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俺をエースと呼ばないでくれ  作者: たちまちいさか
36/40

団体行動してるとみんなと離れがたい時があるものです

「おはよう、マー(にぃ)


「おはよう、昨日は居残りお疲れ」


この数日で、朝にお隣さんで幼馴染の弟分、香駒純樹(かごま あつき)が迎えに

来るのは習慣になっていた。


「なんか中学に戻ったみたいだな」


「なんだよ、変なこと言うなよ」


小柄な純樹はオレに頭を撫でられるのをイヤがる。


<ソルブレイド・オンライン>でこんな日常を取り戻せるとは思わなかった。


オレは久々に興奮を静かに抱えていた。


決戦の日、野球の試合の日。


いつもより授業がよくわかったり、人と話すのが妙に楽しかったりした。


受動機能が研ぎ澄まされているというか、なにやら鮮明(クリア)なのだ。


教室に入ってもレオーネ・シルヴァーニが、軽く手を挙げてあいさつして

くるのに、らしくなくハイタッチしたり。


特別な日であることに、体や心が準備していく。


久々の感覚だった。


「さて、諸君。いよいよ<旅団戦>当日となった。

 隊長の参加は未だ不明だが、各員準備に入ってくれ」


放課後、部室に全員がそろった時点で、金田部長が指示を出す。


さっきまで、趣味のお茶とお茶菓子をほっこり楽しんでいた人とは思えない。


「香駒とレオくんはみんなの夕飯の買いだしを。

 桂間くんは角野(すみの)くんを連れて顧問の歩浜(かちはま)先生に夜間活動申請を。

 顧問への紹介と申し送りを兼ねてお願いするよ」


「角野さん将棋部に入部したの?」


「はい。一緒にいられるのは残り少ないですが、大佐(たいさ)殿たちには教わる

 べきものがあると思いまして…」


「ムーちゃん…」


次の瞬間、角野さんが桂間先輩にすっぽりと包まれた。


夏休み前のこの時期だ。

確かに、三年生が部活に来れるのは残りわずか。


「と、言っても、運動部とちごて、文科系は卒業まで在籍者多いんよ」


プハっと桂間先輩が顔を上げる。


-野球部引退早~い。オレは野球部しか経験ないから、三年生の秋の

 隠居具合が当たり前だと思ってた。


「ところで、飛騨くんは二十時十五分前にログイン後、駐機場(ハンガー)に集合だ」


「え?」


数秒の沈黙が流れる…。


「そうだった~っ!オレだけ家か~っ!!」


「悪いね。飛騨くん。そのうちマシンは用意するよ」


「やーい、仲間ハズレ」


「飛騨~、また、今度ディナーしような」


純樹にはアイアンクローをかけておくとして、レオには『イイね』で返答だ。


「じゃあ、みなさん後で…」


テンションダダ下がりで将棋部の部室を出て、階段を下りていくと、

偶然、黒木先輩と出会った。


オレよりコワモテ、高身長の黒木廻(くろき めぐる)


三年生で現在のパソコン部の部長だ。


中学時代のライバル校の元投手で、よく対戦していた。


「なんや、今から出勤かいな」


「いえ、家に帰るとこっスよ」


「何?お前、今日の<旅団戦>参加せぇへんのかいな」


「自宅でアクセスします」


「部室にマシンないんかいな。そらまた難儀やな。お疲れさん」


「なんとも気の抜けることですよ」


「まぁ、今回はコテンパンにやったるさかい。気ぃ抜いてる場合とちゃうで」


「コテンパンなんて、最近聞かないっスよ」


「なぁ、飛騨。せっかくやからオープンチャットで()らへんか」


「それは上官の判断に任せますよ」


「オレの方からは一方的に話すさかい、チャンネル開けとけよ」


「いい情報源になってくれるなら歓迎っス」


「いいもん見せたるさかい楽しみにしとけ」


「また、ネタバレしたら赤弓削(あかゆげ)くんに怒られますよ」


「アカのことは言わんでええ。ほな、戦場(あっち)で会おか」


「かかか…アガってキタで!」


黒木先輩は悠々と階段を上がっていく。


-黒木先輩、今夜はきっと驚くことになりますよ。


野球の時を思い出し、オレも静かに昂ってくるのだった。

続けてがんばりました。


ここまでお読みいただきましてありがとうございます。

評価もいただいてありがとうございました。


<ソルブレイド・オンライン>の<旅団戦>は午後八時

から開始となります。


昔、やっていたネットゲームのイベントも午後八時からで

夕飯後にちょうどよい感じでした。


<旅団戦>は専用サーバで行われるので、エントリーした

チームはログインすると、戦闘開始までカウントダウンが

始まっている状態です。


もう、ワクワクですよね。


さて、次回とうとう<旅団戦>ログインです。


引き続きよろしくお願いします。

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