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34話 マジックバトル・オンライン 7

34-1「残酷な悪魔との戦いは意外とあっさり終わる」


「ここに来たことは誉めてやろう、だが私を相手にしたのが悪かったようだ」

 黒き門から現れた悪魔、その名はサタン。ここで出るのかよと思うほどまだ浅い階層の第25階層でラスボス級の風格を見せる存在が現れたことに俺達6人は一瞬驚愕するも、直ぐに落ち着きを取り戻し、戦闘態勢を取っていた。


 ここに来るまでの道中はそれほど強い敵はいなかったのだがボスがまさかこんな大物だとは思わなかった。

 実際あのサタンである超有名な。旧約聖書や新約聖書などに書かれているあのサタンだ。


 こんな低階層で出てきていいのだろうか?実はそんなに強くないのかと勘ぐってしまう。


 威圧するように俺達を睨むような目つきで品定めでもしているのだろうか、じっくりねっとり見てきているサタン。なんだこいつ何か悪魔なりの作戦でも練ってるのか?

 いやいや相手はゲームのキャラだ。いくら人工知能プログラムが進化したとはいえ、あくまでもプログラムに書かれた言語に従っているだけで人間のように自分で考えて答えを出すことはできない、いいなればプログラムコードが人間の脳の司令塔の代わりになっているようなものだ。プログラムに書いてない行動は考えることはできない。


 なのになんだこの悪魔は?まるで本当に現実に生きてるかのようなそんな風に感じられる。


 悪魔とは一般的に宗教や文化の面で見ると、神や人間の敵である存在であり、超自然的で力のある存在だと信じられてきたがまるで現実にいるかのごとく存在感を放ってる。


 特にサタンは確か元々は神の御使いであったが堕天して地獄の長となった悪魔だったような。


 もちろんこの無駄に凝った知識は全部Wik○pe○iaからに決まっているが今はそんなことどうでもいい。


 目の前の悪魔という存在が異質なものだと理解すると俺は何時にも増して緊張した。


 何か仕出かしてくるそんな予感があった。その予感は不幸にも当たることになる。


「それでは私から少しばかり試練として質問をします正直に答えて下さい嘘は駄目ですよ」


 なんだどんな質問が?


「あなた達がもし死に直面した時誰か一人を犠牲にすることで他の全員が助かるなら誰を犠牲にしますか?」





 俺達は言葉を失った。あまりにもそれは残酷な問いだった。


「みんな!耳を貸したら駄目だ!それより早くあいつを倒してしまおうよ!」

 鈴子ちゃんがいつもと違う顔つきで声もいつもと感じが違うように聞こえるトーンでみんなに話しかける。いうなれば凛々しく完璧な立派な大人のようなそんな感じに見えた。


「それもそうねスズよく言ったわ行くぞサタンとかいう悪魔め私が引導を渡してやるんだから!」

 しずくが叫ぶように発言する。そして魔術の杖を天に振りかざし呪文もといコマンドを言う。

「ブラッド・レーザー・キャノン!」


 しかしなぜか魔術は発動しない。


「あれ?可笑しいなもう一度ブラッド・レーザー・キャノン!……ブラッドレーザーキャノンブラッドレーザーキャノンキャノンキャノン……どういうこと!?」


 魔術が発動しないこれはまさか……


「あ、言い忘れましたが私の質問に答えるまでこの空間では魔術やSP技の発動スキルの発動が無効化されます通常攻撃は行えますが……おすすめしませんたぶん相手になりませんよ」


 まさかの特殊能力を持ったボスのようだ。舐めていたまさかこんなルールがまかり通るなんてそれともこの空間に対してルールが設けられているのだろうか?

