二十話 言葉の裏
とても遅れて申し訳ありませんでした。
闘技場に逃げてきた俺とミナギ。今、闘技場の真ん中に正座させられ、お説教を受けている。
「あの方たちは国のトップなのよ!? それにタメ口どころか反抗なんてっ!! ていうか、なんでシャインティア様と顔見知りなのよ!」
俺の肩を掴み、ブンブンと揺らすミナギ。よくよく聞くと質問されてるみたいだ。
「だって、なんか癪に障ったから……」
「そんな理由で……。はぁ、それで、第四皇女様とは?」
「拉致られた」
「……何かの間違いでは?」
訝しげな視線を送ってくるミナギ。あの時は死にかけてたなぁ。
「間違いじゃないわよ。興味があったから拉致ったわ。一位の側近さん」
皮肉を言い放ち、悠然とこちらに歩いてくるのは察しの通りシャインティアさん。
「ただ、もうちょっと補足が必要じゃないかしら」
「ミスって変な所に飛ばした事も話す事になるけどな」
「あれはサティのミスであって私のミスじゃないから」
こいつ最低だな。
ミナギをみると彼女も冷たい視線を送っていた。
「色々あったんだよ。ここに来るまでに」
「ラモナード家とも関わったみたいだし?」
ライニスの苗字か?
「あぁ、あの家系ですね」
なんの事か分からない。
「ユウガは知らないみたいだけど、ラモナード家とアスティーナ家は国家権力を争ってたのよ」
驚いた。まさか俺の知り合い二人が対立しているとは……しかも国家規模で。
それはともかく、そろそろ足も痺れてきたし、崩してもいいかな。
「なにやってるの? 誰が崩していいって言ったかな?」
「ゴメンナサイ」
「で、あなたがここに来たのを通達した」
マズイ。勇者は、世界規模で重宝されるもの。その所有権をアスティーナ家が所持したなら、ラモナード家の存在価値は薄れる。つまり、国の主権はアスティーナ家に渡る。いや、それくらいならいいが、ラモナード家の信頼も暴落して生活もままならなく可能性が……。
「で、まぁ泣きついてきたら最低限の補助はしてあげよう。とは思ってるんだけど」
「おい!」
「ユウガ」
「けどっ」
掴みかかろうとした俺をミナギが止めた。
「天下を目指して潰しあった相手に対する対応としては、これでも十分寛大なんだ。分かってくれ」
「身の振り方を考えておくことね」
そう言い残し、シャインティアは去っていった。
「くそ、気に入らない……!」
地面を殴る俺の正面にミナギが片膝をついた。
「ユウガ。あの方は棘がある言い方だけれど、本当は優しい人なんだ。この街が綺麗なのもシャインティア様のおかげと言っても過言ではない。あの方の真意を汲み取って欲しい」
こうして頭を下げられては、溜飲も下がる。
「分かった。よく観察してみるよ」
今日の訓練は打ち切られ、俺はシャインティアの事務室に向かうことにした。