表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/150

第35話 ぼきぼきメモリアル

「それでは次の作戦を考えよう」


そう言うと芋助は俺の机に腰かける。テメーの汚いケツを乗せるなボケ死ねカス。


「……まるでボケ死ねカスと言っているような顔をしているよな」


「お、分かるのか。お前エスパータイプかよ」


「ゴースト二倍だぜっ」


「こうかはばつぐんだー」


「「あっはっはっは!」」


「じゃ、おやすみー」


机から芋助を押しのけて俺は突っ伏す。


「待てーい!」


が、すぐさま芋助が揺すってきた。

テメェこれで何度目だと思ってやがる。俺の眠りを妨げるなや。


「しつけーな。もう無理なんだって。努力も文字数も無駄ってことが分からないのかよ」


お前に構ってばっかじゃ全然面白くねーだろ、展開的に。

もっと違う女子といっぱい絡みたい、色んな意味で。


「は、ハル君が厳しい」


厳しくねーよ。客観的に見て無理だと断言しているだけだ。


「いい加減にしろよクソ芋が。テメーのくだらない恋を応援するぐらいだったら一人でオセロした方がマシだよ」


「俺の恋は一人オセロに負けるのかっ!?」


結構な大差でお前の負けだよ。

分かったら大人しく自分の席に戻れ。


「ハルが呆れるのも無理はない。だからこそ俺はこの週末生まれ変わる努力をしてきた。以前の俺とは大違いだ!」


「お前のメンタルの強さはどうなってんの? 就活とかで活かせよ」


「これを見よぉ!」


聞けよ。

俺の発言を無視して芋助は何かを俺の机に叩きつけてきた。

これは……ゲームソフトか?

可愛らしい女の子が鉄パイプを捻じ曲げているイラストが描かれてあり、タイトルは……『ぼきぼきメモリアル』……?


「格闘ゲームか何か?」


「違う違う、これは恋愛シミュレーションゲームだ」


マジかよ。女の子が鉄パイプ曲げているけど。ときめきじゃなくてぼきぼきだけど!?

え、何これ。主人公の骨をぼきぼきにするゲーム?


「女の子と仲良くなれるゲームだ。俺はこの週末でやり込んできた!」


これで現実の恋愛もバッチリだ!と言いたげな顔をして芋助はふんぞり返る。また時間を無駄使いしやがって。


「すげー怪しいタイトルだけど本当に恋愛ゲームなのかよ」


「これでもネットでは反響の大きい有名作だぞ。女の子を堕としてハートをバキバキのボキボキのメロメロにして高校生活を満喫するのがコンセプトだ」


芋助の説明を聞きながら説明書を取り出す。

読んでみれば今芋助が言ったことと同じようなことが書かれていた。


「かなり完成度が高いんだぜ。ヒロインの好感度がMAXになればエロムービーが流れてユーザーのあそこもボキボキだ」


「下ネタじゃねーか」


くだらねぇ、ただのエロゲじゃないか。タイトルからパッケージから内容まで全てメチャクチャだ。


「いやいやハルはこのゲームを馬鹿にし過ぎだ。意外とリアルなシチュエーションがあったり難しい選択肢のオンパレードで攻略は至難を極めるんだぞ」


「ちなみに芋助は全ヒロイン攻略したのか?」


問題はそこだ。

すると芋助の顔色が暗くなった。


「ネットに書かれてあったけど初見ユーザーの大多数はハズレヒロインの『姫野ジュンレン』ってデブ女に無理矢理付き合わされて特殊能力『威圧感』を手に入れるというバッドエンドを迎えるんだ」


それ違うゲームの要素入ってるぞ!?

何だよ威圧感って。あ、だから今朝お前あんな厳つい顔してたの? 特殊能力発動してたのね!?


「何度やってもジュンレンが邪魔してくるんだ。一体どうすれば……」


「アホらしい。そんなクソゲーして何になるってんだ」


「だから舐めるなって。クソ要素は多いけど最後まで行けばエロシーンもあるんだぞ。ハルの思っている以上にコミュニケーション能力は上がるって!」


そう言われてもなぁ……ん。待てよ?

コミュニケーション能力が上がる。ってことは、


「芋助、このゲーム貸してくれ」






放課後になると即屋敷に帰ってきた。さすがはボッチのお嬢様とグータラな俺である。

テキトーに着替えてお嬢様の部屋へと向かう。


「お嬢様ー、遊びませんかー?」


ノックすると中から「何?」と声が返ってきた。


「お暇でしたら俺とゲームしましょう」


「……ん、いいわよ。でもちょっと待って。今着替えてるから」


「入りまーす」


ドアを開けて中に入る。

お嬢様は制服のブラウスが脱ぎかけでチラッとおへそが見え、スカートのファスナーを外している状態だった。


「なっ、ななな、なんで入ってくるのよ馬鹿!」


「ぐえっ」


お嬢様の投げた鞄が俺の顔面にヒット。痛いです。

陽登はダメージを受けた。しかしJKのおへそを見たのですぐに回復した!


