42話 マジックバトル・オンライン 15
42-1「隊長との再会」
現在70階層に到着した俺達はある人物と対峙していた。
俺は知り合いではないのだが、どうやら森男君の知り合いらしい。
それは浅川琴朗つまりコトロー隊長さんだ。
そして何故か隣には暁美さんがいた。
どうやら今は一緒のパーティを組んでいるようだ。
「コトロー隊長お久しぶりです」
「ああ、久しいな」
「…………」
「あなたがコトローさんですか」
「君が今の森男の主ですか」
「ええまあそんなところですかね(ただのPTメンバーだけどね)」
俺はこのコトローさんのことを第一印象だけだとただのイケメン大学生にしか見えないかと思ったが、まず体つきが違う。
全身が筋肉質でがっしりとした体つきでとてもじゃないが俺とは比べ物にならない男性だ。
しかも目つきも普通じゃない燃えるような真っ赤な瞳をしている。
それなのにこいつは普通じゃないそんなオーラも感じさせる。
「それでですね今回はどういうわけですか?」
俺はやんわりと聞いてみた。
それとなく探るようにだが実際どうなのかわからないからな。
「今回は森男を俺達のパーティに入れたいと思ってな」
「そうです森男君は私達のパーティに必要なんです」と暁美さんが発言する。
なぜ暁美さんがコトローさんとPTを組んでいるのだろうか。
俺は見当もつかないがそれでもわからない。
俺は暁美さんに何があったのかは知らないから想像でしか考えられないけど。
それでも俺は森男君をコトローさんのパーティに戻そうとは考えたくなかった。
なぜだろう。
まだ出会って現実時間だと数時間も経ってないだろうに。
この子はこのままにしてはいけない。
そんな考えがあった。
だからこいつに渡してはいけないそんな考えがあった。
自分でも不思議だ。
まあいきなり人を信用してはいけないというのもあるだろうけど。
でも俺はこのコトローとかいうやつを信用できなかった。
何か直感みたいなものが働いたのかもしれない。
「断る」
俺は一言だけ告げた。
するとコトローはこう言った。
「なら君のパーティに俺達を入れてくれてもいい。それならいいだろ?」
コトローは不敵な笑みでそう告げた。
「そうですね。それならOKですよね竹男さん」
暁美さんもにっこりとした笑顔でそう告げる。
暁美さんはまだ信用できる。
でもなんでこんな得体のしれないような男の仲間なんかになったんだろう。
意外といいやつなのかなコトローはと俺は考えるがまだわからないのでそのへんの詮索は考えない。
俺はどうするとみんなにこっそり相談した。
ルカは別に大丈夫だと思いますけどと言う。
ヴァルゼンさんはコトローはそんなに悪いやつには見えないと言う。
なんだろう俺だけでしたコトローさんを信用してないのは。
ということで俺一人の疑念はあるもののコトローと暁美さんを仲間に入れることに急きょ決定したのである。
そのさいある一つの約束がされた。
森男君が戻りたくなったらいつでも俺達はパーティを抜けて森男を自分のパーティに入れると。
それって俺だけが不利じゃないですか。
しかしその約束にルカとヴァルゼンは賛成した。
どういうつもりなのうちの女の子達は。
ルカの心情はこのとき竹男を独り占めするために森男君は言っちゃいけないけど邪魔だと思っていた。
ヴァルゼンも同様である。ルカというライバルがいるがお子様が一人いるのも考え物だと、最悪ルカと同衾でも構わないとまで思っていた。
とにかく子供は保護者?のもとに返すのが一番だと思っていた。
(ふふふっ上手くいったぞ……これでこいつらをぶち殺すことができるぜ)
42-2「悲劇的な終幕」
俺達は現在76階層でボスを倒すために、攻略を進めていた。
コトローと暁美さんも一緒だ。
暁美さんもなかなか前と変わらず、俺と話したかったと言う。
「竹男さんは前と変わりませんねふふっ」
「暁美さんも前と変わりませんよはははっ」
ジトー……なんだろう目線が痛い。
見るとルカとヴァルゼンさんが俺達を見ている。
じっと見ている。じーーと見ている。
なんだよ二人ともそんなに俺のことが好きなのかよと思うがそんなことないよなルカはともかくヴァルゼンさんは冗談だと思っているし。
「二人だけずるい」
「二人だけずるいぞ」
「なんだよお前たち」
「あらあらっふふっ」
「おい暁美竹男は私の男になる男だからあんまり近づくなよ」
ヴァルゼンさんが暁美さんに注意する。
いやだから冗談じゃないのか?
