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十四話 目を覚まして

 目を開けると、そこはどこかの部屋の天井で、いつのまにか眠ってしまっていたようだ。


「……」


 気怠くて何もする気になれない。

 けど、とりあえず状況の把握をしよう、と顔だけを動かし、自分の身体と部屋の確認を済ませる。

 あちこちを包帯で覆われていて、その程度の怪我はしたみたいだ。

 この気怠さはこれなのだろう。

 ……けれど、まだ、心当たりはある。

 俺の思い上がりだ。

 自身の力を過信し、勇気と無謀を履き違え、愚かにも戦線へと突っ込んだ。

 ライニスにも、多大な迷惑を掛けただろう。


「はあ」


 ため息が出る。

 俺は何をしにこの世界へと来たんだっけ?

 何のためにこの世界に連れてこられたんだっけ?


 "分からない"


 いや、分かるはずもない。理解したくもない。だって、俺は今でも地球に帰るつもりだから。


 なら、俺はこの世界で何がしたい?

 俺は、この世界で何ができる?

 ……復讐。あと、地球に帰る術を探すこと。


「……ガ」


 あぁダメだ。これからどうすればいいかが全く決まってない。なんて無計画なんだ。


「ユウガ。ユウガ!」


「うひゃん!?」


 いきなり大きな声を出されて奇声をあげてしまった。失敬。


「大きい声出さないでよ!」


「何度呼びかけてもお前が反応を示さないからだ!」


 聞き覚えのある声に目をやると、怒った顔の中にどこか安心した雰囲気のライニスが居た。


「あ、おはよう。起こしに来てくれたんだから今は朝だよね」


 至極当然に言い放ってみると、ライニスは自分に非があると思ったのか、申し訳なさそうな顔をして。


「す、すまん。ユウガが起きたから来ただけで、今は夜だ」


「窓見れば分かるっての」


「お、お前……許さないぞっ!」


 少しからかってみるとライニスは顔を真っ赤にして襲い掛かってきた。


「おま、ちょ、まっーーあぁぁぁぁ!」

 す

 ……手足を拘束され、じわじわいたぶられた後。


「はふぅ……たまには責めも良いかもなぁ」


 頬を紅潮させて幸せそうな顔をしているライニス。


「……そういえばライニス、お前は大丈夫なのか?」


「あー、まあな」


 はぐらかすライニス。魔王軍を嫌悪しているのは知っていたけど、その理由が分からない。追求したくなる場面ではあるが……。


「そっか、ならいいんだけど……なぁ、むか」


「そうだ、そういえば下にご飯があるから、食べに来なよ」


「……うん」


 察しが良いのか、探りを入れた瞬間に被せられた。

 有無を言わせぬ表情に、黙るしかない。仕方なく、俺は下の階へ降りる事にした。


 ★


 食事の際に、気を失ってからの事を聞かされ、俺が助けられたのが、俺と同じく地球から来た英雄だったらしく、黙り込むしかなかった。

 そして今。

 流石に復讐する対象になり得るかもしれない相手との差を体感したからには追いつこうとするだろう。否、しないと復讐なんて到底無理、言語道断なため……俺は部屋で自主練をしている。


「ダメだ、まだ密度を高くできる」


「majica」


 ライニスと共に。

 食事の際も、魔王軍ーー通称魔族に恨みを持つ理由を話してくれなかったライニスに口喧嘩を吹っかけてみると、ボコボコにされてこうして鞭を振るっている。俺に。

 密度=練り。そんな意識で、生地をこねるようなイメージを続ける。


「うむ、そんな感じだな。明確なイメージができているから楽に進んでいるな」


 ベットに座っているライニスはそんな事を言う。


「成長具合を実感するために魔法を放つのが良いと思う」


「力加減も分からないヤツの魔法なんてホテルで許可できるか!」


「なんだよ力加減なんてやっていく内に分かってくるもんだろ!いいじゃん!」


「よくない」


「痛っ」


 ベットに置いてあった木の棒に頭を叩かれた。

 何様だよコイツ。


「……水よ、散れ!」


 俺の掛け声と同時、ライニスの頭上の虚空から、人の頭ほどの水玉ができ、弾けた。その下に居たライニスは当然、水に濡れて水浸しになった。


「……ちょっとエッチ」


「殺す」


 背後に燃ゆる闘志を滾らせてライニスが木の棒を振り上げた。察するに、頭をど突くつもりだろう。

 俺はすぐさま逃げ出し、水で透け透けのライニスとしばらく命を掛けた鬼ごっこに付き合わされる羽目になり、傷がパックリ開く事になった。


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