A4話 竹谷竹男の高校生活と虹咲真歌との出会い4
A4-1「襲撃者の意外な正体」
俺達は公園の端の方に向かって走り出した。ジグザグにといっても今はそんなのどうでもいい。半分適当に敵から狙いを定められないようにするためだ。
俺は真歌のことを左手に掴んで離さなかったが、真歌の足が遅いのでついにはお姫様だっこした。こんなの体重40キロも無いだろう真歌のちっさい体だ余裕だ普通に。
俺はとにかくに我武者羅に走った。
すると何故か襲撃者の攻撃は来ない。
しかしそう思っていたのもつかの間俺がもう大丈夫だろうと真歌を下して、公園からでようとしたらついに襲撃者が姿を現した。
「待てっ!!!」
軽い少年の声というのが第一印象だ。
だがかなりの怒声だ。
そしてその意外な正体が判明することになる。
「渚君!?」
真歌が叫んだ。その執事服を身に纏い。手に謎の槍のような剣のような弓のような謎の投げ棒槍?をもっている謎の少年執事がいた。
「お前は何者だ!?」
「それはこっちのセリフだ!! 何者だ貴様!! 真歌お嬢様から離れろ下郎が!!!」
「えええっ!? どういうことだ真歌!? つうか今渚とかこいつのこと呼んだけど知り合いなのか?」
「私の専属執事なの……」
「な……んだ……と!? つまりあれかむしろ俺が悪いやつなのかもしかして!?」
「そうだ……お前はうちの真歌お嬢様を誘拐した誘拐犯だ……神妙にお縄につけ!!」
「待ってくれ誤解だ!! 俺は真歌を誘拐なんてしてねえよ!!」
俺は弁解する。必死に。そして渚君とか言うやつもわかってくれたのか落ち着いて俺達の話を聞いてくれた。
「つまり……お前は真歌お嬢様と仲良くなって、一緒にゲームする仲だというのか。ふむっ……まあ嘘はついてないように感じる。だがこんな夜中に真歌お嬢様を連れまわすのは感心できないな」
「いやそれはだな……真歌が勝手にだな……」
「勝手に門限を破ったのが真歌お嬢様だというのか?」
「うん……そうなの渚君、ごめんね……」
「……………………」
渚は沈黙した。そして直ぐに切り替えてこんなことになったのは真歌お嬢様のせいなんですねとキレた。
「とにかく!! もう駄目ですよこんな下郎なんかとこんなどこの馬の骨かと思われるやつと遊んではいけません。真歌お嬢様は伸び伸びと自由に歌の特訓をすればいいのです。僕が相手になりましょう」
「いいけど今は竹男に歌を聴かせたい……なので、今日も帰りたくない。竹男の家に泊る」
「どうしてそんなこと言うんですか真歌様。お母様も心配してますよ」
「嘘だ!!!!!!!!!!」
いきなり怒声をあげた真歌。母親のことになにかあるのか?
