55話 朱家焔
五月五日。焔はこの国石源帝国という赤い龍という俗称もある国にいた。
赤現帝国とも書くらしい。
確か資料によると中華人民帝国という正式名称だったと思われる。
古い記録だと今から二千年ほど昔だと書かれていた。
その当時は戦争の激化により多くの国民を内戦により殺していたと記録がある。
当時の皇帝は古い財閥出身者で、かなりの資金により富を独占していた。
さらに軍隊を掌握していて自分の思うがままに動かしていた。
そして自分に刃向うもの、楯突くもの、悪い記事を書く記者や評論家や文学者や漫画家などの反社会主義者を迫害して、拷問したりして二度と刃向えないようにしたと記録されている。
そんな完全なる独裁政権は長くは続かなかった。
中華人民帝国はそれより前はまだ融和的な社会主義という当時としてはまだましな社会体制を取っていたが、年月が経つにつれて、大統領制から世襲制の皇帝をたてる国家体制になってから独裁政治が始まった。
だが、好き勝手していた当時の皇帝名を宙才龍はまさか革命が起きるとは思っていなかったようだ。
当時迫害を続けていた人民が、首都北来で仲間をつどり、当時としては異質な力神通力(のちに超能力と判明した)に覚醒した当時彼らは神力借人と呼ばれていたは当時の皇帝を倒すために、帝城にまで押し寄せた。
最初は皇帝の直属の軍は抵抗していたが、すぐに負け戦になった。
そしてあっさりとはいかなかったが皇帝は神力借人たちに捕まり、国外に追放された。
何故か彼らは皇帝を処刑しなかった。
理由は今ではわからないが、たぶん国民を無碍に恐怖を与えないためだろうと思われると考えた。
そして真元首をたてて、国の名前を神龍赤星民主主義共和国と変えたと書かれている。
その後その国は千五百年ほど続いたという。
その後のことはあまりにも悲惨なので言いたくない。
とにかくまあそんなわけで焔はこの国に来ていた。
と言ってもだいぶ前から滞在しているが。
この国の前は伯西共和国に行っていた。
あそこは南国みたいで楽しかったと今でも思いかえす。
そこでこんな石源帝国とか言うなんの情緒もない飯が辛い味付けで喉が渇いて、鳴籠茶をがぶ飲みしないといけないほどの飯を出す国だ。
そんな何の魅力もない国に焔は来ていた。
焔はこの国で最近可笑しな出来事が起きていると聞いてやって来た。
焔の本職は退魔士だ。
退魔士は表向きには認知されていない職業なので、焔は表向きには探偵を名乗っていた。
ただそれだと問題なのは武器の所有である。
もちろんこの国には銃刀法違反の法律があるので刀剣類の類いは所持できない。
だが、焔は職業柄武器を持つのでなんとか誤魔化していた。
しかし誤魔化すと言っても特別なことをしているわけではない。
退魔術を使用して、自身の刀に隠蔽の退魔術を施しているのだ。
これにより、他人から見てもそれは刀ではなく、別の何かに見えるか何も存在していない風に見えるのだ。
これにより船の持ち物検査とかを回避してきた。
なお飛行機は怖いので乗ってない。
焔は意外と臆病な男であった。
時刻は十五時二十五分。
蓮花市の導響町に来ている。
ここで可笑しな事件が起きた。
化け物が現れて、人を襲いなんと喰ったのだ。
生きたままムシャムシャと喰い始めてしまい、贓物を引きちぎり、血を一滴残らず吸い取り、頭をそのまま噛み砕いて、咀嚼して、最後は骨すらも残らなかったと言う。
そのような人喰い事件が起きた。
人を喰ったやつは人型のものと村人は話した。
あれはもうなんと言えばいいのやら、化け物いや……人とは違う何かでしか表現できないです、そんな恐ろしい生き物が存在しているなんて。
