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56話 学内対抗異能戦 1

 国立帝桜大学付属異能科高等学校では明日の学内対抗異能戦のことについてみな議論を重ねていた。

 なぜならその学内対抗異能戦でよりよい成績を残した者にはなんと今後の単位取得の学業の座学の授業がかなり免除されるだけではなく、学内食堂で使える食券100回分が貰えるし、一位の人には無限異能都市一週間の学業旅の権利も貰える。

 10位までにも色んな商品が貰えるので生徒諸君は頑張ってほしいと学長先生は言っていた。

 美理みことはそんな食券は魅力的だが、無限異能都市の学業旅はどうでもいいと思っていたが、座学の授業がかなり免除されることに関してはかなりいいと思っていた。


 これなら優勝すれば大分サボれるな……それに中学の時は絡まれたりしたが、力を示しておけば、だいぶ生きやすくなる。

 だが、美理は自分の力を隠しておきたいと考えていたが、まあ見ただけではばれないだろうと楽観視していた。

 今日は16日で、明日学内対抗異能戦が行われる。

 全校生徒560名の異能科高校ではここで異能力を鍛えるカリキュラムを受けるので、一年の時はレベル1だったのに、三年生になればレベル4になった生徒というのもいるにはいる。

 中にはレベルがまったく上がらずに三年間を過ごして、卒業する生徒もいるが。


 今回は最初はトーナメント方式ではなく、学年バラバラで最初は30名ほどのグループででバトルロワイヤル方式で闘い、残った2名が本戦に出場できる。

 本戦に出場できる生徒は32名である。

 32名の生徒でトーナメントを行う。

 対抗戦ではバトルロワイヤル方式の時は、能力ファイトの特殊ルールの一つ、バッチを破壊するか、相手から奪うことにより破壊されたり奪われた生徒は負けになる。

 本戦のトーナメント方式の時は自身のNターミナレンを使用して体力制の時間無制限のバトル方式で闘う。

 つまり、一番重要なのは本戦よりもバトルロワイヤル方式の予選である。

 この闘いをいかにして勝って本戦に出るかが重要だ。


 美理は明日のことを少し考えていた。

 時間はもう放課後、生徒会の雑用係の仕事を終わらせて帰ろうかなと思ったら、生徒会長の文愛あやめと右生官の魅希みき、双子の妹の方が美理のほうに近づいてきた。

 美理はまたかよと溜息を吐いた。

 それもそうである雑用係になってからというのも文愛は毎日美理と一緒に帰らないかと誘うのだ。

 美理は最初は別に不満は無いと思っていた。

 でも文愛はいつも美理の手を繋いでくるので、やっかいだった。

 美理は心を読まれるのは別に迷惑だと感じていなかったが、過去を覗かれるのは酷くご立腹だった。

 文愛の能力は対象の記憶と思考を読み取る、物質に関しては記憶を読み取る。

 記憶は本人が覚えてないことでも、読み取れるので実はかなり使い勝手は良いのだが、読み取られる方はたまったもんじゃない。

 男特有のあのこととかあのこととかまでばれるのだ。

 とてもじゃないがこいつと手を繋ぐなんてごめんである。

 美理は手を繋がれては、離し、また繋がれては離しを繰り返す。

 文愛は諦めない様子で、なんども手を繋いでこようとする。

 そこで魅希が美理に話しかける。


「美理様は家では普段どのように過ごして御出でですか?」

「なんだ、いきなり」

「いえ、気になったので」

 美理は多少思考しながら、答える。

「まあ平日は買い出しと料理だな美来は料理できるけど俺の方が得意だからな」

「美理様は料理が得意なのですね。それでは今度の休みに紗希と一緒に食べに行ってもよろしいですか?」

「あっいいですね。私も食べたいです美理君の手料理」

「なんだよ、そんなことでいいのか? まあ別にいいけどただし食材費はお前たちが負担してもらうけどな」

「ふふっ楽しみにしていますね美理君」

「ありがとう美理様。今度楽しみにしているからね」


 そうして文愛と魅希と別れて美理は家に着いた。


 そして夜の九時ぐらい……


 美理は修行仲間の美理よりも年上の20歳になる、虎鮫尽とらさめじんさんに稽古をつけてもらっていた。

 今日は大明理心条さんは来られないので、同じ修行仲間である尽と組み手をしていた。

 尽さんは筋肉に張りが有るがっちりとした体格でだが、顔は二枚目ではないが、日本男児と言った醤油顔だが、男前だ。