「ママは私のことなんて何とも思ってない!! 私の歌の才能しか見てない。だからママは嫌い」
顔から大粒の涙を流して、顔を赤らめている真歌がいる。もちろんそれはヒステリックな反撃的な親に対する卑屈な感情から来たものだった。
そして渚が考えている。どうすれば真歌を連れ戻せるか。そう考えているが、それでもいい考えが浮かばなかったのかとんでないことを口にする。
「わかりました。そんなに言うなら今日はあなたの家竹男さんの家に泊まってくれて構いません」
「えっいいの!?」
「いいのかよ」
「ただし……僕も一緒に泊めてくれるのなら……執事ですので」
かくして風魔渚が一緒に俺の学生寮に転がり込むことに。
よかった。室長とかが厳しい人じゃなくて。確かかなりの年配のご老人だと聞いているからな。そして今日はもう遅いので俺の学生寮で雑魚寝することに。
ただし俺は玄関の廊下で寝かされることに。
ベッドとスペアのふとんは真歌と渚に盗られた。
俺がここの部屋借りているのにそれはないよ。
そして朝が来た。
A4-2「朝ごはんの時間だ」
朝。起床するがなかなかに寝つきが良くなかったというか場所が堅い廊下のフローリングだったからか、一応下にはサブのマットを引いたがそれでも堅いことは否めない。
そしてそれを知ってから知らずか、真歌はすやすやとぐっすり未だに寝ていた。
現時刻朝の7時5分を回ったところだが、そういえばなんだがいい匂いがする。
見ると執事服で台所に立つ渚がいた。
もう既に朝ごはんの準備に取り掛かっているところだった。
俺はふいに話しかける。
「渚、俺の家なんだから料理も俺がするのに……勝手なことをしなくてもいいんだぞ」
と俺は言うが意外にもやんわりとした返事が返ってきた。
「私は真歌お嬢様の専属執事からな、だから真歌お嬢様のお食事を作るのも私の仕事だから。なので今作ろうとしているのだ。まあ一宿一飯の恩義もあるからね。だから君の分も仕方ないから作ってやろうと思うのだよ」
執事の渚はとても調子の良さそうに話していた。それでも俺はそもそも執事と言う職業がどんなものか知らないので俺はやはり渚のことを知らないでいた。
俺は話題を変えた。
「じゃあ渚は真歌にどのくらいの間仕えているんだ?」
「今年で三年目だ」
「お前いくつなんだ?」
「14歳だよ……五月で15歳になる」
「誕生日何時?」
「五月十五日だけど……なんかくれるのか?」
「毎日俺の家で俺の分も料理作ってくれるならなんかあげてもいいけどなんて」
「おいおいそれはつまり今後も僕が君の家に住まないといけないのか? 流石に毎日はマネーが発生するぞ。私は虹咲家に仕える執事だからな一応ご主人や真歌お嬢様の母上の身の回りの世話は私の父上が全てやっているが。私はまだ見習いだからそれは全てできるわけではないぞ」
「別に全部しろとは言ってないぞ。料理ぐらい俺でも出来るしな」
と言って俺は徐に冷蔵庫から鶏卵を一つ取出し、小さいフライパンを台所の棚の奥から取り出してフライパンにサラダ油を軽くひいて卵を焼く。
いわゆる普通の目玉焼きだ。
「ほぉ~君でも料理ぐらいするのか」
「失礼な奴だな、そりゃするわ。このくらい朝飯前だよ朝飯前だけに」
俺は少しだけ卵に火を通し、軽く焼いたらこのフライパンに合う蓋を取り出す。
そして水を僅かにフライパンの卵に一振りして蓋をする。
これでタイマーで約2分30秒これが俺の最強の目玉焼き(はんじゅくじゅく)の作り方だ。
火加減は弱火中の弱火。針金でガスのスイッチを右にむちゃくちゃ寄せると超弱火になるこのガスコンロは。
実は俺はだからこの学生寮のこの古い設備があるところを選んだのだ。
いやもちろんそれだけが理由ではないが。
そんなことよりそろそろ目玉焼きが焼ける。
俺は勢いよくお好み焼きとかで使う、銀色のヘラを使い目玉焼きをお皿に運ぶ。
「どうだこんなもんでいいだろ」
「たかが目玉焼きぐらいで偉そうに……」
「じゃあお前は何か玉子料理作ってみろよ」
すると渚は得意そうな顔つきになり冷蔵庫から鶏卵を一つともう一つ取出しでボールに移し、かき混ぜだした。
「ならば僕は得意のスクランブルエッグを作るよ」
