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35話 マジックバトル・オンライン 8

35-1「33階層」


 目的は違うけど、俺達は全員で現実に帰還する使命を持っている。

 それでもここまで来たらもう勝てない奴はいない。

 そう確信していた。だが違うこの世界には勝とうが負けようがどうしようもないこともある。

 裏社会に潜む闇の世界があるように、それらを駆逐することは難しい。

 競争社会で全ての人間が自分の好きな職業に就けるわけではない。

 人間のもともとの頭の良さ、努力、運、その人の気転のきく行動力これらの要素が重なって、その人の適正が決まる。

 それでもみんな後悔する。もっと頑張ればこうなっていただろう……

 成功者は敗者を見下す。敗者は成功者を嫉む。その図式が超能力の世界でも当てはまる。

 実際生まれつき才能があった者ほど上に行く傾向がある。

 この世界でもそれは如実に物語る。

 もともとスタートラインに立てないものもいる。否能力者だ。

 彼らはまさに能力を否定された存在だ。

 無能力者とは違う。無能力者は無いに等しいだけで実はほんのちょっと可能性があるのだが、否能力者は否定されるのだ全て。

 あなたは超能力者としての適性がありませんと。

 だが俺も高校生の時に能力検定を受けたとき否能力者の烙印を押された。

 だが現在俺は超能力者となっている。

 これは努力の結果なのだろうか?

 しかし俺は自分でも努力した形跡は思いつかない。

 一時期頑張ってスプーンを曲げようと努力していたことがあったが、直ぐに飽きてやめてしまった。

 他にも大学生になりたての頃、俺は自分一人で山に登り、頂上を目指して過酷な運動を強いた。

 だが一か月ぐらいでやめた。

 超能力者は体を鍛えたほうがなりやすいと言う噂があったので、毎日ジョギングを帰り道を毎日電車を使わず走ったこともあったっけな……

 それでも俺は超能力者になれなかった。

 だが俺は成人して、ついに超能力者となった。

 俺は負けない世間の荒波にも、自分の弱さにもだから助けを呼ぶ彼女をこのまま放っておけないのである。

 赤く大地を染めた魔獣の血は、魔獣だけではなく彼女を地に染めた。

 帰ってこないかもしれないそれでも俺は俺達は進み続ける。

 果てしないロードを進み、後悔の無いように俺達は前に歩き続ける。


 さあ行こう。魔獣を倒そう。どうしたんだ……○○○?俺の手を離さないで、そんな……!?○○○の手が崩れていく……まるで砂のように…………消えるな!!俺達はこのまま前に進むんだろ!!やめろやめてくれ!!お前は今まだ死ぬ時ではないんだ○○○!!



