21話 能力ファイト大会編其の四
21-1「しずくの崖っぷちの闘い」
私 朱家雫は今大会の三回戦を突破して控室で休憩をしているところである。
もうそろそろ四回戦が始まる。
なので私はウォーミングアップを少ししていた。
なんてことはないイメージトレーニングである。
脳内で様々なパターンの相手をして闘うのである。
何百通りの相手と闘い方が有る中私は今のところ勝ったり負けたりを繰り返していた。
しかしそのなかで負けるパターンを照合して勝つパターンに変えるそれを繰り返していた
そんな意味が有るのかわからない行為を続けているうちに私の番が来た。
相手はどんな奴なのだろうか。いやどんな相手だろうと勝つただそれだけだ。
私は闘技場に足を運ぶ。そうして相手を確認する。
見た所女だ。私より少し年上のようだ。そんな印象を感じる。
そんでもって少し高飛車な感じに見える。一番は私だという顔をしている。
そんな生意気そうな女だった。
名前は上野坂未季というらしい。
対戦者の名前はこの会場のパネルに映し出されるのだ。
そんな相手の考察をしている間に試合が始まる。
四回戦からは試合時間に制限が無くなる。
なので思いっきり闘えるのだ。
私は本気で闘いたかっただが今までの試合は相手が弱すぎた。
一回戦も二回戦もレベル4の雑魚だったし。
三回戦でやっと強いレベル4に当たったが実は見かけ倒しだったのは残念だった。
今度の相手は私を満足させられるかな?そんな期待があった。
試合が始まる。さあどんな能力なのかしら。
試合開始の号令が響きわたる。
私はまずブラッド・アタックで様子を見ることにした。
血の弾丸を飛ばす。これでどう出る?
普通にダメージが通る。これで相手のゲージは97パーセントだ。
能力は弾丸を受けることには使えないのか?
とにかくそれなら私は攻撃あるのみだと思い攻撃する。
ブラッド・マシンガンをぶつける。
何十発ものの弾丸が相手を襲う。
それでも相手は能力を使わない。
これでゲージは91パーセントだ。
なんとも張り合いが無い。これでは一方的に攻撃しているように見える。
それでは駄目だ必死な表情を見せてくれないと私は楽しめないのだ。
別に必死そうな相手の表情を見たいわけではない。
これでもかと反抗する人間の生きざまを見たいのだ。
とにかく相手はまだ様子を見ているそろそろ仕掛けてこないのか?
と思っていたのもつかの間相手が静かに動き出していたことに私はこの時気づけなかった。
上野坂未季はこのフィールド内で自分にしか見えない点を空間に存在させていた。
それを生み出すのには時間がかかった。
なので準備に手間取ったのだ。
だが今は空間に三つの点が存在する。
それを相手の少女しずくのそれぞれ右足と左足と右手にくっつけた。
後は相手が接近戦を仕掛けてくるまでが正念場だ。
さあ早く来いと思っていた上野坂未季は。
しずくはそろそろ頃合いと見て接近戦を試みようとしていた。
ブラッド・ソードを作り出す。そして右手に持つ。
そのまま相手に向かって駆け出す。
そして斬りかかる……しかし自分の手は途中で止まってしまった。
そして反撃を喰らう。上野坂未季からナイフのような武器アイテムで斬りつけられた。
私のゲージは95パーセントにまで減る。
足が動かない。さらに斬りつかれる。三回斬られた85パーセントだ。
そのまま私は足を何とか動かそうとするが動かない。
しかたないので何故か動く左手で対処することにした。
左手にブラッド・ウィップ(血の鞭)を作り出す。
そしてそのまま相手を弾く。相手は後ろに跳んでいく。
大したダメージではないが何故かそれで動けるようになった。
いったいどうゆうことなんだろうか?
上野坂未季は不味い表情をしていた。
何故なら自分の仕掛けた点がずれたのである。
そう相手を常に操るには点を相手の座標領域の正しいところに置いておかなければならない。
なので相手に吹っ飛ばされた時手元が狂って点がずれたのである。
すぐさま点の位置を修正しなければいけないのだが……
しずくはそのまま接近してきている。そして点の移動よりも速く攻撃を仕掛けてきた。
ブラッド・ソードで斬りかかる。これで78パーセントになる未季のゲージ。
そのままブラッド・ソードを解除する。
さらに強力な攻撃で一気にけりをつけようとした。
ブラッド・ハンマー(血の大金槌)これで勝負を付ける。
その大きい質量を持つそれはかなりデカかった。
それは未季の体なんか簡単に捻り潰せそうなほど巨大なものだった。
それを振り抜くしずく。
魔人のごとき威力を誇るハンマーは未季を捻り潰そうとした。
しかし未季の能力が間に合った。
点が右手と左手を捕えた。
そして手の動きが止まるしずく。
動かない……?どういうことなの!?
