23 後の祭り
「ココまでくれば安全か」
ローブを纏った男は抱きかかえたディアの顔を見やる。あまりに突然のことだったせい
かどうやら気絶しているらしかった。僅かながらに寝息を立てている。
……まぁ、起きていられるよりはマシか。
大きく地面が揺れ、闘技場がみるみる崩れていく様子がここから窺えた。恐らくヴァラウィルが暴走を始めた頃だろう。
「はじまったか」
フードが風に取られ、崩れゆく闘技場を一瞥すると遠くからディアを呼ぶ声が聞こえてきた。ローブの男は右脚を前に出して地面に魔方陣が展開させる。
「シルフィー」
地面から小さな竜巻が起こり、ゆっくりとディアの身体を浮かばせた。
「これで気付きやすくなるだろう」
闘技場から上空へと舞う二つの影を確認すると、ローブの男はフッと笑みを見せた。
「ヴィヴィもうまくやってくれたみたいだな」
再びフードを被ったローブ姿の男、アキラは音もなくその場から消えた。
「ディア!!」
元囚人たちを引き連れたアシュリアが宙に浮くディアを見つけたのは、アキラが消えた直後だった。
「これは、風魔法か」
……あの男は何者だったんだ、どこかで聞いた事のある声だったが。
しばらく唸っていたディアの近くにズドオォンと何かが落ちてきた。
「「ぐぇっ」」
「もうちょっと着地はどうにかならなかったのか!?」
「うるさい男ね、あのままあの場に置き去りにしてスライム型モンスターにでも生まれ変われば良かったかもしれないね!!」
砂煙をあげながらリキヤと風魔の巫女が喧嘩をしていた。元囚人たちを下敷きにして。
「なんだ、無事だったか……ところでその少女は誰だ?」
お互いの頬を引っ張り合いながらリキヤはようやくアシュリアの存在に気付き、立ち上がって砂埃を払う。
「俺の命の恩人だ、えーっと名前はキノコちゃん……じゃないや、なんだっけ?」
若干ずれたキノコ型の帽子を正しながら少女はアシュリアをジト目で見た後、浅く息を吐いて、
「ヴィヴィアンヌ」
ブーたれながらも名乗った。
「よろしく、ヴィヴィアンヌ」
リキヤの差し出した手を握り、そのまま背負い投げを喰らわされる。
「馴れ合うつもりは微塵もないね」
そう言い残すとヴィヴィアンヌは元囚人たちの上から降りて地面に沈んでいった。リキヤはひっくり返ったまま、
「素直じゃねーの」
ボロボロな姿で満面の笑みを見せた。
「俺達の事、忘れてないか?」
元囚人である男の一人が儚げに呟いた。




