33話 マジックバトル・オンライン 6
33-1「87階層」
唸る轟音、弾け飛ぶ火球。鮮血が飛び交い深手を負う俺達。
まるでここが地獄なんじゃないかと思えるぐらいいや、地獄のほうがましか……今俺達二人は火炎獄竜エルラドザの間にいる。
「ルカ……そっちは危険だ逃げろ!」
「大丈夫だよ!死にはしないから!」
ルカはそう言ってパソ丸エクストラモデルセカンドエディションを起動した。
体内には色々な装備が備わっているので攻撃には不自由しないだろう。
しかしパソ丸エクストラモデルセカンドエディションには致命的な弱点がある。
使用には大量のSPが必要であまり多くの時間起動しているとごっそりSPを奪われるのだ。
現在ルカのSPは350ほどなので起動に50必要で1 秒起動するごとに2のSPが必要なので150秒ほどしかもたないのである。
ただこいつの力は絶大だ。追加でMPを必要とする代わりに強烈で破壊的な武器を使用することが出来る。
「サテライトレーザーキャノン!」
放たれたそれは粒子を収縮して熱の塊を放ついわゆるレーザー砲だ。
相手は普通なら体に穴が開き臓器を抉るだろう。
ただ相手は火炎獄竜エルラドザだ。かなりの堅い皮膚を持ち灼熱の業火を放ってくる強敵だ。ただの一撃も通さないという実力を備えているはずだ。
なので一気に勝負を仕掛けたようだルカは。そのまま放たれたサテライトレーザーキャノンは火炎獄竜エルラドザの胸の辺りを打ち抜いた。
しかし胸の辺りは少し焦げ付いただけで貫通してはいなかった。
「そんな!?効いてない!?」
「いえ、少しは効いたようですよ」
その通りだ。火炎獄竜エルラドザは少し痛みで興奮している。
そのまま暴れまわってこちらに飛んできた。
「俺が行く!唸れ!右手に宿りし悪魔よ!デビルジャッジメントクロウ!」
俺の右手にある悪魔を解放した。いわゆる現実世界の魔手化と同等の効果を持つ技だ。
SPを30消費して持続時間は30秒ほどしかないがこれが凄い効果だ。
まず自身の攻撃力を大幅に上昇させる。さらに攻撃に致命傷効果を付属させる。
攻撃を与えると相手を致命傷状態にさせることがある。致命傷だと次の攻撃で大ダメージを与えることができる。そのダメージは通常の三倍だ。
さらにバッド状態として相手をひるませることもある。ひるんだら相手は五秒ほど攻撃できなくなる。
「行くぞ!喰らえこの火炎獄竜め!」
俺は勢いよく右手を振った。すると火炎獄竜の足の付け根辺りを引き裂いた。
そのまま勢いに任せてさらに二撃目も悪魔制裁爪で足の付け根を引きはがす。
「グギャオオオオオオゥゥゥゥゥゥ!!」
悲痛の叫びをあげる火炎獄竜エルラドザ。そのまま地に伏せるかと思われたが踏ん張ったようだ。
そして反撃の狼煙を上げたのは竜のほうだった。
まず火炎獄砲撃を放つ竜。その攻撃は火炎放射機を何倍にも威力を増した重加速レーザー砲のようなものだった。
俺達はその攻撃をなんなく躱す。
そして火炎獄竜の前に出て次の技を出す。
精霊王の左爪を発動させた。するとどうだ。エルラドザは硬直して動けないでいる。
これは光で相手を惑わして動きを止める乱反射の術だ。
精霊王の左爪発動時におまけで発動する技だ。
このスキに精霊王の左爪の真の力をお披露目しよう。
「行け!精霊たちよ!奴を捕縛せよ!」
左の爪から精霊が召喚された。
そして火炎獄竜エルラドザは精霊たちによって捕縛された。
もう動けないようだ。しかしこの技には欠点がある。まず止めておけるのは15秒ぐらいまで。もう一つ質量が少ない敵には効かない。
MPはそれほど使わないのが最大の利点でもある。
まあもういいそろそろ止めといきますか。
謎の裏進化!!