 そんな身長180センチはある尽さんと組み手をしていた。


「どうしたどうした!! 脇が甘いぞ、美理よ!」

「そうですかね……尽さんこそ、今日は調子が悪いみたいですよっと」

「なんだと!? そんなわけないだろ。これでも毎日自己鍛錬を積んでいるのだぞ」

「はい、そこ」

 美理は尽の脇腹に一発入れた。

 尽はやられたという顔をしている。

「いつのまにそんなに強くなったんだ? 確か能力は使用してないのだろ」

「俺の場合能力を使用してなくても達人たちの動きが染みついてしまっているんで、自然体になっちゃうんですよ」

「本当に美理は出鱈目なやつだな俺も鍛錬をさらに重ねていかないといけないな」

「そうですね。じゃあもう一回やりますか」

「何度でも相手になるぞ俺は。さあこい! 美理! どこからでもかかってこい!」

 その後十回闘ったが、七回は美理の勝利であった。


 次の日、美理は学校に来ていた。


 学内対抗異能戦が後30分で始まるみたいだ。

 グラウンドに集まる生徒たち。

 そして学長先生の長い話があり、その後生徒会長の開会宣言があり、グループ分けだ。

 美理は第12グループのようだ。

 そして第12グループには知り合いはいなかった。

 これで存分に闘えると美理は考えていた。

 まあ知り合いがいても全力は出したが。


 第1グループの試合が開始される。

 まずはみんな様子見だ。

 そして次々と動き出す生徒たち。

 風の能力を使用する生徒が風で胸につけているバッチを弾き飛ばす。

 バッチは能力の攻撃を受けたら、一定の負荷がかかると外れる仕様になっている。

 だが、それほど外れやすいわけでもないので相手の能力を防ぎながら闘えばなんとかなると思う。

 後五名のところまで来たところ、マジックハンドのような物を伸ばしてきた生徒確かあの人は二年の結海安手ゆうみあんじゅさんだったな。

 ロングヘアのスカイブルーの髪色で自在に手を使う。

 変化自在の便利な手ミラクルテクニカルハンドという能力だったはず。

 もちろんこれは本人に聞いたわけでもなく、噂である。

 能力名は本人が付けることが多いので、簡単に知りえることが出来る。

 なんでも便利な手を生み出すとかなんとか……詳細は不明である。

 そんな安手さんが風の能力者に謎の手を飛ばしてきた。

 その手は少しだけデカい真っ白な手で爪などはついてなく、手袋のような手だ。

 それが風の能力者に迫っていく。

「なんだこれは!?」

「いっくよ~でっかくなれ!」

 すると真っ白な手がさらに大きくなる。

 そのまま全長三メートルはあろうであろう真っ白な手が風の能力者を握りつぶした。

「ぐあーーーーーーーーー!!」

 そのまま投げ飛ばされた風の能力者。

 そしてちゃっかりバッチを入手した安手さん。

 そしてそのままは彼女の無双劇だった。

 不思議な手でバッチを奪いまくっていた。

 残りの二人になったときに試合は終了した。


 続いて第2グループの試合だ。

 水の能力者の先輩、あれは確か黒雲滝太くろくもそうたさんだったな。

 三年生の先輩でAクラスながらかなりの実力者だと聞く。

 レベルは4だが、レベル5すらも圧倒する人物だと風の噂で聞いた。

 そんな先輩が、水を操り他の生徒のバッチを弾き飛ばしていく。

 そして最後の二人になった時に第2グループの試合は終わった。


 そして第3グループ、第4グループ……と来て第10グループの試合になった。

 そこで目立ったのはこの学校で紅一点の存在の彼女。

 朱家雫あけやしずく先輩が出る試合だった。

 彼女は朱家家の娘で、確か昔は妖怪などを退治する退魔士の一族の家に生まれた。

 流石に今は妖怪とか魔物はいないので、そんな必要が無いが、でも今でも朱家流刀剣術を教えているので、実力は折り紙つきだと美理は感じていた。

 しずくが血の刀を作り出す。

 彼女は自身の武器を持たないが、自身の血液で作りだした剣こそ最強の剣なのだろう。

 しずくが次々と生徒を斬り伏せていく。

 その際胸につけているバッチも破壊している。

 そしてそれと同じく無双しているのが、川澄祭かわすみまつり先輩だ。

 彼女は別に名家ではないが、とても成績優秀でおっとりしているが、しっかりしてて、とても綺麗な人だ。

 美理だけではないが、道行く人たちが100人中100人振り返るであろう美人なのだ。

 そんな二人、しずくとまつりは親友同士だ。