顔は真っ赤に染まり、酷く醜くくて、人の大きさだが鬼のような般若のような体は赤黒くまるで血のような体表で、肌はつるつるしていた。
爪は長く獣のようで人を殺めるのは躊躇がない。
そんな人型の化け物が現れた。
そいつは山の方に逃げて行ったと言う。
焔は危惧した妖魔はよく退治するが、こんな妖魔は聞いたことが無い。
妖魔は基本動物の姿をしているのが殆どだ。
それが人型の妖魔となると……焔は何分初めてのことなので頭が混乱していた。
それにかなり慎重になった。
未知の凶暴な妖魔は何分何をするかわからないのである。
山を進む。
荒々しい山であったが焔は退魔士の基本技術飛ばし足を使用して、山を縦横無尽に駆け巡っていた。
これは体の中の気を足裏一点に集中させて、爆発的加速力を持って、地を駆ける技法だ。
焔と言うか退魔士としてこれが使えるのは朱家家としてはそれが普通だし、焔は特に不思議ではないと感じていた。
だが、普通の退魔士はこのような気を一点に集中させて、移動する技法こそはあるが、せいぜい時速五十―六十キロぐらいでその倍の倍、時速二百キロも出せるのは世界広しとはいえ、この非常識な身体能力と気の操作と充電解放と気の容量が並外れている、この退魔士としてまだ半人前と父親に言われた、少しばかり異質な人物―朱家焔、それはたぶんこの国石源帝国でも特異な存在だし、彼の母国日本でもだ。
焔は山の周囲を疾走しながら、対象の妖魔を探した。
あらかじめ、視力を気で上昇させて実質アフリカの原住民よりも見える目であたりを警戒した。
そのまま時間にして、五時間ほどでその対象の妖魔のいたであろう場所の痕跡を発見した。
そこは川の近くで、集落があったのだろう、だが、そこは既に廃墟と化していた。
木でできた家は無残にも強大な暴力により破壊され、畑は抉られて収穫前の野菜類はもはや原型を留めていなかった。
そのまま破壊された家を少しずつ見て回ったが、生存者は発見できなかった。
もしかしたら死体があるかもと考えるがそれすらもなかった。
ただ、その人間だった残骸―もとい肉片らしきものは存在した。
それは手だろうか、足だろうかいや乳房なのかもしれない。
それらは黒く歪んでいて、人間の肌の色とは言えなかった。
まるで何かに汚染されたのか、もしくは炎で黒焦げにされたのかわからないがそれらの破片は黒く変色していた。
焔は慣れた手つきでその変色した黒い塊を拾ってみた。
すると直ぐに、手の中で粉々に粉砕された。
まるで砂のような感じで破砕したそれは時間経過も無しに風に流されて、破壊された集落の殺風景な時間がまるで停止したかのごとく、何もいない生き物が存在した形跡もない空虚な空間を漂い、辺りを黒く変化させた。
まるで戦争の後の焼け野原のような何もないその場所は景色も元の世界から隔絶された色の無い灰色のモノクロ写真のようなとんでもなく古い景色に見えた。
残虐なその化け物は全てを消し去るほどの危険性を孕んでいる。
このままにしていたら、この国の全ての集落や村や街、都市は壊滅してしまう。
焔は早急に足を急いだ。
そのまま山を駆け、地を駆け、橋を越えて次の大きな街にやって来た。
街に着いたとき異変は感じ取れた。
そこは人が道に誰もいなかった。
いや―そこは街と呼ばれていた場所だと焔は頭で理解しているつもりだった。
だがそこはもう建物が綺麗に豆腐をお玉で掬い取るようにしてどこかの鍋の中にでも入れてしまったように建物自体が遥か遠くの一つの地点に無造作に置かれていた。
それは怪獣映画にでも出てくるように建物が原型は止めているものの、窓ガラスは完全に割れて、支柱は粉々に砕かれて折れ曲がっているし、二階部分と三階部分が引き剥がされていてカットされた状態になっているなど異常な破壊のされかただった。