奥の手その一を使う。消費SPは現在では50だ。十秒しかないから急ぐぞ。
そうこの技は十秒しかもたないのだ。それでも超絶的に強力な技だ。
なのでこういうボス戦では多用していく。
どういう効果なのかというと少し簡単に説明すると、十秒の間無敵になって攻撃力と素早さが限界突破して回避力が極限に上がる感じです。
ようするにチートだチートオブチートモードになれる技って感じだ。
いうなれば発動したらもう相手は最後ですただしこの状態が解除された後が問題。
解除されたらHPとMPが極端に減る。残り10とかになるそれがやばい。
つまり後には引けないのだこの技を使ったら必ず仕留めないといけないのだ。
さあ終わりにしよう。
「爆砕砲撃拳!」
右腕を振り上げて一気に正拳突きするだけで相手の体に穴が開いた。
「ゴギャアアアアアアアア!!!」
終わった俺達の長い戦いが……だがまだ終わらないこれからも残りの敵を倒さないといけない。唯一残ったルカと共に。
33-2「日常と非日常の狭間の出来事」
現在俺達は十五階層のストロという町に来ている。
そこで息抜きにピクニックでもしないかとルカに誘われて二人きりでちょっと出かけることになった。ちょうど近くには山があるし最高の天気だ。
他のみんなも誘った方がいいかなと思ったがルカが二人きりがいいのと言うからまあいいかなと思った。
あれ?これもしかしなくてもデートじゃないの?という疑問が出たがまあゲームの中だから関係ないかと自分を騙してしまった俺がいる。
そしてピクニックには準備が必要ということで色々揃えた。
水筒に弁当はルカが作ってくると言うので俺は持たなかった。
後は特にいつも通りの魔法力回復薬と体力回復薬を念のために買っておいた。
そしてピクニックが始まった。
――なんでいつもいつも邪魔が入るんですかね。
オメガグリズリーとかいう強力な魔物1体が俺達の前に現れた。
体長2メートルほどで体はデカく肌は闇のように透き通った質感を持った薄紅色だった。
とても狂暴そうで気が荒々しい敵のようだ。
「グルルルル……」
「ルカお前は下がってろ俺がこんなやつ直ぐに片づける」
「いやサポートはするよ!タケオには死なれたら困るから!」
「そうしてもらうとうれしい行くぞ!熊野郎!!」
まず、第一に新技爪強化技「デモンストロング」を使用。
この技は俺の爪を闇の属性で強化する技だ。
攻撃が闇属性になるだけでなく稀に相手にクリティカルダメージを与えることがある。
十三階層で覚えた技だ今まで隠してきたがついに使う時が来たようだ。
俺は一気に畳み掛けて勝負を決める。
まず右手に力を集中させ全身に気合を込める、そして悪魔の心を身に纏い右手を禍禍しい悪魔の右手に変容させていく、そしてそのまま懺悔の心も無く相手を無慈悲なままに悪魔の爪で切り裂く。
そのまま終了した。オメガグリズリーは首を刎ねられ絶命した。
もうこんなショッキングな出来事にも慣れた、だが女の子であるルカもかなり慣れているのは最近の女の子は強いんだなという普通の感想が出てくるだけだった。
そしてついに山頂についた。
俺達は直ぐに着いたらお腹が空いたのでここで弁当を食べることにした。
「おお……これがルカの手作りの弁当か……」
「おいしそうでしょ!」
まず目に付くのが大きいおにぎり握りこぶしほどある物が6つこれが一段目だ。
そして二段目が副菜のコーナーで色々あった。タコさんウインナー、玉子焼きなどの定番メニューから芋の煮っ転がし、酢豚、ゴーヤチャンプルー、ナポリタン、ハンバーグなどの様々な料理もある。
俺はまず玉子焼きからいく。
ぱくりっ……うまい!次は酢豚……これもうまいそしてあっという間に全部食べそうになった自分を止め、ルカも一緒に食べないか?と聞き、うんそうするねと返事があったので一緒に食べる。
一緒に食べたらお腹が膨れたゲームの世界なのにおかしいな。
「なんかこういうことも楽しいなルカ……今まで戦いばかりだったからなんか新鮮だ」