 まあ考えても仕方ない今は解決策を思案するのが先決だ。


「物理は無理だとそんなことはないだろ俺ならいける」

「無謀だよタケオ相手はどんな魔術を使うかわからないんだよ」

「ならばこの質問に答えるのか!罠かもしれないんだぞ」

 そうだ十中八九この質問は罠だと俺は考えている。

 たぶん一人を選ぶと一番票が多い人物がゲームオーバーになるかそいつ意外がゲームオーバーになるかだと思う。

 とにかく相手の策略に乗ってはいけないのがセオリーだ。

「いやここはあえて相手の罠に乗るべき……」

 テルネアスが発言した。意外と無口なテルネアスがなんでまたそんな提案をするのか俺は理解に苦しんだが、テルネアスのことだ考えがあってのものだろう。

「それでテルネアスお嬢様どういうお考えであるのでしょうか?」

 スワルが小声で発言した。少し心配したような顔つきだ。


 テルネアスがいつもの猫が眠そうな目つきからヒョウが獲物を前にして余裕そうな顔でこう答えた。

「私が犠牲になる……だから選んで……」

 どういうことだ……テルネアスは自身に満ちた顔で私を信じてという表情で言っている。


 しかしそれだとテルネアスの身に何かが……だからここは俺が。

「俺が犠牲になる、だからテルネアスお前は見ていてくれ」

「イヤ……私が犠牲になるから…………タケオはあいつを倒して……」

「ちょっとなら私が犠牲になるから」

「いやいやならばここは俺が……お嬢様が犠牲になるなんていけない」

「じゃあ私も」

 全員が自分が犠牲になると言った。

「わかったつまりこうすればいいんだなみんな」

「「「「「うん」」」」」


「話は纏まりましたか?」

 悪魔サタンが話しかけてきた。

 このまま誰しもがこいつには早く消えて欲しいと思っていただろう。

 俺達は早急に答えた。

「俺が犠牲になる」

「私が犠牲になる」

「私が犠牲になるんだから!」

「私が犠牲になる……」

「俺が犠牲になります」

「私も犠牲になっちゃいますか~☆」

 その瞬間空間が割れた。


「合格です、全員私に挑戦する権利を得ました、では戦いましょうか」


 サタンが勝負を仕掛けてきた。

 全員で一斉にかかる。まず俺は右手を悪魔化させて一気に切り裂く。

 ルカはパソ丸を起動してハッキングを仕掛ける。

 しずくは血のレーザーキャノンを放つ。

 テルネアスは魔導銃で攻撃一気に風穴を開ける。

 スワルは椅子をブン投げる。

 鈴子はとにかく歌いながら踊る。全員の攻撃力が上がった。

 

 サタンは悪魔魔術「理解しがたい卑劣な破銃砲」を使用した。

 その攻撃はまさに卑劣だった。全員を後ろから銃のような物が出現した。そして俺達を打ち抜いてきた。

 しかし攻撃は何故か当たらなかったいや何かに遮られたように感じた。

 

 そして俺達の攻撃は全て命中した。そのまま次の攻撃を一気に仕掛ける。

 俺はここで何をするべきなのか、ここでこのまま敵をどう倒せばいいのか?


 デビルジャッジメントクロウで止めをさす。それでいいんだ。

 消えてしまえ悪魔!!

 俺は右手に精一杯の力を込めてサタンの左胸を貫いた。

「なんですとその技はまさか……くそおおおおおおおおお!!!」

 悪魔サタンはあっさりやられた。

 そして俺達は上の階層に行くことになる。


「意外とたいしたことなかったねタケオ」

 ルカが話しかけてきた。その時の顔はとてもうれしそうに見えた。

「俺もそう思う相手はかなり強いと思ったら俺の攻撃でやられるなんて」

「たぶんデビルジャッジメントクロウだからなんじゃないの?」

 しずくが食いついてきた。

「そうだな何か裏効果があるのかな」

 称号という欄があることを後で知った。

 そこに悪魔サタン撃破と書いていた。

 そしてデビルジャッジメントクロウにこういう注釈が加えられていることに気付いた。

 

 特性:悪魔に対して通常より威力が激増する。

 

 なるほどそういうことか。まあ普通に考えたらそういうことか。

 

 俺達は先を急いだ。このまま上手くいけばいいんだが。


34-2「消えそうな命を俺たちはこのままにしておけなかった」


 28階層には小さな村があった。

 そこにはNPCがいただけで特に普通だった。

 