「馬鹿なの!? サイテー!」


顔を真っ赤にしてお嬢様がこっちへ迫ってくる。

が、脱ぎかけのスカートが引っかかったのか俺の手前で盛大にコケた。


「ぎゃうん!」


前から倒れこんだお嬢様。一瞬だけどスカートの中からなんか薄いピンク色っぽい布が見えた気がする。あざま。


「なんかごめんなさい。外で待ってますね」


ニコリと微笑んでドアを閉める。中から呻き声と俺を罵る声が聞こえてきた。

うーん、ノリで入ってみたけど申し訳ないことをしてしまった。ちょっと反省。

でも同時にガッカリした。全裸か半裸を期待して入ったのにさ、中途半端な状態だった。何してんだよB地区見せろよ。R指定の壁ぶち破れ。


「お嬢様まだですかー?」


「うるさいっ。……服、どれにしよう……?」


最後の方が聞き取れなかったけどたぶん俺への悪態だろ。

別に俺は下着でも構わんのよ?


「……入って」


お嬢様の不機嫌な声。ういー、と返事して再び中に入れば私服に着替えたお嬢様。

スカート丈の長い水色のワンピースだった。丈は長いけど膝下は透けており、なんとなくエロイ。さらには肩が出ていて露出が多い。ノースリーブってやつか。誘ってんの?


「可愛らしいお召し物ですね。よく似合っております」


「薄っぺらい笑みを浮かべないで陽登のくせに」


陽登のくせにとは何だテメー。俺個人を馬鹿にしやがって。ファックするぞ。

不機嫌ながらも部屋に招き入れてもらえた辺り、俺もちょっとは評価上がっている気がする。さっきので下がっただろうけど。


「それで、何して遊ぶの?」


ツンとしながらもチラチラと俺の方を見てくる雨音お嬢様。

今朝に続いてまたもツンデレか。少しハマりそうなのでやめていただきたい。

俺は床に落ちた鞄を拾いつつお嬢様にゲームソフトを渡す。


「ぼきぼきメモリアル……?」


訝しげにソフトを見ている。そりゃそうなるよね、どう見ても怪しいタイトルとおかしいパッケージだもの。


「何よこれ」


「俗に言う恋愛シミュレーションってやつです。女の子と仲良くなるゲームですね」


「なんで私がこれしなくちゃいけないのよ」


ギロッと睨むなよ。理由はあるさ。俺なりに考えた。

生意気で高飛車な性格はどうしようもないが、ボッチのお嬢様に友達を作らせるにはまずはコミュ力を向上させる必要があると思う。このゲームでそれを培ってもらおうという作戦だ。

これ言うとこいつ拗ねてゲームしないって言いそうなのでテキトーに説明しておくか。


「面白いって聞いてクラスメイトに借りてきました。俺一人ではクリア出来そうにないので一緒にやりません?」


俺なりに優しく微笑んでみる。

お嬢様はしばらく俺とぼきメモを交互に見ながら黙って、最後に小さく頷いた。


「ちょっと待って、ゲーム機探す」


どこかに仕舞い込んであるらしく、ゲーム機を探す為にお嬢様は後ろを振り返……ふぁ!?


……び、ビックリした。

お嬢様はワンピースを着ている。肩が出ていて露出多いなぁと思っていたが後ろを見れば、背中がガッバァ!と開いているではないか。擬音は変だが気にしない。


「えーと、確かここに……」


なんだろう、かなりのエロスを感じる。

棚の前でしゃがんでゴソゴソやっているお嬢様に接近してじっと見つめる。背中を。

透き通るような白い肌。目を瞑ってしまいそうな程に輝いて見える。きめ細かで汚れシミ一つもない。

まるで彫刻のように美しく、けれど冷たい印象はなく寧ろ温もりを感じる生々しさ。綺麗な背中に思わず唾を飲んでしまった。

……クソ、やっぱこいつ容姿だけは恵まれているんだよな。普通に可愛いし。


「あったー。これよね、って近っ!?」


「あ、すんませんお嬢様の背中に見惚れてました」


素直に謝ったのにゲーム機の箱で殴られた。痛いです。


「近い!」


「だから謝ったじゃん。いちいち殴るなよ、暴力系女子は人気出ねーぞ」


「何言ってるか分からない! いいからゲームするわよ」


へいへい。お嬢様から箱を受け取って中からゲーム機を取り出す。

テレビの前に設置してケーブルやコンセントを挿して……


「もっと前から覗き込めば胸元の谷間見えたかな?」


「うるさい早くしなさい!」


だから痛いってば。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