますかね俺が貰っても良いっすか?」


「そうだな俺の好みじゃないからお前にやるとするか。お前らも好きに輪姦まわしていいぞ」


 青年は突然のことでえっ?えっ?となったが直ぐに理解した。そうである兵刀連合の団員たちは男色家だった。といっても女にも興味があるので両刀であるが。

 そして堅くて暗い部屋にそれぞれ三名ぐらいの団員たちが自分好みの美女や美青年もしくは美少女はたまた10歳ぐらいの男の子まで親から連れ離した。親は何をされるか理解していたので顔面蒼白だった。ある母親は自分の中学生の娘を連れだされそうになったので懇願するように慈悲を求めた。


「お願いです!! 娘に手を出すなら代わりに私が犠牲になります!! だからお願いです!! 娘には手を出さないでくださいお願いします!!」


 それを聞いた団員たちはニヤニヤした嫌らしい表情で答えた。心底下品な言いぐさで。


「そうだな……じゃあまあ結構年でもないが俺のストライクゾーンよりちょっとだけ上だけどさ、人妻のあんたが代わりに俺の相手をしてくれるということだよな? 奥様さんよ?」


「ううっ……えぇそうです。娘に手を出さないのなら私が代わりを務めます」


 それを聞き、うひょーと甲高い声を上げたりする団員がいる中、心底下劣な団員がその母親(30代後半ぐらいだが美人)と中学生ぐらいの美少女を手に取り、別室に連れて行く。母親は約束が違うじゃないですかと抗議の声を上げるが、団員たちは違う違うと言う。


「あんたが輪姦まわされるところをビデオに撮る。ついでに娘さんにもじっくり見てもらうのさ一種の性教育だなガハハ」


「酷いあんまりよっ!!」


「なんとでも言えじゃあいただきまーす」


 乱暴に服や下着を脱がされていく美人な女性は抵抗むなしく犯されてしまう。その様子を死んだ魚の眼で見ている中学生の娘を隣で卑猥な言動で捲し立てる団員。この団員はもちろん少女趣味な団員でこちらの中学生の美少女が範囲内の奴である。

 そして何回も犯された後、死んだ眼で放心している美人人妻は今にも死んでしまいと後悔していた。

 なぜなら娘が犯されそうになっていたからだ。娘は嫌です、やめてなどか弱き腕力で抵抗するが、無駄に終わりそうだ。そして後少しで服と下着を脱がされて、恥部を晒されてしまい団員の巨大な棍棒で征服されそうになった瞬間それは起こった。


 団員たちだけがショッピングモールの外の駐車場に瞬時に移動した。


 移動させたのは座標移動の能力者、霧咲錬夏きりさきれんげによるものだ。彼女は武想女子学園高等部一年生である。深紅の赤い桜をモチーフにした制服を着こんでいて、立派な深紅の桜のエンブレムが左胸の校章である。疑似刀を帯刀していて、煮えたぎる気持ちで薄深紅の長髪を揺らして、下種の荒くれどもに一喝する。


「この野蛮な下種がっ!! 貴様達のような強姦魔など斬り伏せてやる」


 そこから一方的な戦いだった。


 団員たちは空間を瞬時に行きかい、地面に埋まったり、壁に激突したり、団員同士でぶつかり合い、ボロボロになっていた。何人かは刃向い錬夏に向かってくるが、瞬時に背後に移動して疑似刀で斬り伏せた。刃がついてないとか関係なく、団員たちの肋骨は折れて粉々になった。


 そして十分後そこには兵刀連合の荒くれどもが全員一人の少女に蹂躙され、再起不能に追い込まれて気絶していた。最後に止めの股間潰しを行い、全員の男性としての機能を剥奪しておくことを忘れない。


「急がないと……しずく先輩はいったいどこなんですかね」


 そう言い、しずくを探しに天能咲の建物の屋根をバネに跳躍したと思ったら連続で瞬間移動して行き、見えなくなるところまで行った。


 その後、政府は非常事態宣言を発令した。自衛隊が天能咲市にやって来たときは、各地で破裂音や建物が燃えるなどして、パニックとなっていた。略奪、火事場泥棒、強姦、暴行、殺人、器物損壊など様々な犯罪が起きていた。

 中には正義感の強い能力者などが悪人を退治していたが、それでも暴徒は数があまりにも多すぎた。


 そして自衛隊が手をこまねいている間に、竹男が邪神の翼を広げて、天能咲市の自分のアパートに戻ってきていた。幸いにも竹男の周辺は辺境地で若干田舎よりであったため暴乱は起きていなかった。