――今朝起きると、俺は夢に魘された。いつもとは違う懐疑的な夢は俺の動悸を激しくさせた。

「くそっ……なんだっ今の夢は!?俺の手を離さなかったのは誰なんだ??」

 独り言を喋ってる間に、スワルが起きた。

「どうしたんですか……タケオさん?何か嫌な夢でも見たんですか?」

「嫌何でもない……ちょっと考え事をしてただけだ」

「そうですか……ならいいんですけど……今日は33階層の迷宮に行くんですよね?」

「そうだった体をある程度休めてアイテムを買い込んで迷宮に挑戦するんだった……もう場所は判明してるしな」

「ではいきましょう、みなさんもう待っているでしょうもう朝の8時です」

「そうだな行くか」

 そうして俺とスワルは下の宿屋の食堂に降りた。


「遅い……いつまで待たせるのよ」としずくがうんざりしたような声で言う。

「すまんちょっと考え事をな」と俺が言い訳をする。

「まあいいじゃないですかしずくさん、タケオだって考え事ぐらいしたいときはあるんだから」とルカが弁明する。俺はルカの優しさに正直甘えた。

そしてテルネアスはと言うと。もう朝飯を一人で勝手に食べていた。

「おかわり…………」

「はいよーご飯だねー」とNPCの食堂のおばちゃんが豪快にご飯を茶碗に盛る。

 そしてテルネアスにおかわりのご飯を渡す。

「テルちゃんはほっとくとして……タケオさんあなた何か悩みでもあるんじゃないかな?」

「何のことだ……悩み?俺が……まさか」

 俺は目が泳いでいたのかもしれん、若干隠し事を出来ないでいた。

「その顔は何か隠してる顔だね……まあいいや話したくなったら話してよね」

 鈴子ちゃんがそう言い放って食堂の席に着く。

「私も朝ごはんね」

「はいよ~」

「じゃあ俺達も食べましょうかタケオさん」

「そうね私たちも食べましょう」としずく。

「私もおなかペコペコだよ~でもダイエットもしないと……あっでもここゲームの世界だから太らないのか私っておバカさんだな」

「じゃあ食べようみんないただきますも忘れないように」

 そうして俺達は最後かもしれない朝食を食べるのである。

 毎日毎日最後になるかもしれないからな。


 そして俺達は33階層の迷宮に挑戦することになった。


――まるで破壊の鉄騎兵のようなその重量のある巨体は、誰も寄せ付けない頑丈な城壁のような凄味がある。

 その名は『メタル・オーディン』何者も彼の力には抵抗できないそんな気を感じさせる強さだ。

「しずく!ブラッド・ハリケーンを使えそしたら後ろに後退しろ」

「わかったわ!ブラッド・ハリケーン!!」

 血の嵐はメタル・オーディンを飲み込んだ。

 そのまま敵は動けない。このまま俺達は攻め続けることにした。

 まずルカはプログラミングであるプログラムを作成している。

 行動遅延プログラムだ。これで相手は暫くの間行動が遅延される。

 だが、このプログラムは書き上げるのに時間がかかるらしくかなりの時間を要するらしい。約100行ぐらい打ち込むので相当時間がかかる。

 いくらルカが打ち込むスピードが速いとはいえそれでも、5分はかかるだろう。

 なのでそれまで時間稼ぎというわけである。

 俺は新技精霊王の左手を発動。

 この技は精霊を呼び出してランダムで何かの効果を発する。

 最初はおまけで光の幻惑が出せるがこれは相手をひるませるだけで一回きりだ。

 そして真の能力は相手を拘束する、相手を火傷状態にする、相手を凍り状態にする、相手を風の牢獄に閉じ込める、相手を土で埋める、など色々な効果がある。

 でも拘束系が多いような……まあ属性違うし……


 そして今回発動したのは……あれ?これ初めてだな……効果は……「メタル・オーディンの気分をかなり下げた 攻撃力が下がった 防御力が下がった 回避力が下がった 混乱状態になった」

 よしっこれはかなり良い効果を引いたようだ。そして止めの一撃を喰らわす。

 右手のデビルジャッジメントクロウで止めた。

 ルカのプログラムも完成した。

 プログラム起動完了。メタル・オーディンは行動が一分遅延された。

 一分間メタル・オーディンは回避行動も防御行動もとれない。

 まさに無敵の反対最弱な状態になったのである。


 俺達は最後の攻撃を加えた。そしてメタル・オーディンは消滅した。



「やっと勝ったか……強い相手だった。まあ俺の力には敵わないよな……」

「そうですねタケオはかなり強いからね私が保証するよ」とルカが言う。

「まあ確かにこのPTでもメインアタッカーであることは確かね私は魔術師だから腕力はないのでもしMP切れたら無力だからねえ」としずくが言うが、俺は「そんなことないぞお前がいなかったら俺達は負けているときもあるぞ」と言う。


「何よっ……それ褒めてるの?まあちょっとうれしいけど」としずくはうれしそうに頬を赤く染めて答える。

「しずくはサポート役としても優秀……アタッカーとしても上出来……だから必要……」

 テルネアスが素直にしずくを褒める。テルネアスにしては大分お世辞も言えるようになったようだ。

「でも一人だけ微妙な人がいるんだよね……」と鈴子が言う。

「誰の事だ?」とスワル。

「あんただよ」「お前だよ」「正直微妙……」「興味ないけど確かに微妙ね」「そんなことないですよスワルさんもまあまあやりますよ」とルカだけ援護する。


「そうですよ……ルカさん以外みんな酷いです……俺だって頑張ってるのに」

「実際でも陽動役としては優秀だよな……まあそれだけだか」と俺は一応援護射撃を仕掛ける。

「まあ陽動は上手いけど戦闘力は皆無なんだけどね……ボス相手だと一ダメージしか与えないし」

「まあ仕方ないわよあくまでも椅子だからね」と鈴子は慰めているのか貶しているのかわからないことを言う。

「まあ元気出して…………たまに座りたくなる時みんなの椅子を出してくれるからそのとき便利……」

 なおただの木製の椅子を生成した場合かなりの時間出現させることが出来るようになったので休憩するときは便利である。ついでにテーブルも出せるようになったらいいのにと秘かに思っているのは内緒だ。