「そう思うでしょ、なんてね!私のこの出来の良い頭の良さを甘く見てもらっちゃ困るかな~タケオはほんとかわいいよね!」
「俺がかわいい?なんだそれ褒めてるのかそれとも馬鹿にしてるのかな」
「違うよ~タケオは前から私の中でかわいさトップ10に入るかわいさだよちなみに10位で1位はマリモね」
「マリモが1位なのかよ!意外すぎるわつうか俺10位かよそれって高くないような気が」
「まあいいじゃないそんなことより眠くなったら私の膝枕で寝てもいいんだよ」
「直球すぎだろ!まあじゃあ遠慮なく」
俺はちょっとからかうつもりでルカの膝に頭をつけた。
目は半開きでばれないようにしたがどうだろうばれてるかな。
ちょっと顔を見たが俺の寝顔を覗いてるのかニヤニヤしている。
こいつにやけた顔もかわいいなと思いつつ俺は寝たふりを続ける。
10分ぐらいしたら飽きたのか自然の美しい風景を見ている。
俺はもういいかなと思いつつ起きる。
「もういいですかな?お姫様?」
「お姫様!?私が?」
「お前意外誰がいるんだよ」
「なんか照れるなアハハッ……」
「お前はどこかのお姫様みたいに綺麗でかわいいし頭も良いし欠点なんて無いんだな」
「私にもあるよ……欠点」
「なんだよそれ」
「秘密」
「気になるな~」
「いいでしょ乙女には一つや二つ秘密があってもね」
俺達は二人の時間を大切にしたかった。
でもそんな時間は残されていなかった。
この世界の悪意が牙を剥き出したのだ。
先ほどまで青かった空が急に曇り空になり暗くなる、そして無害な動物たちが現れ山を急ぐように駆け出していく。
「なんだなんんだ急に何が起きるんだ!?」
「怖い……怖い……怖いよ!!」
「どうしたんだルカ急に絶叫をあげて」
ルカがいきなり怖いと言い始めた。顔も蒼白でこの世の終わりのような顔をしている。
「奴が来る……あいつが私たちの邪魔をする……」
「奴?なんのことだ?」
そして雲が爆散したかと思いきや、天から漆黒の衣装を纏った何者かが現れた。
そいつの顔はフードで隠されてる。
「見てて、リア充爆発しろよと思うような光景だったよ、爆発させちゃおうかな」
「何者だ!?」
「ぼく?そうだな終わりの魔術師とでも名乗ろうか」
「敵なのかパラメーターは出てない?モンスターではないのか、するとNPCなのか?」
「ぼくはモンスターでもNPCでもないよゆうなればラスボスを超えたラスボス裏ボスかな?」
「そんな!?いやありえないこんな低階層で裏ボスが現れるなんて」
「もちろん通常ならありえないよぼくの意志で君たちに会いに来ただけだから」
「意志?まさかお前ゲームマスターなのか!?」
「そうとも言えるしそうとも言えないかもしれない……君たち生きてる人間と違ってちょっと特殊な存在なんであっ言っちゃった余計なこと言いやがって」
「別にいいだろう別にこのくらいこいつらにはどうせ上まで来ることなんて不可能に近いから……まあそれならいいか」
ぶつぶつ独り言言ってる黒い魔術師は確かに雲の上の存在に思えた。
裏ボスと言うのも納得だオーラが違う。
このまま俺達に襲い掛かるのかと思われたがどうやら違うようだ。
「じゃあそろそろぼくは帰るとしますか、君たちはこれから永遠の悪夢を見続けることになると思うと笑いが止まらないよ、死よりも苦痛な日々を送らしてあげたいよ、ふふっ楽しんで足掻いてね」
そう言って終わりの魔術師はすうと跡形もなく消えた。
辺りの景色も元に戻った。
なんだったんだ今のは、ルカはなんか未だに下を向いて放心状態になってる。
よっぽど怖かったのだろう俺も怖かった。
もう早めに山を下りよう、このことはみんなには内緒にしておこう、どうせこんなこと言っても信じて貰えないだろうし。
俺達は下山して、ストロに戻った。
今日起きた出来事はあまりに衝撃的な出来事だったので記憶に鮮明に残るだろう。
俺達は16階層に向けて旅立った。




