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召喚奴隷の異世界録  作者: 荒渠千峰
3章 異世界指名手配
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11 謎の接触

 またあの光景か、とリキヤは妙に懐かしさを感じつつもそんな自分に嫌気がさしてきていた。

 薄暗い、視界がぼやける。まだうまく目覚めきれていない、だけどこの重く冷たい空気と臭いで分かる。

 一度、瞼を閉じる。音だけをしっかりと聞き取る。近くには誰も居ない、聞こえてくるのは自分の吐息だけ。軽くぎゅっと瞑り、ゆっくりと目を開ける。薄暗さに目を慣れさせたおかげで部屋の全体像を窺えた。

 全方位が冷たい石、しっかり掃除されていても微かに残る鉄の臭い、枷はされていない。扉は頑丈な鉄格子で下の部分が開く、その部分からやっと光を拝める。恐らくは下から食事を送り込むための隙間部分なのだろう。その先は廊下で、今は静かだ。上の方には穴の部分とそれを塞いでいる鉄部分。二重構造だ。恐らくこの穴で捕虜の存在を確認するのだろう。


「ヴィヴィアンヌ~」


 もしかしたらこの状況を打開してくれるのではないかと呼んでみるが、反応はない。さすがにどこにでも現れるという便利さは兼ねてはいなかったか。


「尋問とか言ってたっけ」


 気絶する前の記憶を掘り起こすと、ルティが言っていた言葉がフラッシュバックする。痛い思いをするのは嫌だな、と他人事のように仰向けに寝転がる。


「いい加減この右腕も鬱陶しいな」


 特にすることも思いつかなかったリキヤはグルグル巻きの右腕の包帯を解き始めた。すると中に、固定するためのギプスが組み込まれているのが分かる。それの金具も外して久々に軽くなった腕をゆっくり動かしてみる。ポキポキと小さく骨が鳴るが、痛みはだいぶ引いた。日常生活はおくれるほどには回復したものの、日常生活そのものをおくることが難しいこの状況では徒労にひたすら溜息を吐くしかない。


「なんかこのギプス……俺の世界のやつと似てるなぁー」


 この装具だけ、まるで現代の技術を駆使したような趣さえある。そう思うとだんだん気持ち悪く感じてきて装具を壁に投げつける。


「考えたら俺のほかにこの世界に来たやつが、現代のモノを再現していてもそれは不思議ではないのか」


 冷静に考え、妙に納得したリキヤはのそのそと装具を取りに向かう。


「でも、こんなにリアルに作れるもんかねぇ」


 改めて人間の創意工夫の凄さに感嘆としながらもやがて訪れる虚無感に貶められる思いでひたすら脱出方法を考える。


「セネカ……」


 常に気を張って強くあろうとしていた少女の心は、弱っていた。思いつく理由はいくつかあるがどれが正解なのかは分からない。誘拐するほどの凄い家系だったのか、しかしリキヤにはグロートの言っていたことが強く引っ掛かる。


「世界を変える、その一部」


 ダメだ、ぜんぜん思いつく要素がない。ロージャという家系は何か秘密がある家柄なのだろうか、それならセネカのような少女の不確定で曖昧な情報よりも確実に情報を持っていそうなディアさんのような女性を狙った方が得られる情報は多いだろう。もしくは人質、それならわざわざあの場で逃げることもない。何かを主張するため? それなら確実な時と場所を選ぶ為に一時誘拐したのなら話は通じる。だが、交換条件のひとつも提示していない時点で狙いはやっぱりセネカ本人か。

 セネカだけにしかない価値。一緒に居た数刻の限りじゃ、何か特別な感じはしなかった。裕福ながらに不遇な存在の少女。

 徐に立ち上がり雷を纏わせたパンチを扉に放った。


「っ」


 雷は見事に感電していった、だがその威力は扉と壁の隙間に埋め込まれているゴム状の物が吸収した。細かい細工を施している、恐らくリキヤの使う魔法への対策としてだろう。壁を殴ったところでただの人間では打破できるはずもなく治りかけの右手に負荷を与えるだけだった。

 突如、足音が聞こえてきた。


「やべ」


 無駄に物音を立てて脱走を試みていたことがバレてしまった。その足音は案の定、リキヤが捕らえられている扉の前でピタッと止み、のぞき穴がそっとずらされる。


「フン、貴様のようなやつがヴァラウィルを退けただと? どんな奴かと思って来てみれば如何せん、青二才ではないか。奴め、とんだ嘘をぬかしおって」


 えらく老齢なしわがれた声が悪態を吐いている。


「じいちゃん、のぞき見なんて趣味悪いぞ」


 穴の向こうの老人は顔を顰める。


「この世界は気に入ったか? 魔力も持たぬ下等生物がよくもまあ、運よく生き残ってこれたものだな」


 その一言にリキヤは顔色を変え、扉の方へと近寄り、のぞき穴の先をキッと睨み付けた。


「あんた何か知ってるのか」


 扉の向こうのしわがれた声は低く笑う。まるでリキヤを小馬鹿にするように、哀れむかのように。


「貴様にそれを知る価値などないわ、下手に口を滑らせられても面倒だしのう。出来ればそのまま死んでくれると助かるわ」


 今度は高らかに笑いだす老人。そしてそのままこの場から立ち退いていく。


「これで邪魔立てしてくれたロージャ家も地の底よ」


 去り際に何かを呟いたようだがリキヤの耳にまではそれは届いて来なかった。


「あのじじい、まさかな……」


 それにしても、ここはどこなのだろうか。尋問をすると言っていたからには、キャラメルの城ってところなのだろうか?

 確信は持てないリキヤだが、問題は弁解をしようにも取り合う相手が居ないという事だった。


「ディアさん、もしくはそのお姉さん……、なんつったかな、アシュリアさんだ。どちらかがせめて俺の話を聞いてくれたら」


 その二人を呼び出そうにもその交渉に応じる者も居ない。

 このまま、何もできない状態で尋問でもされたところでセネカを救う手掛かりなど微塵も得られないというのに。リキヤがどれだけ気絶していたか分からないが、恐らくある程度街中を捜索して証拠の一つも見つからなかったら即座にリキヤへと矛先は向いてしまうだろう。そうなることが一番最悪なパターンだ。なんとしてもココから脱出してセネカを捜さなければ。ルティの誤解を解くことは不可能だろう。だったら自らの手で取り戻すしか道はない。

 扉とにらめっこを数分繰り返すが具体的な打開策は一向に出てこない。


「いよいよ手詰まりだな」


 そう呟いたのち、僅かに地面が震えだした。何かが這うような、地面を擦る様な音がしたかと思うとピタリと止んだ。何か起きたのかと、周りを見回したリキヤは信じられない光景を目の当たりにする。


「は?」





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