そう言い、塩と砂糖を少々入れてなんとマヨネーズを入れる渚。
「そんな物入れるのか?」
「知らないのか? マヨネーズを入れると冷めても柔らかく食べられるんだ。だから普通は入れる基本だぞ」
そして次にフライパンを中火で熱し、温まったらすぐに濡れた布巾に置いた。
そしてフライパンをコンロに戻して、サラダ油とバターは無いのでマーガリンを一かけらフライパンに熱する。
弱火でマーガリンを溶かして、卵液をフライパンに入れて、渚はプラスチック製のヘラをどこからか探したのかそれを使いゆっくり大胆に卵を混ぜる。
その混ぜ方は執事三年目とは思えないほど丁重で完璧なものだった。
そうまさにまるで一流のパン職人がパンをこねるかのごとく力強くだが痛めないようにやさしく揉むようにそれでいてそば職人のようにこね方が丁寧だった。
それは盤上の世界黒い鉄の領域でも同じこと。
その絵図らはまさに執事。執事たる者玉子料理ぐらいできないと駄目であると言わんばかり。
なお後から聞いたことだが玉子焼きはまだ焦がさずに作れないとか、5回に1回は少し焦がすとか。
親父さんになんども叱られるらしいそのことで。
そしてそんなことより出来たスクランブルエッグが。
「どうだ君より上手だろ当たり前だが」
「そうだな、これでお前が女の子だったら俺が嫁に貰ったのにな」
「……なんだそれは、どういう意味だ。といっても私は真歌お嬢様に一生仕えるつもりだから、そんな誘惑などこちらからお断りだけどな」
「冗談なのに、どうした渚。まあいいけど」
「いやなに、少しだけ君の言うことを真に受けただけだ」
その時の渚の顔はなぜかポーカーフェイスを貫いているはずの渚の顔からは想像できないような照れ隠しが感じられた。もちろん表情は無表情で殆ど愛想笑いも無い。
何か隠し事でもあるかのように感じられた。
まあそんなことはいいとしてその後冷凍の食パンをオーブントースターで焼いて、買い置きのヨーグルトを出して、林檎の切って皿に盛りつけておけばサラダは無いが最高の朝ごはんの完成だ。
うちの一応勉強机の機能も有しているうちの縦約50センチ、横約80センチぐらいのテーブルのようなちゃぶ台で料理を並べる。
パン、玉子料理(俺の分目玉焼き、真歌と渚の分スクランブルエッグ俺も少し貰う)、ヨーグルト、林檎(1個を三等分ぐらいに分けた)だけだがまあいいだろう。
「くんくん……おいしそうな匂い。もしかしてご飯!!」
と言い真歌が起きた。
現時刻朝の8時3分ぐらい。
「もしかして渚君作ったの。竹男ももしかして手伝った?」
「いや俺はこの目玉焼き作っただけだ、あっでもパンは俺が焼いた。林檎は渚が切ってくれたけど」
「まあそんなことはもうどうでもいい。とにかく食べる。それ大事」
「まあそうだな」
「真歌お嬢様いただきますは忘れないようにしてくださいね」と渚が言う。
確かにいただきますと言うことは大事かもしれない。
凄く当たり前のことなのに今まで気づかなかったのは俺の脳みそがこの機械化されオートメイションされた超文明社会で完全にまひってることだろうか。
いくら家賃と仕送りがあるとはいえ、こんなことを忘れるなんて俺は……そもそもこんな朝ごはんは久々だ。
いつもパン一枚とヨーグルトぐらいで玉子料理とかゆで卵ぐらいだいつも。
林檎なんて丸かじりで切ったこともないし。
むしろ原始的だな俺と改めて痛感。
「実はサラダも作りたかったが……竹男、なぜキャベツどころか人参とかすらないんだお前の冷蔵庫の中は……葱の刻んだのしかないじゃないか」
「いやたまたま切らしてただけで普段はあるぞ、少しぐらいなら」と俺は弁解する。
「まあ普段から野菜を切らさないようにしろよと忠告しておく。野菜食べないと色々と危ないからな特に成長期の僕たちの体は」
「その場合肉とか食えばいいんじゃないの?」
「運動するならな……まあ執事仕事もある意味運動だが、僕はお魚のほうが好きかな」
「そんなことより!!」と真歌が叫ぶように話す。
「朝ごはん食べる。みんなで!!」
「そうだなじゃあいただくとするか」
「そうですね真歌お嬢様」
「「「いただきまーーーす!!!」」」
かくして、朝ごはんはおいしく食した。とても良い朝ごはんだった。




