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第113話 放課後お菓子パーティー

「ここは公式通りに解けるよ」


「そんなことない」


「そ、そんなことあるよっ」


俺のくだらねーボケにうろたえながらも精一杯ツッコミを入れてくれる木下さん。それだけじゃなくて勉強もしっかり教えてくれる。

俺が質問したら答えてくれて、分からない問題は丁寧に解説。あ、ああぁ、めちゃくちゃ分かりやすい……!


「これはこうか?」


「うん、正解だよっ」


素晴らしい。木下さんは教えるの上手い。お嬢様がゴミカスに思えてきたよ。あいつゴミカス、天水ゴミカス雨音。


「終わった!」


放課後の教室、木下さんと二人で課題のプリントに取り組み、そしてすぐに終わった。ヤバイ、木下さんヤバイ。


「ありがとう!」


「は、はいっ」


「最初から木下さんを頼れば良かったわ」


お嬢様に期待したり図書館に行ったのは間違いだった。俺には木下さんがいたじゃないか。もっと早く気づくべきでした。


『一年A組、火村陽登君。一年A組、火村陽登君。至急、職員室まで来てください』


「ひ、火村君呼ばれているよ?」


「どうせ担任のババア直前だろ。こっちはプリント終わらせたんだ、後で堂々と持っていってやるさ」


それより、あなたに話したいことがある。いや謝らないといけないことがある。


「ウチのお嬢様が怖がらせて悪かったな」


学園祭の時、お嬢様はなぜかブチギレて木下さんを威圧してきた。そのせいで気の弱い木下さんのメンタルはズタボロ、下手したら絶命していたかもしれん。


「あ、だ、大丈夫だよ。……怖かったけど、うん、大丈夫、ダイジョウブ……」


「む、無理すんなよ」


お嬢様の名前出した途端、顔を青くしてガタガタ震えているぞ。やはり木下さんにトラウマを与えてしまったか。マジで申し訳ない。笑えないレベルで申し訳ない。


「あいつに何かされたら俺に言えよ。あいつの筆箱に鼻くそ詰め込んでやるから」


「う、うん?」


「そんでもってあっしは指を詰めやす!」


「そ、それはもういいからっ」


面白くないボケを重ねがけしてごっめーん、誠にすいませーん。

そんなわけで償いの意味も込めて木下さんとお菓子パーティーをします。机を埋め尽くすお菓子の数々。


「い、いいのかな?」


「ムシャムシャ……何が?」


「学校でお菓子食べちゃ怒られるよ……?」


「俺は授業中でも普通に食べるぞい」


「だ、だから怒られるんだよっ」


そうなんだよねー。あ、俺は働いて一般の高校生と比べて金は結構持っているのでお菓子を買いまくっている。バイトやっている高校生みたいな? バイトやっている奴らって優越感に浸っているよね。そんなに働くことが偉いことかよ。俺は嫌なんだが。


「大丈夫、お菓子パーティー楽しもうぜ」


ムシャムシャ食べる俺の傍ら、申し訳なさげに俯く木下さんは恐る恐るといった具合でグミを一つ手に取る。そうだ食べろ食べろ、そして共犯になれブハハー。

二人きり、静かな放課後の教室で楽しく談笑する。


「俺と付き合って」


「あ、あの……っ」


「オラオラちゃんと断れよ」


「うぅぅ」


えー、駄目じゃん。この俺がつきっきりで特訓してやったのはどうした。口をパクパク、顔が赤く、目は泳ぐ、あぁ駄目だこれ木下さん緊張している証だ。なんでだよ、俺が告白しても断れるようになっただろうが。初期化してんじゃねぇ。


「仕方ねー奴だな。断れよクソボケ」


「……う、うぅ」


「ったく……期末テストの勉強教えてください」


「い、嫌ですクソボケ」


「あ、ごめんこれは断らないで」


お菓子を献上して頭を下げる。いやホントお願いします、期末ヤバイんですよ。赤点取ったら担任に怒られてお嬢様に馬鹿にされて俺のフラストレーション溜まってあなたを襲ってしまう。それでもいいのかオラァ! あれ、脅迫になってる?


「べ、勉強」


「放課後に少し教えてくれるだけでいいから。頼んます」


「う、うーん……」


「お礼になんでも一つ言うこと聞くから」


「なんでも……?」


そうだなんでもだ。なんでも叶えてやろう。俺がこんなこと言うのは非常に珍しい。まさに千載一遇の大チャンス、とてもお得でっせ。


「いいよ」


「マジか!」


「なんでもだよね?」


「お、おう?」


あれ、木下さんがやけに饒舌だ。こちらをじっと見て何かを考えている。え、何を言うつもり? とんでもない命令をするつもりなのでは……? 全裸で校庭を一周しろとか!? それは嫌……いや、全裸で一周なら俺たぶん出来る。


「じゃあ……て、テスト終わったら一緒に……で、で……で」


「で?」


「っ、あ、遊びに行こう!?」


「? ああ、いいよ」


いいけど……え、そんなお願いでいいの? もっと無理難題言うと身構えたのに肩すかし食らった。てゆーか遊びに行くって寧ろ俺が嬉しいし、てゆーか木下さん顔真っ赤に戻っているし。さっきの真顔は何だったんだよ。


「じゃあ明日からよろしく頼む」


「う、うんっ」


木下さんと握手を交わして契約成立。これで期末の勉強は安泰だ。木下さんに教えてもらったら赤点回避など余裕だぜ。しかもテスト後は一緒に遊べる。木下さん尽くしではないか! 最っ高。


「火村君」


「えへへ~、木下さんなんですか~?」


「わ、私は呼んでいないよ……」


え、じゃあ誰……あ、


「火村君、さっきの呼び出し無視したよね」


「あなたは……」


「しかも何そのお菓子の山は」


「ババア直前……」


「木下さんは離れてね、危ないから」


後ろの壁にまで下がった担任は鬼の形相で俺をロックオン、猪の如く突進して俺の顎を……!?


「お前いい加減にしろやぁ!」


「ぐへぇ!?」


担任の猛ダッシュアッパーカットを食らいながらも、テスト後のことを考えてニヤニヤする俺であった。

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