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58話 学内対抗異能戦 3

 Bブロックの準々決勝は第一試合は御剣が勝ち。

 第二試合は、美理が勝った。

 第三試合は安手さん。

 第四試合は依吹さんだ。

 そして本来はAブロックの準決勝が始まるのだが、生徒会長が個人的に美理の試合を先に見たいという願望をみんなには言わずにたまにはBブロックから準決勝をしましょうと提案したのでみんな同調。

 よって順番的には後のはずが美理の出番と言うことになる。


 美理みことは相手の名前を思い出そうとしていた。

 御剣……なんだったかな。

 確かこっちが苗字だと思いだせる。

 しかし意外にも面倒な技を使ってきたと美理は感じた。

 まさかの固有結界系とはなと。

 対象を巻き込んで、現実とは別の場所に自分の有利なフィールドを展開できる能力だ。

 かなりレアな能力で、美理もそれを見るのは初めてだった。

 正確には生で見たのは初めてだった。

 そして御剣はこう発言した。

「さあ、この空間では僕の得意なこの剣でしか相手を傷つけられないんだよ。どうする美理君?」

「知らん。そんなの試してみないとな」

「じゃあ試して見なよ」

「ああ、行くぞ」

 美理は瞬間移動の能力をスキルフォルダーに追加して御剣の背後を盗った。

 そして剣ではなく拳で、攻撃した。

 すると衝撃を殺されたように御剣に入った拳は無力にも弾き返された。

 なるほどと美理は感じた。


 暗転する異次元空間は反復する心臓の鼓動を表すかのごとく、脈動していた。

 現実から隔絶された不気味な空間は美理をあざ笑うかのようにただその場にあるだけだった。

 御剣はここで動いた。

 瞬時に右手に破壊剣を召還し、回転するかのごとく、まるで竜巻のように剣を振り払った。

 その木舞は空間を裂き、圧縮された波動となり、美理を襲った。

 美理は咄嗟に右手と左手を交差させて、防御の体勢に切り替えた。

 この時、美理は無策ではなかった。

 腕にサイコエナジーをありったけ籠めて、格段に腕の硬度を上昇させていた。

 これにより、美理の交差した腕は鋼鉄すらも上回る堅さを維持していた。


 ぶつかり合う両者の一撃と壁は矛盾するかのごとく、どちらも無傷であった。

 背後を盗ればいい、そのままあの防御を上回るそれ以上の破壊力ある攻撃で仕留めればいい。

 そんな両者の思惑が交差する。


 時間にしては最初から空間に強制転移された時から僅かに30秒の出来事である。

 通常の時間のより現実での体感時間は異なる。

 それは当事者にしかわからない不可思議な現象である。

 刹那、御剣の破壊剣『核雷』が猛威を揮った。

 剣を宙に上げて、そのままただ振り下ろすそれだけを行う。

 すると衝撃波が空間に響きあう。

 絶望的な威力で破壊の波動が美理を襲うのであった。

 美理はそれをなんなく躱し、左手を後ろに戻した。

 そして地を踏んで、瞬と跳ぶ、瞬時に空間を加速し御剣の眼前に躍り出た。


「悪いな。ちょっとばかし痛いぞ」

「無駄……だ」

 美理は左手を構えて、拳を作り、一気に振り抜いた。

 ただ普通の拳撃ではなくて。

 衝突――それは一人のただ剣の力に頼っているだけの男を昏倒させるには十分だった。

 御剣は後頭部を地面に叩きつける恰好で着地した。

 それはあまりにも無残な格好だった。

 ただの高校生の拳が相手も高校生だが人間を吹っ飛ばせるほどの一撃を放てるとは到底理解できなかった。

 御剣は理解の範疇をこえていた。

 この俺様が負けただと!?