「さあそろそろ次の階層の世界に行くか……」

「そうだねタケオ」

「まあいいわあんたについていく」

「必ずラスボスを倒す……」

「行きますか……」

「私がいるんだから楽勝なんだけどね~」

 俺達は次の階層に進んだ。そうそのはずだった。


35-2「純情なる彼女は最後まで希望を捨てないでいた」


――扉を開くとそこはお城の中のような王の間にいるような感じだ。

 そして玉座の前に誰かがいた。


「ようこそ諸君……我が名は魔王ドリフトここの主だ。まだ優越感に浸りたい私は機嫌がよい、一分間待ってやるから私を倒してみろ」


「どういうことだ!?ボスは倒したはずだぞ、こんなこと初めてだ」

「そんなことより攻撃しましょう何かヤバそうですあいつ」とルカが早々にハッキングを開始した。

「そうね、こんなパターン初めてだけどゲームの世界だからなんでもありでしょ、行くわよ! ブラッド・リング・シャット!」


「そうだね、こいつは確かにヤバい……私も全力で相手をするね……呪いの踊り!」

「ならば俺はこれをくらわしてやる。椅子囲い牢獄!!」

「ひたすら攻めるのみ…………」と言いテルネアスは二丁拳銃の魔導銃を撃ちまくる。

 そして刻一刻も時間が過ぎる。だがおかしい相手の魔王ドリフトはダメージを受けている素振りを見せない表示上ではまあまあHPは減っているが。

 だがHPゲージは通常より多い4本もある。通常ボスは2本か3本なのだがこいつはどうも特別のようだ。

 今1本目が無くなった。残り時間が約30秒これでは時間内に倒せない。


 俺達は無駄だとわかっているが攻撃の手を休めない。

 そしてついに一分が過ぎた。

「そこまでのようだな……では行くぞこの攻撃に耐えてみろ!」

 魔王ドリフトは立ち上がった。そして『滅亡の雷撃波』繰り出した。

 回避行動は無駄に終わる。全員かなりのダメージを受けた。

 ヤバいこれはヤバい。いきなりのことなので頭が混乱しそうだ。

 だがここは焦らないといけないときだ。

「回復の歌!」

 鈴子が回復の歌を歌う全員のHPが徐々に回復していく。

 だが回復速度はかなり遅めのほうだこれは3分の間徐々にHPが回復する歌なのだが。

 速効性はない。なのでとにかくなんとかして防御するしかない。

「ブラッド・ウォール!」

 しずくが防御系の魔術を発動した。これで暫くは安全だ。

 そしてテルネアスがさらに仕掛ける。

「バンバンッ!バンバンッ!バババンッ!!消えなさい……冷徹な魔王よ天に昇りなさい」

 と若干厨二病も挟んでいるような気持ちで相手を挑発するテルネアス。

「椅子を椅子をこうして投げて投げて投げまくる!!」

 スワルは相変わらず椅子を投げている無駄だとわかっているのに。

 実際一ダメージしか与えられない。まあ後衛だからいいか。

『ハッキング失敗です……』「そんな!? なんで??今までボス級の敵にも効いてたのに」

 ルカが顔面蒼白で焦り始める。実際今までハッキングはチュートリアルプログラムでも効いた。独自プログラムだと効かなかったことがあるがそれでも50パーセントは効いたと思う。

 なのでこんなことは初めてなのでルカは焦る。俺も焦る。

「行くぞ魔王ドリフト! 精霊王の左手よ力を貸せ!!」

 俺は新技を何度も繰り出す。まず幻惑の光が発動。そして相手をひるませた隙に真の能力が発動する。

 今回は火傷を引いたようだ。炎精霊の力で魔王ドリフトを火傷状態にした。

「うむ……なかなかやるな……ならばこれでどうだ……!」

『鋭い雷撃槍』を繰り出してきた。速いその攻撃は俺目掛けて飛んできた。

 ブラッド・ウォールを貫通して俺の左胸を貫通しそうになる。


 気づいたときは遅かった。俺はそのままゲームオーバーになるかと思われた。

「ダメッ!!」ドンッ……そのまま俺に向かって飛んできた雷の槍はしずくが受けてしまった。


「ぉぃ……嘘だろ……しずく!!」

 しずくはそのまま倒れた。横腹が抉り取られて貫通している。 HPゲージがみるみる減っていく。このままではゲームオーバーになってしまう。

「おい誰か予備の回復薬持ってないのかよ??」

「無いよ……ボス戦一回だと思ってそんなに買い込んでないから」と鈴子が諦めたような口ぶりで話す。

「そんな……そんな嫌だ誰かなんとかしろよ!!」

 ………………………………

 みんな無言になった。俺だけがしずくを助けたくてたまらない。


 もう無理なのか?俺はこいつを助けられないのか?

「ごめんね、みんな私ここでリタイアみたい……でもタケオさん…………頑張って最後までクリアしてね、約束だから…………じゃあまたね」


 そして無情にもしずくは消滅した。


 誰も彼女を助けることは出来なかった。

 そして俺達は魔王ドリフトをなんとかして倒した。


 一人の犠牲を出して…………俺達は絶望が詰まった井戸のどん底に落ちたような気持ちになった。


 やったねあいつらの仲間が脱落したよ、そうだなこのままみんな全滅も面白そうだねえ……でもタケオには脱落して欲しくないなあ……そこは上手くやっとくから大丈夫だよ


 じゃあ観察を続けますかヒヒヒッ……


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