52話 怠惰生高校にて 2
今日は4月10日で新入生の準備期間である期間で、その二日目である。
一週間は授業がほぼなく基本的に正午までで、クラブ活動の体験入部から高校の施設の使い方などを生徒会のメンバーが伝授するなどこの異能科高校を知るためにみな奮闘する。
先輩が基本的にそれを新入生に教える。
そんな生徒同士の交流も深めていくのを高校側は期待しているようだ。
さて俺はと言うと現時刻十時半ぐらいで、なぜか目的もなくふらふらしている。
クラブ活動には全く興味は無く。
俺は昨日生徒会長に生徒会室に来るように言われたのでそこを目指していた。
「ここが生徒会室か……」
見ると豪華な作りではなく質素ないったって普通の扉があった。
俺は中に入ると、そこに待ち構えていたのは生徒会長の洸善文愛だった。
こちらに気付くとニコニコと手を振っている。
その隣には真面目そうな眼鏡をしている女生徒がいた。
その会長と眼鏡の女生徒の左側と右側には同じ顔をした女生徒がいた。
双子だろうか右の女生徒は左目が髪に隠れていて、左の女生徒は右目が髪に隠れているようだ。
どちらも美人でかわいい俺の好みのタイプだ。
そして右の双子の女生徒の隣にはオレンジ色の髪色をした可愛らしい女生徒が座っている。
この女性とは俺を見るやいやに微笑んでいた。
可愛いなこの女子も。
左の双子の女生徒の隣には緋色の髪色をしたポニーテールの女生徒が座っている。
目が鋭そうで俺を睨んでいるのか目が怖い。
そして俺は中央の腰掛けるであろう席に座り生徒会長文愛の話を聞くことにした。
「みんな! こちらが例の……本常美理君よ」
「この人が……」
「「そうなのですか……」」
「この男の人がですか?」
「…………」
「ああみんな自己紹介してね……こちらの女生徒が……」
眼鏡の女生徒が立ち上がり自己紹介を始めた。
「私が生徒会副会長九重汐音と申します」
そう言ってすぐに座ってしまった。
「それだけなの汐音?」
「それだけで十分じゃないでしょうか?」
「そうね……じゃあ次は紗希」
「左生官の暗道紗希です」
「右生官の暗道魅希です」
「ちなみに私が姉です」
「魅希が妹なんです」
次に立ち上がり話し出したのはオレンジ色の髪の女生徒だった。
「書記の朝多井杏奈です。趣味は料理と小説です」
最後に緋色のポニーテールの女生徒が立ち上がった。
「会計の武藤依吹だ。よろしく」
そう言って俺に握手を求めてくる。
俺は素直に握手した。
しかしこの依吹とか言う女生徒手が小さいがかなり厚みのある手だと感じる。
これは武術を行っている手だな。
「突然だが私と一戦でいいから手合せして欲しい」
「いきなりなんだ?」
「いいから勝負して欲しいんだ」
「会長こんなこと言ってますけどいいんですか?」
「もちろんいいですよ」
「いや……でもなんで俺と戦いたいんだ?」
「目を見ればわかるおまえは強いと感じた」
「そうか……ならまあいいやでどこで戦う?」
「剣道部の部室に移動しよう。私は剣道部の部長もしているからな」
そうして剣道部の部室に移動した。
そこで俺は剣道の防具をつけていた。
勝負とは剣道とのことだった。
まあ俺は一応形だけならやったことがある。
ただその剣道ではなく剣術と呼ばれる実戦主体の剣道みたいなもんだ。
心条の爺さんに叩きこまれたがあれはもはや剣道ではない殺すための技だ。
そんな相手の急所を抉るような、そんな異常な殺し合いを直ぐに行える殺傷技を叩きこまれた。
まあそんなわけで俺はそんじゃそこらのやつには剣術では負けないと思うのだが……
俺は一つ質問をした。
「ところで能力を使うのは有りですか?」
「本来剣道の試合では能力の使用は厳禁だが……まあ私とやるのだから今回は使用を許可しよう」
「いいの依吹?」
生徒会長の文愛が依吹に尋ねる。
