13話 いつもの日常が戻ってきた日
13-1「いつも通りに過ぎていく俺のまた始まりの日」
あれから約三週間が過ぎた今日は土曜日であるよって会社が休みだ。
ついに思う存分能力ファイトができる日が来たぜ!
ついに来た、キターーーーーーーーーーーーーー!
俺はいつも通りの晴れやかな気持ちに戻っていた。
すっかり能力ファイトのとりこになっていたのである。
これから休みの日は毎日能力ファイトしてやるぜ。
とことんぶっ倒れるまでやってやるぜ。
というわけで早速端末機のレーダー機能を使うべく俺は端末機に触ってみることにした。
レーダー機能ONとな……すると反応が一つだけ近くの河川敷から見られた。
止まっていたので俺は行くことにした――
――俺は行ってみると落胆した。新しい相手が見つかるかと思ったのに……
行ってみたらそこでお昼寝している見慣れた少女がいた。
しずくである。なんでこんなとこで寝ているんだろうか、起こしてやろうかなと思ったが面倒なことになりそうなので俺はゆっくりと離れようとしたが……起きた。
そしていきなりブラッド・ナイフを顔に突きつけられた。真っ赤な顔で震えている。
何が気に障ったのか。俺は聞いてみた。
「何が気に障ったんだよ……俺がお前に何かしたのか?」
しずくは答える。
「私はですねあなたに寝顔を見られたのが恥ずかしいんですよ、わかります?寝顔ですよ普通にそんな気の抜けた表情見せたくないでしょ?だから忘れて下さい私の寝顔を」
相変わらず早口であるしずくの喋り方は、寝顔を忘れろ?嫌だと言ったら怖いので忘れてやろうじゃないか。
「わかったよお前の寝顔は頭のどこかにいっちまったよ……これでいいか?もう覚えていないからお前の寝顔は」
「それでいいんですよ……ここは私のお昼寝スポットなんですよ……内緒ですからね」
そしてしずくはせっかくここでまた会ったのだから能力ファイトしましょうということになった。しずくとリベンジ戦か……まあいいだろうかなこの前はまつりさんに邪魔されちゃったからこんどこそ俺が勝ってみせる。あの力を完全にコントロールする練習台になって貰おうかとも思った。一応本気出すぞとしずくには伝える。しずくは余裕の笑みで答える。
「いいですよタケオさん、あなたの本気モード……前に使った力を引き出してみて下さい。半分それが目的でしたし……」
「えっ?そうだったのか、まんまと乗せられたな……それじゃあ本気で行くぞ……!」
勝負開始の合図を伝える電子音声が鳴り響く。
『時間無制限体力勝負開始します。』
『始め!』
勝負は開始された。俺の本気を見せるまでだ。
まず始めに俺の中の未知の力を開放するぜ…………………………あれ?出てこない。
いつも通りにほらっ……力を開放するイメージで……………………出ないぞ。
ならばXの形を体で表現して……………………………………………………出てこいよ!
対戦中なのに俺は一人で変なポーズをとったりしていた。どうやらなんだか調子がでない。
対戦相手のしずくも何だか呆れている目で俺を見てる。そして容赦なくブラッド・アタックを連続で放つ。中距離攻撃なのでかわしにくい。二発ぐらい当たったのでゲージは89パーセントになっていた。このままでは負けると踏んだ俺は接近戦を仕掛けることにした。
大明理流の拳法を習得中の俺はかなり最近動きが良いはずだ……まず相手の攻撃を避けながら近づく、そしてハイキックを繰り出す。が防がれる。そして「ブラッド・ドレインパンチ」とか言って拳に血の塊みたいなものを集中させて俺に一発殴りかかってきた。かわせない、腹に一発喰らう。結構痛いのである。ゲージは減った時に空中に自動で映し出される。82パーセントになった。これはイカンと思い俺の十八番脳天頭突きを繰り出す。
だが当たらない。しずくは独特のステップで俺の攻撃を回避してしまう。
まるで蝶のような舞を踊っているかのような感じで闘っている。
しずくは空中に血の塊を固定させながらであった。
そして「ブラッド・ストライク!」と言い、血の塊を大きい状態に集中させている。そして放つ。俺はかわしたが、かわした後の血の塊は元に戻っていくしずくの中に……これでは球切れにもありえない。
俺は時間無制限なのでこれ以上長引かせるつもりはないのか知らないが、相手も本気の本気を見せてきた。
「ふふふっ……行きますよタケオさん!【血塗られた狂剣】ですよこれでお終いにしまいましょう!」
巨大なものでは無いが少しだけデカい血の剣を作り出した。長さは二メートルといったとこか。しかも禍々しいオーラに包み込まれている。
こっれはどうしたもんか~一発でも喰らうとゲージが30パーセントは削られそうだなと感じさせるほどの気迫があのしずくの能力で作り出された武器からオーラが放たれていると思った。