「ヴァルゼンさん本当に俺のことが好きなんですか!?」
「もちろん本当に好きに決まっているだろ」
「わ私もですよ」とルカが同調する。
ルカやいつからそんなに積極的になったんだい。
俺はそんな素振りを見せなかったけどまあなんとなくわかっていたけどね。
俺は今どうしたらいいんだという感情があった。
こんなにいろんな女の子に言い寄られて、俺にはテルネアス(片思い)や鈴子(たぶん嫌われた)もいるのに。
しずくは……どうなんだろう。わからない好きなのか言われたらまだ微妙だ。
相手もまだ好きだとは思わないし。
ああもう死んだ人間のことをいくら言っても無駄か……鈴子はどうなったかわからないが。
俺はそれでも死んだしずくのことをまだ諦められなかった。
まだ何かある……そんな感覚が俺の中であった。
実際俺はこのゲームのことをよく知らない。
だから俺はまだ信じない。
しずくが死んだなんて思えない。
あいつはそんな玉じゃない。
そんなことを考えている間にみんなの話もひと段落してちょこちょこ魔物を倒していたらついにボス部屋の前までやってきた。
いくか。
そして扉を開けると誰もいなかった……
はっ? どういうことだ?
ボスがいない……こんなことあったか今まで?
俺は少し考えようと思った矢先に悲劇が起きた。
コトローが暁美さんを殴ったのだ。
いきなりのことだったので対応が遅れた。
コトローはその後ゼッケンと叫んで勢いよく暁美さんを殴り飛ばした。
「きゃあ!! 何をするのコトローさん!?」
「お前たちには死んでもらう!!」
「貴様そういうことか!! ……体が動かない!?」
何故か俺の体は動かなくなった。
みんなもどうようだ。
そして動けるのは暁美さんとコトローだけだった。
「どういうことなの!?」
「どうなってんだ!!」
「動けません」
「みなさん!!」
「ふふふっ邪魔な奴らは少しだけ止まっててもらおうか。次はヴァルゼン貴様だ」
「わたしだと!? やれるもんならやってみやがれ!!」
「よせヴァルゼンさん!! 奴の挑発に乗るな!!」
俺は心底冷静に言ったつもりだったがそうではなかったらしい。
ヴァルゼンさんは怒っていた。
それはもう心底心から。
俺も内心怒り爆発だった。
それはもう一発一発ごとに暁美さんがぼろぼろに命を削り取られていくのだ。
そんな光景を目にしていたら怒りも湧いてくる。
そしてついに暁美さんのHPゲージが削り取られゼロになる。
そしてそれと同時に俺らの体は動けるようになる。
「暁美さん!!」
そして暁美さんに駆け寄るが時すでに遅し暁美さんの体は光となり消えかかっていた。
俺は暁美さんを抱きかかえる。
「暁美さん俺あんたを助けられなかった……」
「いいのよ、悔いはないといったらあるけどまあ仕方ないもんね」
「暁美さんあんたなんで結構いいやつだったのによう」
ヴァルゼンさんが涙を流す。
気の強い彼女でも涙を流すことがあるようだ。
そして森男君も泣いている。
ルカは神妙な顔つきになっている。
そしてついに暁美さんが光の粒子となって消えた。
俺は何もできなかった。
くそっならば今すぐにあいつを倒して。
「はい、そ こ ま で……ここからは二回戦の開始だよ」
コトローの口調が変わる。
そしてついに姿も俺の知るようなまさかの姿に変わる。
終わりの魔術師だ。
俺とルカだけが知るこの世界の裏ボスだ。
俺はみんなにあいつと出会ったことを告げる。
俺達はあいつに勝てるのか。
「さあ次はお前の番だ……ヴァルゼン」