 そんな感想が漏れた。

 そして空間は形成されていたものが瞬時に割れて、通常のバトルフィールドに戻った。


 なぜ美理の一撃が制限空間で通じたのかというと、単純である。

 定義を書き換えたのである。

 この空間では剣による攻撃しか通じないをこの空間では拳による攻撃しか通じないに書き換えた。

 能力名『制限変更ルールチェンジ』を使用し、ルールを書き換えた。

 美理にとってはなんてことない能力だが、この能力も師匠の師匠の友人から譲り受けた、実は使いようによってはかなりヤバい能力だが美理はあまりそういうことは気にしない。

 自身の能力は他人の能力が使えるというある意味唯一の能力かも知れないが、美理は自分の自分だけの力に憧れていた。

 俺はただの模倣士で本物により近づいた精巧なコピーを作るだけ、そんな反則的な力を美理はあまり好きではなかった。


 倒れ伏せた御剣はもう起き上がらないと思われた。


 意識がまだある。


 御剣は最後の力を振り絞って、自身が使える最高の技を使用した。


 剣武王斬鬼をバトルフィールドに展開。

 召喚系作成系の能力技で自身の思い描いた怪物を出現させる技。

 剣武王斬鬼はまさに鬼。

 剣を6本の腕にそれぞれ持っており、6本の剣がかなり大きい。

 身長は三メートルはある。

 かなりの圧力を感じさせる強面だ。


 美理はやれやれまだやるのかと呆れていた。

 御剣の取り巻きはついに御剣様の奥義が発動したのですねと、言っていた。

 どうやら奥義のようだ。

 おいおい奥義と呼ばれるものをこんなただの学生通しのバトルゲームに使っていいのかよと美理は内心思っていたが、そんなことはどうでもよかった。


 御剣は既に意識を失っている。そう確信したのはただの感だった。

 なんてことない感による判断だが、美理は疑わない。

 剣武王斬鬼は誰彼かまわず、襲いだして暴走を始めた。


 御剣が作り出したとは思えないほど力強く、無敵の艦隊に思えた。


 斬鬼が女子生徒を襲うとしていた。

 俺は咄嗟に防ごうとしていたが、斬鬼が四つ身の分身を行っていて、俺は三体の相手をしていた。

 四つ目の斬鬼は女子生徒に大刀を振り上げて、下そうとしていた。

「やっ…やあぁ……」

 間に合え! と俺は超速で駆ける。

 がそのすんでで、斬鬼を一撃で斬り伏せた人物がいた。


 しずくだ。しずくが難なく斬鬼を一刀両断した。

 魅希も参戦しており、斬鬼を一体斬り伏せた。

 依吹も斬鬼を一体倒す。

 文愛生徒会長も残りの一体を素手で倒した。


 流石にみんな凄いなと美理は感嘆していたが、斬鬼はまだ生きていた。

 どうやらまだ一体いたようだ。

 未来に向かって斬鬼が迫る。

 夢から夢に向かって渡り歩いていたあの時の俺は未来を取り戻すために、奮闘していた。

 悲しみなんてない未来を創るために未来を魔の手から守る。

 そんな理想論を掲げていて、俺は戦いのために自分を磨いていた。

 未来を守る、だから戦う、そんなの当り前じゃないかと。


「未来ーーーーーーーーーーーーーーっっ!!!」

 美理は時間にしてコンマ一秒にも満たない速度で空間を超越して、未来の前に飛んだ。

 未来は振り向いて、涙を浮かべてこう言った。

「お兄様……危ないです!」

 あっ……油断していた。俺がこんな不注意を犯すなんて、なんてことだ。失態だ。もう遅いな。

 美理は死の一撃を喰らった―――




―――呆れたわ……あなたこんなところで死ぬつもりなの??