そして突っ込んでくるしずく。速いなまた血液の循環速度を上昇させたブーストを行っているっぽいな。俺の身体能力ではかわせそうにない。そしてあっさり斬られる。
ゲージは42パーセントに、二回目をそのまま斬られる。5パーセントだ。
俺はやられたい放題だった。そして最後には腹パンを一発。ゲージは0パーセントになった。俺の完敗だったのである。ああ今回は相手が悪すぎたな~と思いました。
13-2「というわけで、コントロールするために特訓ですよ特訓」
――そして俺は河川敷で修行をしずくにさせられている。どうしてこうなったかと言うとあまりにも愚かなので私が教えてあげますよと言われたしずくに。なんとも上から目線を通り越して失礼だなと思ったが俺は確かにしずくに完敗だったのは事実であるのでこの現実を受け止めないといけないのは本当のところである。
よって俺はまず自分自身の真の力?なのかわからないが獣の腕や禍々しい巨大な化け物のような手を出すことができる特訓を開始した。瞬時に出せるようにした方がいいと言われたからな。なおしずくは隣でずっと監視している。休む間もないのが現状だ。
しかしやろうと思っても右手はいつものままである。どうやってもできない。根気が足りないとしずくに言われるがそんなこと言ったって無理なもんは無理であるのがまた現状である。とにかく気合いです気合いと熱血指導をされる俺。しずくってこんな性格だったかな?とにかくこんなことが色々あって一時間は時間が過ぎた。
ちょっとまってくれと疲れたのでと俺はしずくに申し出る。しずくは「仕方ないですね、五分休憩を取ります」と言ってくれた。はあはあ右手に意識を集中させているだけなのにすごく疲れたのである。これが精神が疲労したという状態なのか。今は日本標準時刻で言うとPM三時になるつまりおやつ時だ。とても疲れたのだ俺は今最強に腹の虫が鳴っている状態である。しずくは五分休憩の間どこかにいってしまった。
「逃げたら、許しませんからね」とだけ言い残して。俺だってこんな意味あるのかわからない特訓逃げたいさ、でも逃げると地の果てまで追って来そうな女の子がいるからなしかたないのさ。そしてそんな独り言を考えている間にしずくが何か入っているであろう包み紙をもってこっちに向かってくる。何かと思ったらたい焼きだ。
「私のおごりですよ、特訓にせいを出して貰うためですから深い意味はありません」
とだけ言ってたい焼きを一つ俺に渡すしずく。
なんとも素直じゃないがいい子だなと思う俺であった。
そしてモグモグとたい焼きを食べる俺。とても美味しかったのである。なんとも餡子がぎっしり詰まっているたい焼きなんだ。しかも餡は甘すぎず、まろやかな味付けだ。
なんとも最高なたい焼きだった。「しずくは買い物上手だな、いいお嫁さんになれるだろうな」と褒めたら。顔を真っ赤にしていた。「何言っているんですか、怒りますよ」と何故か怒りそうだったのは不思議だ。
ただ褒めただけなのに。何がそんなに気に障ったのかまったくよく分からない……
女の子は不思議な生き物である。そういえば美知もたまに理不尽なことで切れることがあるがなんか俺悪いこと言った覚えはまったくないはずなのにな……まあいいかそれより休憩時間の五分が過ぎた。そしてしずく先生からまたイメトレに近いことをやらされる。
「右手に力の根源を集中させるのです……そして自分の右手の強いイメージを作り出すのです、タケオさん!ファイト一発です!」
そんなこと言われても無理だろ~と思うから無理なのかな……俺の気の持ちようなのかもしれないとここで気づく俺。
ならばこれでどうだあの時の俺の右手に宿っていた力を思い出せばいいのかもしれない。
「く……ぬぬぬぬ……これでどうだ!」
俺は右手に全神経を集中させて鳳凰丸戦の時や部長の闘いのときやこの前の違法武器工場での戦いの時の記憶を頼りに右手の形を思い出していた。そして変わるそれは別の何かに変わるというイメージを捕えた。するとどうだ俺の右手は禍々しいオーラに包まれた化け物の腕に変化していた。今度は腕全体が。手だけじゃなく腕も?と思ったがよく考えたら別に不思議でもない俺の腕は暗黒のオーラに包まれていた。手は魔物の手そのものと見える。魔物なんて見たことないけどな……とにかく変化した俺の右手は。巨大化はしてない魔手と言ったところかこの状態は。
「すごいです、やっと成功しました。さあ後は左手も変化させるだけですさあどうぞ」
早口で指導するしずく。えっ?左手ももしかしてあの輝きの左手も?右手を闇とするなら左手は光となっていた、輝いた左手も変化させないとダメ?