しずくは驚いたまたもやこんなことが起きるなんて思わなかったようだ。
しかししずくは諦めない。血液のブーストを使い血流運動を速める。
これにより腕を無理矢理動かそうとする。
少しずつ動いて行く両腕。
そのまま異常なまでの負荷がかかる。
未季は焦っていた。まさか私の点加操作が破られるかもと考えいた。
実際どのくらいの力を加えたら破られるかまではわからないでいた。
点の操作を間違えなくても点を揺るがす負荷がかかった場合能力を無効化される可能性が有ったのだ。
とにかく揺るぎない点だと思われていたが点の位置がずれた。
ブラッド・ハンマー(血の大金槌)が振り下ろされる。
未季は防御態勢をとる。
しかしそんなことでは防ぎきれないのであった。
ズガーン!と音が鳴り地面にひびが入るかと思われるほどの威力だった。
未季は倒れていた。体力ゲージは54パーセントにまで減っていた。
ブラッド・ハンマー(血の大金槌)は消滅した。
絶大な威力を誇るが一度相手にダメージを与えると消滅してしばらくは使えないという欠点があったのだ。
しずくは決着を付けようとしていた。
しずくの十八番血塗られた狂剣を生み出す。しかも双剣だ。血塗られた狂双剣だ。
これで止めを刺す。
しずくは斬りかかる。地面に伏せている未季に対して。
未季はすぐさま立ち上がり逃げ出すがブーストを行っているしずくから逃げ出すのはとても出来ないでいた。
そして斬りつけられる未季。
ゲージは39パーセントまで減る。
さらに一撃26パーセントまで減る。
このままではやられると思った。
未季は今までで一度もしたことのないことをする。
四つ目の点を生み出して自身の右手左手右足左足を点加した。
そして自動制御を宣言する。
強力な自己暗示をかけたさらに自身に宣言する。
加速!未季は確かに加速した。
そしてナイフ型の武器アイテムをしずくに突き付ける。
78パーセントになるしずくのゲージ。
さらに斬りつけられる。75パーセントになる。
血塗られた狂双剣で斬ろうとするが逃げられる。
なんて素早い動きなんだとこの時のしずくは思った。
あまりにも人間離れした動きまるで機械のようだ。
まるで私が使う血の抜けた自動人形のようだ。
何度もヒットアンドウェイの要領で何度も攻撃される。
五回斬られた。私の体力ゲージは58パーセントだ。
そのまま何度もヒットアンドウェイされる。
加速された動きは常人のそれを超える。
しずくはこのままでは負けると踏んだのか【エクス・エボリューション】を使おうかと考えた。
出し惜しみしていてはいけないのだ。
しずくは【エクス・エボリューション】を行使した。
これで120パーセントの力が発揮出来る。
しずくは体全体を使って動いた。
血塗られた狂双剣を構えて奴の懐に潜り込んだ。
しかし躱される。何度も躱される。
正確な機械の様な動きで躱してくる未季。
ナイフでの攻撃リーチはこちらの方が上回っているのに何故当たらないのか。
躱して躱して躱しまくる未季。
その動きはどんどん上がるが限界も来る。
その一瞬をしずくは見逃さなかった。
ザクッ刺さった剣が。というより当たったのだ。これで未季のゲージは12パーセントまで減った。
後は一撃でも喰らわしたらいい。そう思ったのもつかの間剣が動いたあらぬ方向にそのまましずくは自分を斬りつけてしまう。
私のゲージは48パーセントまで減る。無理矢理振りほどいた。
やっと自由に行動出来る。そのまま一気に斬りかかる。体が捻った。
転んでしまう。そのまま何回か斬られる。ゲージは46パーセントまで減る。
動いてやるそう思ったが謎の力に阻まれる。
それを切り裂くと動けるようになった。
心の目で見たのだ。【エクス・エボリューション】はそんなことも出来るようになる。
私は相手の能力を見抜いていた。多分点を操りそれを操作する能力。
そしてその点を私や空気を固定するなどして操るなど出来ると確信していた。
だからさっきも点で空気を固定して進路を防いだのだと思った。
この点は私の強力な動きは防ぐことが出来ないと思った。
だから【エクス・エボリューション】で体にブーストをかけているのだ。
それでもって敵の動きを読む。
私の動きは達人のそれと変わらないならなぜ躱せるのか疑問だったが今その理由がわかった。
多分自動制御しているのだろう。動きの先読みも兼ねている。だからである。
ならその動きの先の先を読めばいい話だ。
今だそこだ。私は一瞬の隙をついた。動きの終点だ。
そこからはどうあがいてもこう動くと予想できるその終着点に私は攻撃した。
当たった。そして相手のゲージは0になる。
これで試合は終了した。なかなかの強敵だった。
私に【エクス・エボリューション】まで使わしたのだ。
なんとも強い敵だった。
しかしこれからもっと強い敵が現れる。
そう思っていた私は。
ふと気になって彼が居るであろう会場のほうに行ってみた。
多分気まぐれだろう今まで見に行こうと思ってなかったのにだ。
ちょうど少し待つと彼が現れた。
相手のことは目に入らなかった。
彼だけが私の中では評価が違った。
ついこの間まではただのちょっと不思議な能力の持ち主と思っていたが。
今は違う。強い心の持ち主。そう評価は変わっていた。
そして試合が始まり右手が異形なる化け物の手になり相手を打ち滅ぼさんと手を前に出す。
相手は炎を使う能力者のようだ。
だがその程度の火では彼を倒すのは至極難しいと思った。
そして結果的に一方的な闘いになった。
そして試合は決した。
彼こと竹谷竹男の勝利である。
これで大会もかなり佳境になってきた。
残り64名の大会参加者。
次はどんな相手が待ち受けるのか。
「なんだあいつも来てたのか……」
しずくは彼の試合を終始見ていてた。
相手に気付かれているとは知らずこっそり覗くように見ていてたのである。
「タケオ~お疲れ~すごかったよ~」
もう一人の人物美知ももちろん見ているのであるがしずくの存在には気づいていなかった。
気づいたら何かがおっぱじめられるかもしれないから気づかない方がタケオのためではあるが。




