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十二話 襲撃

 鋭い衝突音が鼓膜をつんざく。

 反射的に跳ね起きた俺は状況を理解しようと視線を彷徨わせる。


「なに!?」


 激しい衝撃でグラグラと地面が揺れている。

 慌ててライニスを見ると、彼女も驚いた様子で辺りを見回していた。


「ライニス、大丈夫か……ぁ」


 そういえば、昨日……。

 声をかけられたライニスも、少し気まずそうだ。


「あ、ああ……」


「そっか。今何が起きてるんだ?」


 俺が尋ねると、ライニスは険しい表情を見せる。


「恐らく、魔王軍の急襲だ。私たちギルド会員も、その名にかけて、大半が阻止すべく向かうが……行くぞ!」


 俺をマジマジと見た後、ライニスは出撃するべく準備を整えだす。

 連れて行くか悩みやがったよこいつ。


「……ちょっと不愉快なんですけど。まあいいや。行こう」


 確かに戦力外だとは思う。けど、せめて分からないように悩んで欲しかった。

 俺はそんな思考を掻き消すように首を振って、ライニスと同じく準備を始めることにした。




「ギルド会員の者ですが。今何が起こって?」


 準備が終わりとりあえずギルドに行くと、ギルドの前に佇んでいた、ギルドの受付嬢にライニスはギルド証を見せながら問う。

 ……後から俺もおっさんに貰っておこう。

 それを確認した受付嬢は。


「魔王軍の敵が攻め込んできています。応援に行かれるのしたら、時計塔に向かって下さい」


 と、答えたあと、ギルドの中に入っていった。


「ライニス。俺、ギルド証ってやつ持ってないから貰ってくるわ……おっさーん!」


 そう告げて、俺はギルドの中で例のおっさんに泣きついたのだった。



「ふう。なんとか貰えたよ」


 あれだけやったため、おっさんは顔を覚えていたらしく、割とすんなり発行できた。

 俺は出来立てほやほやのギルド証を握って一息つく。


「……少しは緊張感を持とうな」


「大丈夫、今日までずっと緊張し続けてるから」


 注意してくる呆れ顔のライニスにそう返し、真っ新(まっさら)のギルド証を見ていると。


「ーー魔王軍、勇者を倒したんだってよ」

「ああ、なんでも一撃だとか」

「その勇者は今、重傷で集中治療されているらしい……」


 そんな会話が、俺たちの目的地から遠ざかるように流れる雑踏の中から聞こえた。

 たぶん、俺以外のスカウトされたエリート達の誰かだろう。気の毒に。

 笑えない情報を耳にしちゃった俺は、他人事でない感じがして不安になったので、ライニスに伝えてみる。


「……やっぱりやめない?」


 すると、ライニスもその話を聞いていたのか、不安げな表情が浮かんでいるであろう俺を見て。


「ははっ。怖くなったのか?確かに緊張を持てとは言ったが、そこまでとは言っていないぞ。さ、行こう」


 軽く笑い飛ばして、その上腕を掴んで連行しようとしやがった。


「ええ!?なんで!勇者が負けたんだよ。危険察知能力ないのかよ!」


 俺の罵倒にも近い警告にライニスはブレず。


「魔王軍に屈して死ぬなら本望!」


 よく分からない発言を返してきた。


「せめて、国の為に死ぬのなら本望。だとかにしてよ……」


「こればっかりは性格だからな」


「そう言えばそうだったよ……」


 そんなこんなで頑なに譲らないライニスに半ば諦観していると、大きな爆発音が木霊する。


「急ぐぞ!」


 その声と共に駆け出すライニス。

 見間違いか、その顔は復讐に歪んでいた気がした……。


 時計塔に着いてみると、そこは激戦地だった。

 身長四メートルくらいの巨人に、武装した数十人が襲いかかっている。辺りには巨人が振り下ろす斧で破壊されたであろう瓦礫か散乱している。


「場違い感か否めないんだけど」


「……そうだな、端っこの方で援護射撃でもしているといい」


 異世界出身の俺には見慣れない光景に、怖気ていると、ライニスは同情の目をして酷い事を言ってきた。

 ちょっとカチンときた。


「じゃあお前は行くんだな!?」


 俺と同期のライニスに行けるわけがない。


「ああ、行ってくるよ」


 ライニスは依然変わらず、少し顔が歪んでいて、今は苛立ちも見えた。

 ……怖いから引っ込んでおこう。

 戦況は、ライニスが加わった事で若干こっちが優位になったようで、他の人達にも少し余裕ができたみたいだ。

 一人、油断したところを素手で殴り飛ばされた。

 ダメージが大きいようで、戦線離脱を余儀なくされたみたいだ。一人減った事でまた、膠着状態になる。

 ……同期で入ったくせに、一人前に戦ってるライニス。

 その様を傍観しているだけの俺、同期。

 女の子が頑張っているのに、俺はこんなのでいいのか。いや、性別は関係ない、只々、格好悪い。

 一人、蹴り上げられて減った。完全に向こうに流れがいっている。

 葛藤していると、チラとライニスがこっちを見た。


「……やるしかないかぁ」


 ピンチにも関わらず、あいも変わらず復讐に燃えているライニス。

 何ができるのかは分からないけど、やらなきゃいけない気がして腰に差した短剣を構え、戦線に参加した。

更新が遅なってしまい、申し訳ありません。


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