「ただし、ならば私も使わせてもらうぞ……なお能力の使用が許されている剣道の部活もあるぞ……能力剣道部という……なお私はそこも掛け持ちしている」
「それでは試合開始!!」
副会長の汐音が試合開始の合図を出す。
審判も彼女がやるようだ。
俺はスキルリストからある能力をスキルフォルダーにコピーする。
強化系能力、自己運動能力上昇カテゴリ能力、能力名「超速移動」を俺は行使する。
自身の運動能力、主に走行速度を上昇させる能力だ。
俺の能力、精巧な贋物では同じ系統でカテゴリが同じ能力を模倣できるようになった場合、二回目以降取得した場合一度目に入手した能力のレベルが強化される。
つまり最初に速度強化の能力を手に入れた場合、二回目以降それと同じまたはそれとほぼ同系統の能力を入手した場合能力が統合される。
これにより最初に入手した能力がレベル1でも二回、三回……と手に入れていけば最終的にその能力はもしかしたらレベル6にもなるかもしれないのだ。
自分で言うのもなんだが俺の能力ヤバすぎないか……まあでも相手から能力を精巧に複製するには条件がある。
一.相手の能力を一度見ないといけない。
二.相手に勝負を挑み、勝たないといけない。
三.相手に直接一度でもいいから体に触れて、能力の情報を解析しなければいけない。
とこの三つの条件を満たさないと相手の能力を入手できないのだ。
ただこの三つを飛ばして相手の能力を入手する方法もある。
例外として相手の許可を貰っても能力を複製できる。
つまり相手に俺の力を教えて、能力を複製させてもらっても良いかなと聞いてOKを貰えば能力を入手できるのだ。
だが、俺はこの方法を使ったのは数える程度だ。
相手が俺の友人だったり、小さな子供だったりと安全な相手ぐらいにしか使ってない。
そもそもこの方法で上手くいく場合があるか……他人に自分の能力を使わせるのだろうかかなり疑問だ。
俺ならまず許可しないと思う。
なお能力の情報を解析は……相手に触れたら自動で俺の能力が勝手にやってくれるので脳で演算とかしなくてもいい。
そもそも俺の能力は演算を必要としてなくて半分は理解力で、半分は想像が大事だこの相手の力を模倣して行使するから意外と俺の脳への負担はまあまあある。
たまに上手く相手の能力を思うように使えないときもあるが、練習したら大抵いける。
なお能力だけではなく相手の技術も複製できる。
例えば最強の武術の天才で何年も修行した達人の技術なんかも入手できる。
ただあまりも俺と技術力に差がある場合は全体の半分ぐらいしか入手できない。
今のところ心条の爺さんの武術の技術をこの前勝負に勝ってなんとか入手したが、あまりにも技術力と言うか俺の修行不足なのかしらないが取得率が20パーセントだった。
これは技術を複製する場合の数値だ。
この数値が100パーセントに近ければ相手の技術をほぼ完全に複製できたようなもんだ。
だが、やはり心条の爺さんはただものではなかった。
そもそも一発でも攻撃を当てたら勝ちという条件で勝負をしたからなのか、たぶんそれが原因だろう。
どうも対等な条件で勝負しないと駄目なようだ。
むしろそれでも20パーセントも取得できたからいい方なのかもしれないが。
試合に戻ると依吹先輩は俺の加速にものともせずに、俺の背後に回りこんだそのまま俺に胴を撃ちこむ。
俺はそれを回避して、高速の面うちをを行った。
結果同士討ちだった。
俺の面うちは避けられなかったが、その面うちと同時に俺の籠手に一打浴びせられた。
まさにほぼ同時だったので、試合の結果は引き分けになった。
しかし依吹先輩は喜んでいた。
「気に入ったぞ美理とやら……会長!! ということで決まりですね?」
「はい! 美理君は今日からうちの生徒会の雑用係りに任命します。それと校内の治安維持活動も任命します。以上!」
「はい?」
俺の今後が不安になる一日だった。