 竹男は空を飛んでいる間に今まさに大変な事態が起きていることを知った。

 携帯を使ってみんなに連絡を取りたかったが、回線が完全にパンクしていて電話は使えるものではなかった。


 竹男はみんなの安否を確かめたかったが、とりあえずジョギング用のジャージに着替えて、愛用の爪疑似武器を装備して、家を出て飛んだ。


『おいおい竹男どうするんだ。こんな時だからこそ美知みしるちゃんやしずくちゃんとか鈴子ちゃんや美月ちゃんやテルネアスちゃんを探さないとやべえぞ。まああいつらならこんな事態はたぶん大丈夫だと思うがな』


 竹男の中の体の中に混在して生息する自称邪神のゼノが脳内で話しかけてきた。竹男はそのアドバイスをうっとうしいなと少し思いながら確かにみんなのことが心配だと考えていた。


 シオウとかは大丈夫だろうが、すわるとかは大丈夫だろうか。

 あいつは椅子しか出せないし戦う時も椅子を武器にするしかないからちょっと不安だ。


 竹男がそんなことを考えていると二人の走る女性がいた。

 よく見るとヴァルゼンさんこと春美さんと暁美さんが走っていた。その二人を追いかける男がいた。


「御嬢さんがたよ~! オレッちとデートしてくれたら何にも傷つけないから。いやまてよあそこに入れるから結局傷ついちまうか、ギャハハ」


「春美さんあの愚弄あんなこと言ってますが、どうしますもう逃げるの止めますか?」


「嫌ですよ暁美さん。私まだ経験ないのにこんなところであんな野蛮なレイプ犯に犯されるなんて絶対嫌です。そうですねもういいです戦いましょう」


 竹男は今にも助けに行こうと思っていたが、邪神ゼノが制止する。


『竹男。どうやらあの嬢ちゃんたちやるそうだぞ、まあまてヤバそうになったら急いで駆け付けたらいい』

「でもっ……それだと遅いかもしれないだろ」

『どうやらあの嬢ちゃんたち覚醒したようだぞ、体の内から感じるエネルギーが依然と比べ物にならない』

「どうゆうことだ!? ゼノ??」

『能力者になったんだよあの嬢ちゃんたち』


 暁美が前に出る、そしてこう言い放つ。


「さあ、どこからでもかかって来なさい。私があなたを地獄に叩き落としてあげましょう」


 すると暁美はスイッチが入ったのか、流石は役者の卵と言った感じか、役に入り込んでいて人が変わっている。


「そうですね。今回あの人になりきりましょうか。ムーンウォーズのジェミニの女騎士オルビオン・ケーニスに」


 ムーンウォーズとはその名の通り遥か未来の設定の地球と月の宇宙戦争を描いたSF映画のことである。

 全部で10部作もあり、この世界では大人気作品で今でも続編が作られているほどの人気ぶりだ。オルビオン・ケーニスとは作中での4部から7部までの主人公で作中での伝説の月面女騎士となっている。ジェミニとは自身の体の中に眠る波力を外に形成して波力の武器を展開できる宇宙の騎士のことである。

 オルビオンは作中でも主人公なので最強として描かれている。


 暁美は数日前に力に覚醒したのである。能力名は『創作天装フィクションクロスディバイン』。その名の通り創作物での人物の力を自分自身の力として使える能力だ。

 この能力はその創作物を自身が見たり読んだりして能力を熟知しないといけない。何回も見て能力を作中の人物の力を想像イメージして初めて自分自身の物に出来る。


 暁美はムーンウォーズのディスクを全作品を持っているほどのマニアぶりだ。

 何度も擦り切れるほど見直したものである。


 そしてそんな暁美だからこそオルビオン・ケーニスの力を自分の物に出来た。


 レイプ魔の男も何を言っているんだと言う顔で暁美を見ている。このレイプ魔は一応レベル3の風力操作能力者だ。

 風を自在に操り相手をかまいたちで切り裂くこともできる。そんなレイプ魔が脅しをかけた。


「ふふっふふふ……うっせえな……俺の風の刃で切り刻まれたくないのなら黙って俺の物になれよ」


「それではやらしてもらいます」


「はっ?」


 暁美がそう言い放った後に、疾風の素早さで、暁美が光の剣を作り出して、レイプ魔を一刀両断した。


「嘘……だろ…………」


 哀れレイプ魔はそのまま崩れ落ちた。そして暁美が一言。


「またつまらぬものを斬ってしまったようですね」


 どこかで聞いたことのあるような台詞セリフを言って能力を解除した。


 竹男はその一部始終を見た後に暁美と春美と合流したのである。


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