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第24話 五日目・ラブレター

今日は金曜日。俺が土曜日、日曜日の次に好きな曜日だ。

休みである土日に繋がる日。今日を乗り切れば明日から休みという明るい未来が見える。

一年間のニート生活で忘れていたよ。金曜日の偉大さが。金曜日パネェ。金曜日マジ感謝。もう毎日ずっと金曜日になればいいのに。でもそれだと土日が来ないじゃないか俺のお馬鹿~。そんな自分が嫌いじゃないのよ~。


「いただきまーす!」


俺のテンションはハイだ。朝から声張り上げちゃうぞコノヤロー♪

今なら全力でイクラちゃんのモノマネが出来るくらいハイだ。快哉と共に「ハァーイ!」と叫べる自信がある。


「火村うるさい」


対照的にお嬢様のテンションは低い。やはり朝は弱いみたい。

馬鹿か貴様。今日乗り切れば明日から二連休だぞ。もっとテンション上げろボケコラァ。胸を膨らませろよこのカスが。そのたわわなおっぱいをさらに膨らませて爆乳へと進化しやがれ。


今朝は洋食のモーニング。ヨーロッパみたいなメニューが並んでいる。

焼きたてのクロワッサンは香ばしくて美味く、ふんわり優しい味のオムレツは美味く、スモークされたレッグハムも美味い。美味いのオンパレード。

サラダすら美味しい。ドレッシングがヤバイ、これかけたらジジイの体毛でも食えそうだわ。普通に美味い。


「すいまっせーん、スープのお代わりもらえますかー?」


「なんで朝からお代わりするのよ」


呆れたように俺を見てくるクソ女。冷めた目をして溜め息吐いてノロノロと口にパンを運んでいる。

朝だからこそいっぱい食べるべきだろうが。作ってくれたシェフに謝れ。


「はいどうぞ」


「シェフあざまーす。この緑色えげつないスープ美味いっすね、何すかこれ」


「そら豆のポタージュスープでございます」


「そら豆かー。俺、ナメック星人の体液と思ってましたよ」


そんなわけありません、ご冗談が過ぎます、と返してシェフのおっさんは笑みも返してくれた。ですよねー、ぶはは。


「それにナメック星人の体液は紫色でございますよ」


「え、そうでしたっけ? 読んだの結構前だから忘れてますわ」


「うるさい、はしゃぐな」


お嬢様は黙ってろ。お前に彼らの凄さが分かるのか。

水だけで生きていけるんだぞ、単為生殖なんだぞ。一人で子孫残せるとかボッチのお嬢様にはありがたい話じゃないか。お前ドラゴンボール集めてナメック星人になれよ。


「……何その馬鹿にした目。使用人のくせに生意気よ」


「不躾な態度ですいませんでしタッカラプト、ポッポルンガ~」


「何よその語尾」


「ポルンガでございます」


「シェフが答えるのかよ!?」


おぉ、お嬢様のテンションもハァーイ!になってきましたね。






車を降り、教室へと向かう。

俺の両手には鞄、自分とお嬢様の分だ。早くも慣れてきた自分の順応性の高さに畏怖する。

同時にムカつく。鞄をハンマー投げするぐらいの職務放棄を見せろよ。仕事も鞄も投げ捨てろ。何気に上手い。山田君、座布団とギャルのパンティー持ってきてー。


「……あ」


昇降口で上履きに履き替えていると隣で雨音お嬢様が小さな声を上げる。

視線を向ければ手紙を持っていた。え、それってまさか、


「ラブレターですか」


靴箱の中に入っていたのだろう白色の手紙。漫画でよく見るやつだ。

にしても本当に実在するんだな。この時代に。

好きな人に想いを告げる為に呼び出す手段として古くから使用されているラブレター。自分の想いを綴った恋文を靴箱に入れるとか頭おかしいと俺は思うがね。テメーがシャイとか知らねぇ、言いたいことあるなら直接言ってこい。


「ふん」


でもラブレターもらえたら嬉しいなぁと思っていたら、お嬢様がその場でラブレターを破り捨て……っておいおい!?


「読まないのかよ」


「キモイ、靴箱に入れんなキモイ」


キモイって二回も言った。何この子恐ろしい。

破り捨てた恋文に目もくれず、お嬢様は上履きに履き替えてスタスタと歩いていく。

なんともまぁ、慣れた手つきと飽き飽きした表情だったな。

性格は野グソ並みにクソなお嬢様だが容姿だけ見れば限りなく美少女だ。一目惚れする奴はいるんだろうね。そして今みたいにラブレター作戦で告白。


「いや、さすがに破り捨てるのは可哀想だろ……」


無残に散ったラブレター。

きっと相手はお嬢様の姿を思い浮かべ、想いを馳せて高鳴る鼓動のまま恋文を書き綴ったに違いない。

その結果がこれだ。送り主はこれを見てどう思うのやら。ラブレター否定派だったけど同情するよ。


「う、うぅ……読んでもらえなかった」


芋助が靴箱の陰からフラフラと出てきて号泣、その場で倒れる。


「いや送り主お前だったのかよ!?」


お前かよっ。なんでだよ!

芋助を起こして頬を叩く。起きろ馬鹿、説明しろ馬鹿!

涙で濡れた頬を叩けばやけに生々しい水の跳ねる音が響く。キモイ、こいつの頬キモイ。


「一昨日もフラれ、直接話すことは不可能と判断。なら次はラブレターだと思って……」


「お前あれだけ言われたのにまだ諦めてないのか」


キモイとかウザイとか話しかけるな等とボッコボコに言われたのにまだお嬢様のことが好きだと。

その健気な姿勢は評価したいけど、いやもういい加減に目を覚まそうぜ。お前の好いている相手、俺から見てもクズだぞ。前にディオガをつける程にクズだ。ディオガ・クズ。上級呪文っぽい。


「なぁハル。俺、キラキラしてるよな……」


「いや全然輝いてねーよ」


「恋をするって素敵だよね。世界がキラキラして見える」


おい話聞け、目を覚ませ。こっちはイライラするわ。


「あぁ、天水さんのビラビラ見たい」


「ただの下ネタじゃねーか!」

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