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第89話 酔っぱらい

「ううぅ、飲み過ぎましたー」


「しっかりしてください」


思いのほか会話が盛り上がった俺とメイドさんの外食。メイドさんは酒をガブガブと飲み続け、店を出た今では足はフラフラで目はトロンの典型的な酔い状態になっている。


「ほら帰りますよ。ちゃんと歩いてください」


「歩いてますよー」


「いや歩いてねーよ俺が支えているんだよ」


メイドさんは一人では歩けない程に酔っており、俺にベッタリとくっつく。

酒くさい……あのクールビューティーなメイドさんがこんなことになろうとは。

俺は酒の匂いに戸惑いながらも必死にメイドさんの肩を支えて歩かせる。


「えへ~、陽登君おんぶしてください~」


「重たそうなので嫌です」


「重いとか言っちゃ駄目なんれすー!」


「痛い痛い首を絞めるな!」


酔っているせいだろう、俺の首を絞めるメイドさんの力はとてつもなく強い。や、やめろ死ぬ。


「うえっへへ陽登君~」


「げほっ!? さ、酒癖が悪すぎ……」


いやさ、途中で気づいていたんですよ。メイドさんが酔っていることは。

でもこのまま飲ませて泥酔させたらメイドさんの体をあんなことやこんなことできる……むふふっ。

そう思っていたんですがねぇ。あまりのウザさにセクハラする暇がない。全然揉めてない。揉みてぇチクショウ……!


「陽登君おんぶー!」


「しねーから!」


「死ねー!」


「お前が死ねっ!」


前半の素敵な話はどうしたっ。両親のように慕っている旦那様と奥様に恩返しをしたいって素敵なエピソード話していたやん!


「だ、誰かぁ……」


居酒屋が連ねる街、道行く人は酔っている奴ばかりで俺らのことを助けてくれる人なんていない。たまに男数人がこっちをチラチラ見てくるぐらいだ。

お前らこのメイドさんをお持ち帰りしたいの? 俺もしたいよ。でも俺の場合はマジで持ち帰らないといけないんだ。帰る家が一緒だから……はぁ。


「隙ありー」


「ぐえっ」


メイドさんは無理矢理俺の背中に乗る。はぁー、本格的に嫌になってきた。

酔い潰れて寝てくれたらいくらでも襲ってやるのにさ。起きていて暴れるからタチが悪い。

……文句垂れても現状は変わらんな。俺は諦めてメイドさんをおぶる。運転手さんに迎えに来てもらうよう頼んでおこう。


「陽登君~。お嬢様~」


お嬢様はいないよ。今頃は家族三人で楽しく外食さ。

……そういや疑問に思うことがある。


「メイドさんも旦那様達と飯行けば良かったじゃないですか」


「えー、せっかくの家族水入らずな機会じゃないでふかぁー」


「いやメイドさんだって家族でしょ」


「……ふぇ?」


とろけた声が耳にかかる。俺は一度止まってメイドさんのおぶり直す。


「使用人として恩返しをしたいのは分かりますが、それ以前にあなたは天水家の一員じゃないですか。今日ぐらい、両親と一緒に過ごせばいいじゃん」


「……でも私は本当の家族ではありませんから」


「馬鹿かよ」


「むっ」


「さっき話してくれたじゃねーか。一人ぼっちだった自分を拾ってくれて両親のように想っていると。だったら娘のように接しろよ。子供のように甘えろよ」


「……」


なんで気を遣っているのやら。あなただって話したいこといっぱいあるでしょ。普段滅多に会えないのはお嬢様だけじゃなくてメイドさんも同じだろ。


「遠慮する必要ないですよ。両親と生意気な妹と一緒に過ごしてあげてください」


「まっ、母親と会いたくない系男子の俺が言っても説得力はないか」


「……」


「メイドさん?」


先程まで暴れ騒いでいたメイドさんが静かになった。一体どうし、って痛い痛い!


「えへへぇ、陽登君~!」


「な、なんだよ」


「君は本当よく分からない人ですね~」


メイドさんが思いきり抱きついてきた。ぎゅ~!と密着して、そして首が絞まる。だからなんでアンタは絞殺しようとしてくるんだよ!


「お嬢様が惹かれるわけですねぇ」


「何を言っ、ぐええぇ」


また暴れはじめたよこいつ!

鬱陶しいし酒くさいし、なんで俺がこんな目に……。


「……また一緒に飲み行きましょう」


「絶対嫌だ」


「死ねー!」


だからお前が死ねええぇぇ!


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