団体行動してるとみんなと離れがたい時があるものです
「おはよう、マー兄」
「おはよう、昨日は居残りお疲れ」
この数日で、朝にお隣さんで幼馴染の弟分、香駒純樹が迎えに
来るのは習慣になっていた。
「なんか中学に戻ったみたいだな」
「なんだよ、変なこと言うなよ」
小柄な純樹はオレに頭を撫でられるのをイヤがる。
<ソルブレイド・オンライン>でこんな日常を取り戻せるとは思わなかった。
オレは久々に興奮を静かに抱えていた。
決戦の日、野球の試合の日。
いつもより授業がよくわかったり、人と話すのが妙に楽しかったりした。
受動機能が研ぎ澄まされているというか、なにやら鮮明なのだ。
教室に入ってもレオーネ・シルヴァーニが、軽く手を挙げてあいさつして
くるのに、らしくなくハイタッチしたり。
特別な日であることに、体や心が準備していく。
久々の感覚だった。
「さて、諸君。いよいよ<旅団戦>当日となった。
隊長の参加は未だ不明だが、各員準備に入ってくれ」
放課後、部室に全員がそろった時点で、金田部長が指示を出す。
さっきまで、趣味のお茶とお茶菓子をほっこり楽しんでいた人とは思えない。
「香駒とレオくんはみんなの夕飯の買いだしを。
桂間くんは角野くんを連れて顧問の歩浜先生に夜間活動申請を。
顧問への紹介と申し送りを兼ねてお願いするよ」
「角野さん将棋部に入部したの?」
「はい。一緒にいられるのは残り少ないですが、大佐殿たちには教わる
べきものがあると思いまして…」
「ムーちゃん…」
次の瞬間、角野さんが桂間先輩にすっぽりと包まれた。
夏休み前のこの時期だ。
確かに、三年生が部活に来れるのは残りわずか。
「と、言っても、運動部とちごて、文科系は卒業まで在籍者多いんよ」
プハっと桂間先輩が顔を上げる。
-野球部引退早~い。オレは野球部しか経験ないから、三年生の秋の
隠居具合が当たり前だと思ってた。
「ところで、飛騨くんは二十時十五分前にログイン後、駐機場に集合だ」
「え?」
数秒の沈黙が流れる…。
「そうだった~っ!オレだけ家か~っ!!」
「悪いね。飛騨くん。そのうちマシンは用意するよ」
「やーい、仲間ハズレ」
「飛騨~、また、今度ディナーしような」
純樹にはアイアンクローをかけておくとして、レオには『イイね』で返答だ。
「じゃあ、みなさん後で…」
テンションダダ下がりで将棋部の部室を出て、階段を下りていくと、
偶然、黒木先輩と出会った。
オレよりコワモテ、高身長の黒木廻。
三年生で現在のパソコン部の部長だ。
中学時代のライバル校の元投手で、よく対戦していた。
「なんや、今から出勤かいな」
「いえ、家に帰るとこっスよ」
「何?お前、今日の<旅団戦>参加せぇへんのかいな」
「自宅でアクセスします」
「部室にマシンないんかいな。そらまた難儀やな。お疲れさん」
「なんとも気の抜けることですよ」
「まぁ、今回はコテンパンにやったるさかい。気ぃ抜いてる場合とちゃうで」
「コテンパンなんて、最近聞かないっスよ」
「なぁ、飛騨。せっかくやからオープンチャットで戦らへんか」
「それは上官の判断に任せますよ」
「オレの方からは一方的に話すさかい、チャンネル開けとけよ」
「いい情報源になってくれるなら歓迎っス」
「いいもん見せたるさかい楽しみにしとけ」
「また、ネタバレしたら赤弓削くんに怒られますよ」
「アカのことは言わんでええ。ほな、戦場で会おか」
「かかか…アガってキタで!」
黒木先輩は悠々と階段を上がっていく。
-黒木先輩、今夜はきっと驚くことになりますよ。
野球の時を思い出し、オレも静かに昂ってくるのだった。
続けてがんばりました。
ここまでお読みいただきましてありがとうございます。
評価もいただいてありがとうございました。
<ソルブレイド・オンライン>の<旅団戦>は午後八時
から開始となります。
昔、やっていたネットゲームのイベントも午後八時からで
夕飯後にちょうどよい感じでした。
<旅団戦>は専用サーバで行われるので、エントリーした
チームはログインすると、戦闘開始までカウントダウンが
始まっている状態です。
もう、ワクワクですよね。
さて、次回とうとう<旅団戦>ログインです。
引き続きよろしくお願いします。