 学内でも有名なほど仲が良い。

 あっち系の人たちに妄想されるくらいだ。

 そんなまつりさんが水を器用に操り、バッチを弾き飛ばす。

 美理も詳しくは知らないが、まつりさんの能力は五大属性、火水風土雷の五属性を操る力だという。

 ただレベルはそれぞれ使える中で低めの3だと言う。

 でも属性を重ねあわせて使えばレベル4の連中でも相手にならない強さを持つ。

 そんな二人が生き残った。

 第10グループの試合は終わった。

 そして第11グループの試合も終わり、美理の番第12グループの試合だ。


 試合が開始される、生徒たちがそれぞれの能力を駆使して、自分以外の生徒からバッチを奪い合う。

 ただ一人、美理だけがその生態系の規則ルールに縛られずに、他の生徒たちをただ見た(・・)。

 刹那、特質的だがその他大勢の能力しか持たない生徒たちが驚きの声を発する。

 自分の胸につけていたバッチがいつの間にか無くなっているのだった。

 そしてその他の生徒のバッチ全てが、ただ美理ともう一人の生徒を除いて、美理の手の中にあった。


 美理はほんの一瞬の隙をついて、他の生徒の本戦出場権を奪い去ったのだ。


(まさか対象の同じ物体を自分の手に引き寄せる能力『異種強奪ヘテロスナッチ』がこんなにも強力な効果になるなんてな)


 だが美理は全ての生徒にこの能力を使用したが、ただ一人この能力を防いだ人物がいた。

 あいつは確か……同じ一年生のSクラスのやつだな……名前は確か。


 その男の名前は御剣剣司みつるぎけんじ

 剣司は美理を見ると、こう呟いた。

「なかなかやるようだな、君と闘うのが今でも楽しみだ」

「はっ?」

「まあ、僕には敵わないと思うけどね」

「言うじゃねえか」

「せいぜい本戦を楽しみにしておくよ、美理」

 そうして剣司はその場を去る。

「なんなんだあいつは……」


 そして生徒会長があっさり勝つとか魅希と紗希と依吹とかが普通に勝つ中、全ての予選は終了した。

 本戦までに30分の休憩が取られた。

 その後、本戦が始まった。

 第1回戦は、魅希と重岩地先輩との闘いだ。

 魅希は忍刀のようなものを腰に差している。

 重岩地先輩は確か柔道部だが、投げ技で圧倒するし、空手もやっているから強いだろう。

 試合が開始される。

 お互いのHPが巨大パネルに表示される。

 重岩地先輩が、まずは間合いを計る。

(さて、あの少女は俺の間合いに入れるかな……むむっ速いっ!)

 重岩地が驚いている間に、魅希が集束的に集まる軌跡を見せた、走行で地を蹴り、疾風の速度で不規則な移動で重岩地を追い詰めた。

 魅希が腰の獲物を解き放ち、瞬間的に12回も武器アイテムの疑似刀を斬った。

 重岩地はその攻撃に対処してないわけではなかった。

 だが、あまりにも速いその刀による速撃は到底回避することは叶わず、腕などで防ぐしかなった。

 これにより、重岩地のHPは残り73パーセントにまで減少。

 しかしただやられるだけでは済まないのか、三先生としての誇りなのか重岩地はカウンターで拳を一撃入れようとした。

 だが、魅希はその攻撃を読んでいたのか、体を捻るように回転させて、背後に跳ぶようにジャンプして重岩地の背中を盗った。


(暗道流忍び刀術『偽花』)


 花が花弁を開くように、その刀の軌跡は花のように力強かった。

 瞬間的に、竜巻のごとく、稲妻でも落ちたのように、重岩地の背中は腫れるように抉られた。

 外傷はあまり分かりずらいが、制服は押し花でも押し付けたのように、切り取られていた。

 重岩地は気を失っていた。

 審判がタンカを呼んだ。

 魅希はつまらなそうにその場を後にした。


 第一試合から大番狂わせが起きるなど、観客である生徒たちは予想外だった。

 重岩地先輩が負けるなど到底予想できるはずがなかった。


 美理は終始心がわくわくとしていた。

 力を今まで揮えなかった苛立ちを感じていたが、そのようなつまらないことではない。

 強者と闘うそんな普通ではできない、常識に縛られないことを、美理は英雄などになるつもりはないが、それでも守りたいものがあるから、強さを追い求めるのだ。

 強さの先には何があるのか? 見てみたいと、この時思った。

 美理は自分を受け入れた。

 この世の理を、真実を、知るために明日を生きるために。

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