 俺達は先を急ぐがここでは特にやることが無いので俺達は宿屋でゆっくりしてた。

「タケオさん俺このままでいいのかな」

「どうしたんだスワルいきなり」

「いえ俺の能力なんですけど」

「それは現実のか?それともゲームのか?」

「両方ですね」

「お前の現実の能力は知らんがゲームの能力は確かに酷いな」


 スワルのゲームの職業は椅子使い椅子を武器として操る。

 しかし常に持っている必要は無く魔力で椅子を生成する。

 その魔力で生成した椅子はもちろんただの椅子だ。


 椅子以外の何物でもない。とにかく普通の椅子それを相手に殴りつけるか投げつけるかの二択。

 こんなとても一般的なユニーク職業の中まさに最弱最弱と言わんばかりの能力とはちょっと同情するな……


「というわけでタケオさん特訓に付き合って下さい!」

「え~めんどくさい」

「そこをなんとか!現実に戻ったら俺の秘蔵のコレクションを貸してあげますから」

「おっマジか何冊ぐらい?」

「十冊」

「乗った!」


 と言うわけで、俺はスワルの特訓に付き合うことにした。


――「喰らえスワルスペシャル!」

「なんだそのへっぴり腰そんなんじゃ当たらないぞ」


「ならばこれでどうだ!回転椅子殴り突進!」

「大振りだな駄目だな」


「ならば俺の最終奥義を喰らえ!魔地最強椅子特攻!」

「直線的だなひょいっと避ける」


 結局こいつの攻撃はどれも俺相手には通用しなかった。

 ゲームのキャラには避けるという概念があまりなく回避行動をあまりとらないので楽勝に当たるんだがこれじゃあ回避行動取るようにプログラムされていたら全部当たらないな。


「どうでしたか……これじゃあ話にならないですか……」

「とりあえずわかったことは……」

 まずスワルは椅子を一度に二個までしか生成出来ない点。

 そして椅子の大きさをあまり大きくできない点。

 これが椅子使いの限界なのだろうか……


 いやまだだこいつの職業はユニーク職だ何か秘密があるに違いない。


 そして小三時間いろいろ試した結果、新たな事実が判明した。

 椅子の質量を大きさそのままである程度調節できる。

 椅子の素材を鉄製とか木製とか微妙に変えれる。

 椅子に回転車をつけれる。

 椅子の大きさを小さくしたら一度に出せる量がかなり増える。


「おい、なんで気づかなかったんだ今まで……」

「すいませんまさかこんなことできるとはびっくりです」

「とにかく今の要素入れてなんか新技考えろスワル!」

「え、いきなりそんなこと言われても……わかりました考えます」

 そうしてスワルは一人黙り込んで椅子に座り考える人のようなポーズで考えこんでしまった。



――そしてスワルが動いた。


「よし!これでどうですか!!」

 スワルはまず椅子らしき見える風船のような椅子を作り出した。

 それも大量に。なんだこれ?ふわふわ浮いてる?まさか質量だけではなく内部の素材まで変更したのか。

 そして椅子が突然破裂した。

 パンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパン!!

 音からして20個の椅子が破裂したようだ。


「どうです?タケオさんこんなこと出来るようになりました」

「凄いなどうやったんだ?」

「知りたいですか?」

 にやりとした少し同性の俺でも引いてしまいそうな少し気持ち悪い笑顔でスワルは話し始めた。

「まず椅子の素材をゴム製に変更して中に揮発性の高い気体を充満させて、それが徐々に増えていくイメージをしました」

「なるほど単純だが、凄いなそんなイメージでいけるのか」

 これは魔物に対して陽動とか囮に使えるな。

「いいぞスワル、このまま続けるぞ」

「はい師匠!!」

「師匠??俺が?」

「いいでしょう師匠と呼ばして下さいタケオさん」

「まあいいだろうじゃあビシバシいくぞ!」

「はい!!」

 そして俺達の特訓は夕方まで続いた。


 そしてそろそろ日も暮れたので帰ろうかなと思い、歩き始めていたら。

 突然帰り道の途中のところにある森のほうで悲鳴が聞こえた。


なんだろうと思い近づくとプレイヤーが襲われているモンスターに。

 俺達はすぐに助けようとしたが、遅かった。

 モンスターを倒したときに名も知らぬプレイヤーに近づくとHPゲージが赤で点滅しててついになくなった。

 そしてその女性は「ありがとう……」とだけ言い残し消滅した。

 俺達の腕から跡形もなく。


俺達は無力だった。知らない人だったがついにゲームオーバー者をこの目で見た。

 もちろん現実に帰還したということはないだろう。

あのゲームマスターのことだ。ゲームを改造してあらかじめ脳破壊プログラムとかでも積んでいるのだろう。

 そうでもしないとみんな自殺でもしてゲームを下りるだろうから。


俺達は無表情で宿屋に帰宅した。

「あれ?どうしたのタケオとスワルさん二人でどこ行ってたの?」

 宿屋に帰宅するとしずくが宿屋の下のほうにある休憩所で一人座り、お茶を飲んでいた。

 俺達に話しかけるとにっこりいつものしずくとは思えない表情だ、たぶん機嫌がいいのだろう。

「いや別に、スワルの特訓に付き合ってただけだ」

「そうですよただの特訓です」

「ふーん、特訓ね意味あるの?それ?」

「一応あったぞスワルが新技を覚えた」

「何それちょっとだけ気になるな~なんて嘘嘘全然興味ないからスワルには」

「酷いですよしずくさん」

 スワルは心底落ち込んでいた。

「あっタケオ……お帰り…………」

 テルネアスがケーキを運んできてテーブルに座り、徐に一口でパクりと食べる。

 一口かよ!味わえちゃんと味わえ!

「テルネアスただいまあれ鈴子ちゃんは?」

「今どこかに出かけている……」

「そうか残念せっかくみんなで今後のことを話し合いたかったのに」

「まあいいじゃないまた今度で」

 しずくが俺を慰めてきただと、こんなやさしいしずくは初めてだ偽物じゃねえのか?

「なんか失礼なこと考えなかった??」

「なんのことでしょう……」

「その顔が言ってんのよ!バカ……」

 そうしてしずくが自室に戻る。何が気に障ったのだろう。

 俺達は前に一歩一歩進んでいる少しずつ、このゲームを最後前クリアしないといけないんだ、じゃないと現実にもどれないからな。

 このままゲームの中で一生を過ごすのは流石にやだなあ。

 悲しい悲劇が起ころうとも、タケオ達は前に進む。

 無限の選択肢の中変わりゆく可能性の未来を選んで進むことになるだろう。


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