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第30話 メイドさんと朝のお仕事

「陽登君、起きてください」


朝、七時。使用人の朝は早い。


「ほらもう朝ですよ」


「勘弁してください。土曜日くらい昼まで寝かせてくださいよ」


土曜の朝はのんびりするのが定石だ。そして朝食と昼食兼用の飯を食べるまでがテンプレ。午後から何しようかなーと考えてぼんやりと過ごし夕方になるのがベストだ。これ完璧。

てことで寝かせろ。ニートの朝は遅いんじゃ。


「お仕事です。一緒に洗濯しますよー」


しかしメイドさんも折れず執拗に肩を揺すって起こしにかかる。

ぐぐうぅ、やめろぉ卑猥な言葉連呼するぞ。


「別に俺は下着見られても平気なんでメイドさんが洗ってくださいよ」


「一応私は陽登君の上司ですよ。先輩に自分の衣服を洗わせて畳ませるつもりですか」


「興奮します」


「早く起きてくださいー」


毛布を奪われてしまった。外気の寒さが肌に襲いかかる。この部屋寒いんだよ。もう五月だというのに寒さに震える程だ。

人が寝る場所じゃないよ……。


「……おはよーごぜーます」


「さ、行きましょ」


ニコッと笑うメイドさん。

その素敵な笑顔やめてイラッとくるから。カップ麺の説明文が見つけにくい側面に記載されている時と同じくらいイラッとする。別に見なくても作れるけど新作のカップ麺は一応作り方を見ておきたいんじゃ~。もっと分かりやすいところに書け。


「あ、シーツも洗うので持ってきてくださいね」


はいはい分かりました。

眠たい目をこすり欠伸をしながら俺はメイドさんの後ろについて行く。


土曜日、待望の休日だ。

久しぶりの学校、この五日間は苦痛の連続だった。が、遂にやってまいりました嬉しい嬉しい土曜日ちゃん。

本来なら両手を挙げて喜ぶのだが俺の職業、使用人に休日なんて関係なかった。こうして朝から仕事だ。


「仕事と言っても住み込みで働いている自分の衣服を洗うだけですからねー。当然のことですよー」


「テメーのパンツをテメーで洗って畳むなんてクソだと俺は思いますけどね」


洗濯機がヴォンヴォン唸りながら回っているのを眺める。

家事なんてニートのやることじゃねぇわ。家事も炊事も何一つしないからこそのニートだ。

なのに……俺も落ちぶれたなぁ。

全盛期の自分が今の俺を見たら嘆くこと間違いない。全盛期の俺、食べたカップ麺の容器すら捨てなかったから。テーブルに放置スタイルだったから。マジだらしねぇマジ最強。


それにしても、さすがは豪邸。洗濯機と乾燥機がそれぞれ二つもある。恐ろしい。

これなら「お父さんのと一緒に洗わないで」と娘に言われても大丈夫だ。それを危惧して設計したのでは?


「メイドさんやお嬢様の下着はどこに干しているんですか?」


「もうすぐ交流戦が始まりますねー」


無視ってレベルじゃないよね。会話のキャッチボールが出来ていない。片方の奴が勝手にベンチプレスしているくらい噛み合っていないぞ。例えイミフ。


「陽登君はもっと紳士になるべきです。そんなんじゃモテないですよ」


「万が一俺が結婚するとしても、こんなクズ男を受け入れて『私がいないと駄目なんだからっ』と言ってくれる女と結婚します。今のままでいいんすよ俺は」


「養ってもらうつもりですか」


ニートが無理ならヒモでも良いですよ。要は何もせずダラダラ、ヘラヘラしたいのだ。

何ならカップ麺の後入れ液体スープ入れる作業すら奥さんにやらせたい。さっきから俺カップ麺のことばっか思い浮かべているな。今度コンビニに買いに行こ。トムヤンクンのやつ超美味いよね。


「もっとしっかりしてください。陽登君はお屋敷で働く使用人なんですよ」


「そういえば俺とメイドさんの洗い物って同じ洗濯機に入れたんすか? だとしたら今頃この中では俺達の下着が絡み合っているかもしれませんねグヘヘ」


「交流戦は是非観戦に行きたいですー」


お互いに無視してるよおい。キャッチボールやめてそれぞれ勝手にベンチプレスしてる。会話のベンチプレスだよ。何だよ会話のベンチプレスって。


「いやいや無視しないでくださいって」


「でしたら陽登君は明日から手洗いでお願いしますね」


「あ、ヤバ、勘弁してください」


安易に下ネタを言っては駄目だと昨日決意したのに忘れていた。ごめんなさいメイドさん許してぇ。


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