 ふいに声が聞こえる。謎の声だ。誰だろう。死にゆく暗い暗黒の空間に美理はただ一人いた。

 全身に力が入らない。まさに今にも死んでしまうそんな、感覚だった。

 俺は死んだのか。俺はもうあの世界にはいないのか。俺は一人であの世に行くのか。


 未来を守れて死んだのか……

 美理は悲観していたが、後悔はなかったと言うと嘘になるが、それでも未来を守れたのならもう何でもよかった。

 どうせあの時捨てた命だから今になって死んでもまあいいだろうと。

 あの時とは今から三年前ぐらいのことだ。

 未来が死の危険に晒されていたとき、俺は未来を助けるために命を捨てて、未来を救った。

 だが、未来を救っても俺が死んだら未来を救えたとは言えないことにその時、気づいた。

 だが、未来はそんな俺を救ってくれた。だから俺は生きられた。命を捨てずに済んだ。

 俺は未来を救うつもりが、未来に救われた形になった。


 そんな過去が記憶が鮮明に今でも思い出せる。


『でっ?? あんたそれで死ぬつもりなのこんなつまらないことで? そりゃつまらないわね~妹さん今後あなたがいなくて生きて行けるかしら~~~クスクス』


「誰だてめえは。俺の妹を愚弄するのか、許さんぞ、貴様」


『ごめん、ごめん、そう言うつもりじゃないのよ~~今あたしの姿を見せるからね~』


 そう言われると、艶やかな着物を着た、黒髪ロングの妖美な少女が俺の眼の前に現れた。

 前髪は上げていて、デコがきらりと光っているが、眼元は綺麗で、鼻筋は整っていて、唇はとても柔らかそうな小ぶりな形だった。

 体のほうも年相応と思われると言えば少し疑問だが、出るところは出ているし、足は目眩がしそうなほど純白な肌色をしている。

 だが一番気になるのはその年齢だが、いまいち不詳だ。13ぐらいから19未満だろうか。どうも見通しがつかない。

 中学生にも見えるが、大学生にも見えるそんな姿形だった。


「でっ? てめえは何もんだ?」

『あら? 名乗るのは普通そちらからじゃないかしら? まあ知ってるけどねあなたのことは生まれたときから』

「どういうことだ?」

『生まれたときから見守っていたというのが正しいかしら?』

「……つまりお前は守護霊かなんかの類いか?」

『だいせーいかい!! あたりよ! あたり。 まあ霊と言うよりぶっちゃけると神様の端くれなんだけどね~~』

「お前が神様?」

『そうよ。名前は“さくら”よ。さくらちゃんって呼んでいいのよ』

「それ以外は語らないわけか……まあいいさくら、それでお前なら俺をこの空間から出せるか?」

『もちろんよ。私なら容易にあんたをこの空間から出してあげちゃいますよ、がんばればね』

「じゃあがんばってくれ」

『それじゃあ契約成立ってことで……』

 そういうとさくらは俺の眼前に来て、唇と唇を重ねてきた。

 こういうことにはあまり慣れていなかった俺は年甲斐もなく照れてしまうのであった。



 そうして俺は現実に戻ってきたわけだ。


 未来は俺の体に蹲るように、抱き着いていた。

 どうやら斬鬼の一撃をもろに喰らったようだ。

 右わき腹がぱっくりと裂けてやがる。

 血はどくどくと出ていたようだ。

 神様パワーなのか血は止まり、傷も塞がっている今では。


 救護班に運ばれて治療能力を使われて、俺は完全に復活する。


 御剣の奴がどうなったかだって?

 本人に意識はもうなく殆ど過失のようなもんだが、生徒会長の一声で無期限休学の処分で落ち着いた。

 大会はその日は中止となったが、後日続きが行われるようだ。


 と言っても三日後だが。


 俺は未来のお蔭で助かったみたいなことにしておいた。

 未来があの時サイコエナジーを俺の体にありったけ籠めて全身の治癒力をあげていたようだ。

 後でさくらに聞くと、未来のお蔭も多少だがあるということだ。

 まあ殆どさくらのお蔭らしいが。


 学内対抗異能戦の続きが行われた。

 Bブロック準決勝第二試合は安手さんと依吹さんの闘いだ。

 終止依吹さんが有利だったが、何故か依吹さんが転んで、安手さんが右ハンドと左ハンドでこねこねして依吹さんがほがらか~になってそのまま戦闘続行不可能となり、安手さんの勝ちになった。

 安手さんの技は未だに謎に包まれている。

 いったい何通りの技があるのか俺でも知らない。


 そして順番が逆になったがAブロックの準決勝が行われる。

 魅希としずくの闘いが行われる。


 だが、この異能戦には落とし穴があることを俺達はまだ気づいていなかった。


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