「はいダメです……この状態ではバランスが悪いですからそれにエクス・エボリューションになるためにこれだけでは不十分ですので」
聞きなれない言葉を言うしずく。エクス・エボリューション?なんだそれは?
もしかして俺のあの時起こったXの輝きのことかそれならエクス・リバースのことかと聞いてみると
「エクス・リバース……タケオさんが名付けた場合ですね、でも私達公正試合実行委員会の面々は私のあの状態をエクス・エボリューションと呼んでます。まあどう呼ぼうがタケオさんの勝手ですけど」
なるほどそういうことか言い方が違うだけだと言うだけで同じことなんだなと理解した俺である。とにかくエクス・リバースを簡単に出すためには右手と左手のバランスが良くないと出ないと考察するしずく先生、確かにそうかも知れないが、あのときいつもの感じで夢中になっていたから実戦じゃないと俺は駄目なのかもしれない。
とにかく右手を魔手の状態で保つ練習に変更して欲しいと言ったら。まあいいでしょうとお許しを貰った。俺は右手の魔手を何分保てるか練習した。結構長いな俺の体力は意外とついてたのか最近美知の爺さんの特訓を受けているからか、なんと三十分は持った意識のある状態でここまで持ったならいいほうだ。
色々この後も体力作りとイメトレも兼ねて結局夕方の五時まで特訓してしまった。
俺は色々と礼をしたかったしずくに何かお返しをしないとこれでは大人の示しがつかない。
しずくは俺よりも年下である。これではダメだと思い何かプレゼントしないといけないなと思った。俺はちょっとまってろと言ってその場を去った。しずくは?な顔をしていたがすぐ戻ると伝えると「それではタケオさんが戻ってくるまで河川敷でお昼寝でもしてます」と待っていてくれるようだ。俺は歩いてニ、三分の商店街まで行って雑貨屋を見つけるとブローチを見つけた花柄の模様がとてもしずくに似合ってそうだと思った。薔薇の花びらを模っている。俺はこれにした。税込1500円でしたよ。
そして戻ると俺はこれを渡した。
「今日は特訓に付き合ってくれてありがとう……これはお礼の品だよ」
「別にこんなの……うれしくないです!こんなもの……わたしは欲しくないからですよ家に飾っときますからもう返しませんよいいですね!?」
と素直じゃないしずく先生からいつもの女子に戻っていた。
こんなとこも可愛い一面でもあるのかなしずくの良いところかな?
それで俺はここでしずくと別れた。家に帰ろうと木の沢山生えた道を通ることにした。
もう辺りはすっかり暗くなっている……何かが起きそうなそんな気配を感じるほど周りは薄暗い明かりに包まれている。俺は自分の家に帰る途中であった。
そこである人物が横を通り過ぎる時に耳元で囁かれた。
「これは我からの挨拶代わりだ」
刹那走る闇からの間から矢が俺に向かって飛んできた方向は分からない。
俺は咄嗟に体が動いたのでなんとか避けることができた。
後ろを見たがもう誰も居なかった。矢もいつの間にか無くなっていた。
謎の人物に俺は狙われたのか。その日俺は怖くなったので一人で帰るのが怖かったが誰かに迷惑をかけたくないので俺は家で一人で震えて寝たのである。
翌日なんとも眠り足りなかった俺は日曜日を美知の家で過ごそうと思う。
俺の大事な親友だからな。さあ美知の家に行こうと思う。
俺は逃げるように自宅を後にした……謎の襲撃者から逃げるようにして。