中には教会だろうかそんなような建物がまるでゴムボールのように丸めらていて表面が黒く変色していた。
中の女神像だろうか、それが涙を流していた。
これは辛うじて原型を留めていたのが幸いだった。
焔は特定の神を信じていないいわゆる無神論者だったが、この時ばかりは女神像に手を合わせた。
焔は内心怒りと悲しみと正義感から沸き起こる人道を行うべきだとある種の義務感のような一種の道義的価値観と抑揚のない、苛立ちを感じていた。
そして手を合わして祈りを捧げた後、それは起きた――衝撃波。
空間を割る勢いで物凄い破壊を巻き起こす台風のごとき圧倒的波動の圧力が襲う。
焔はそれを退魔術の防護結界『絶空壁』を展開した。
空気を気で塗り固めて強度を鋼鉄の五十倍ほどにした異形物で空間の一部を固定化して、結界を周囲に張る退魔術の防御技だ。
これは現在でもわが国でも使われているトマホークミサイルを小型化して威力は減少したが、コストを抑えたことにより何百本も瞬間的に撃てるようにしたアンリミテッドミサイル数百発分を瞬時に防ぐほどの強度を持っている。
これは焔の桁違いの気量による常識外れの気込めによる退魔術だからだ。
通常は戦車の主砲を防ぐ程度の技だ。
なので焔の場合には常識が通用しないことをここに宣言して置く。
風が止んだ――そしてその常識外れの男と同じく常識外れな存在が姿を現した。
化け物――それよりも残酷で凶暴で異常な破壊者。
その姿は悪魔のような鬼のようなそれらにも当てはまらない姿だった。
ただ体の色は黒く、頭は髪が無く長い触角のような角が生えている。
そしてゆっくりと焔に気付いたのか近づいてくる。
焔は咄嗟に妖刀を抜く。
妖刀『千火戦焔』を鞘から抜く。
紅蓮の炎のような朱色の刀身を持ち、黒光りする鞘を重心とした妖刀。
百鬼夜行の鬼たちの骨を乾燥させ、黒鋼と混ぜて、千の焔を持つとされる、伝説の魔獣サウザンドフレアドラゴンの生血を塗りたくった一品。
サウザンドフレアドラゴンは北欧の伝説の魔獣だ。
こいつがいたと言われるのは約1000年前だが、今は存在しないと言われている。
しかしなにゆえ――この悪魔ととらえれそうな鬼のような邪鬼のごときそれとも西欧のガーゴイルのようなこの妖魔をいかように呼べばいいのやら……
焔はこれに仮の名を――破壊悪鬼とつけた。
破壊悪鬼は害意を向けた視線で焔を睨み、右手を揮う。
刹那、衝撃波――轟音と共に放たれた破壊の波動の竜巻は、全ての岩や家財や大地と空を掌握して、濁流のごとく並の景色を変革した。
残ったのは焔と破壊悪鬼の二人だけだった。
焔は防御退魔術――黒鋼の百乗壁を展開して難を逃れた。
ただの黒鋼を空間百畳分に百枚畳を張るように、圧縮して、森林樹を設置するように、漠然とそこにあるままに壁を築く退魔術だ。
破壊悪鬼は顔を顰める。
そのまま口を開き、何かの波動砲のような怪光線を発射した。
焔は足に気を瞬時に充電して纏い、発射と同時に破壊悪鬼の後ろに着地した。
そのまま呆気にとられた、破壊悪鬼をただ――薙ぎ払った。
ただの斬撃にして奥義となる、朱家流奥義『閃血斬』。
普通の一閃斬りにしか見えないが、至極当然それはただの斬り、斬也。
しかし極めれば相手の命の灯火を消し去る破道の奥義なり。
破壊悪鬼はそのまま塵となって消えた。
核を消滅させたようだから当たり前かもしれない。
焔はこのことを石源帝国の上層部に報告した。
そして――あまりにも心配だったので実家に帰ることにした。
しずくのやつどうしているだろうな。
俺が帰ってきたらよろこぶかな。
焔は家路につくことにした。
一年ぶりの帰宅である。




