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第62話 デートの前に

子犬って良いよね。人生を幸せにしてくれる存在だと思う。

勘違いしないでほしいが、別に子犬が可愛いとか癒されるとかそんなんじゃない。まぁ話を聞いてくれ。

子犬と連れて散歩してみる。すると美人な女性達がキャーキャー言って近寄り、「触ってもいいですかっ」と尋ねてくるだろう。女性はしゃがみ、子犬を愛でる。犬に夢中な女性は胸元のガードが緩くなり、上から見下ろすこちらは女性の胸チラを堪能することが出来るのだ。

子犬のおかげ、子犬がいたから谷間を拝めた。子犬イコール幸せ。はい証明終了。よって俺は子犬が好きだ。詳しく言えば子犬のもたらす福利厚生的な幸運要素が好きだ。

また、靴屋も好きである。試しに靴を履く時、頼めば店員がサイズを合わせて履かせてくれる。その時、屈み込んだ女店員の胸チラを覗くことが出来ます。靴屋も最高だ。詳しく言えば靴屋の接客態度良い店員さんが大好きだ。靴屋で試し履きに夢中でパンツが見えてる女性客も好き。

そう、世の中は胸チラとパンチラで溢れている。あぁ、この時代に生まれたことに感謝しよう。アーメン南無阿弥陀サンキューキリスト。


ここで一気に話を変える。今日は土曜日だ。閑話休題がえげつないが気にしない方針で。ふりーだむ。

土曜、つまり学校はない。何この素敵な響き。テンションを上げる起爆剤としては天下一品だよ。休みとなれば、引きこもり面倒くさがりだらしないの三点で世界クラスの俺は迷わずダラダラと過ごすのだが、今日はちょっと違う。


「よっこらしょうなんのかぜ~」


濡れたまんまでイッっちゃって!とタオルをぐるんぐるん回す仕草をしつつ靴を履き終える。

実は今日、木下さんと会う約束をしているのだ。あんな可愛い子とデートだなんて俺史上最大のビッグウェーブだが勘違いすることなかれ。木下さんの特訓に付き合うに過ぎない。いつもは学校で行ってきたが今回はお外でやります。路上教室的なノリ。

特訓、だが分類上はデートと言っても間違いではないよね。てことで俺は結構ノッてる。タオル振り回すアクションをするぐらいにはテンションアゲアゲ。

んじゃま、行きましょうかね~。キングオブ引きこもりが外の世界へ飛び立とうとしたその時、


「どこ行くのよ」


後ろから声をかけられた。生意気そうな女の子の高い声だ。

んん~、声だけで分かるよ。雨音お嬢様ですね。


「友達と遊んできます」


扉に触れようとした手を下げ、後ろを振り返ればクイーンオブ引きこもりの姿。俺のご主人様がこっちを見つめていた。子供っぽく見える水色のワンピースを着ているのにどこか大人びた浄げな雰囲気を出している。

あらあら今日もお美しいですねー。見た目はただの美少女なのに、口を開けば印象は一気に変わる。


「は? どこに行くのよ」


ヤンキーが喧嘩売る時の煽り方に似た口調で威圧的に再度同じ質問をぶつけてきた。遊びに行くと言っただけで半ギレ状態だよふえぇ。


「行く場所は特に決めてないっす」


「誰と行くの?」


「だから友達」


「友達って誰よ」


うわあぁぁ面倒くさいぃぃ。こいつ付き合ったらウザイタイプの彼女だよ。彼氏を束縛するやつだ。バイトだから今日会えないと言ったら写真送ってこいと証拠提示を求めるやーつだ。

そして俺らは付き合っていない。なぜお前に言わなくちゃいけないんだ。溜め息を漏らすとキレてくるだろうし大人しく答えておくか。


「友達は友達ですよ」


「男? 女?」


それも聞くのかよ。こいつ本当に付き合ったら面倒なタイプだ。


「女の子です」


「……ふーん」


お嬢様は訝しげに目を細めて俺を睨んできた。

それジト目だね。不機嫌そうだけど見ているこっちはその姿がちょっと可愛く思える。漫画やアニメのジト目って良いよな。ただし現実世界ならただの目つき悪い奴だ。


「デートじゃないの、それ」


「別に友達と遊ぶだけですからデートじゃないっすよ」


「……へー。あっそー。ふーん」


さっきから何よそれ。その納得いかない的な間の伸びた声は。

どこからどう見ても、お嬢様のご機嫌は良くないご様子。まぁいつも不機嫌なんだけどさ。下唇を噛んで頬をぷくぅ~と膨らませている表情はまるで子供が拗ねているみたいだ。


「どうしたんですかい?」


「別に。ふーん、私を置いて遊びに行くんだ」


それは私も連れて行けってことか? たぶん木下さんは大丈夫だろうけど……あー、いや、こいつ面倒くさいし邪魔になるか。


「お嬢様はお部屋でゲームでもしたらどうでしょう」


「……へー、私は一人で部屋に引きこもっていろと。陽登は女の子と遊びに行くのに? あっそ」


果てしなく面倒くさい。ので俺はこれ以上何も言わず扉を開けて屋敷から飛び出した。

後ろからお嬢様が何か言っているがガン無視だ。知るかボケェお前の相手だりーんだよ。テメーは一人でゲーム実況でも観てろ。神!とか投稿乙です!とかクソ寒いコメント打ってろバーカ。


「さて、急ぐか」


お嬢様が屋敷から出てきそうなので全力ダッシュで庭を抜けて門の外へ。

さぁ今日も頑張っていきましょうなんのかぜ~。


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