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俺をエースと呼ばないでくれ  作者: たちまちいさか
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要注意、見つめるだけで犯罪者にされることもある

「今回の<旅団戦>だが、飛騨くんは自宅の機材を使ってもらいたいのだよ」


「仲間はずれ?」

香駒純樹(かごま あつき)が口元に手を当ててわざとらしく驚く。


「ちゃう、ちゃう。単純にパソコンが足りひんだけやん」

桂間千成(かつらま ちなり)先輩が純樹に手の甲でツッコミを入れる。


「昨晩、みんなに指定したアドレスにアクセスしてもらったのは各家の接続速度などを見るためだったんだがね。飛騨くんの自宅だけ異常に早いんだよ」


「なんか父親が去年から出向した海外の会社とネット会議するとかで、家の環境を触りまして…」

「とても、それが理由の速度と思えないレベルなんだけどね」


「今回は静御(しずみ)くんの環境が開いているので一人は行ける。一旦、角野(すみの)くんはそちらに入ってもらうとしよう」

「了解です。大佐(たいさ)どの」

角野さんは敬礼する。


-どうやら彼女の中では、金田部長のことは『大佐どの』に落ち着いたらしい。


将棋部(うち)の環境より速いのは飛騨くんの家だけだ」


金田部長の手による機材は低予算ながらかなりのクォリティのはずだ。

自分の父親はシステム会社勤務だが、『何する人か』かなり気になった。


「昨日、話していたアンカーフックのシミュレーターができているので、さっそく試してほしいのだよ」

「金田部長って、いつ帰っているんスか?」


「そんなに時間はかかっていないよ。何せ<ソルブレイド>は、デベロッパーに解放されたコンテンツが豊富にあるからね。訓練ツールはイチから作る必要がない」

金田部長は眼鏡クイをする。


「それに私はちゃんと家に帰っているし、母親の作るご飯も食べてるよ。モリモリとね」

わざとらしいポーズまでつけて宣言する。


「まあ、体調には気を付けてくださいね」

昨日、隊長-玉城宿理(たましろ しゅくり)から話を聞いたばかりなので、周りのみんなのことも心配になる。


「では早速ではあるが、まずはアンカーフックの訓練を開始しよう」

金田部長がパソコンの前で何かの操作を始めている。


「飛騨くんと角野くんは自機に乗ったら駐機場(ハンガー)で待機してくれ」


オレたちは早速ログインする。


『やっとこのアバターにも慣れました』

「こっちもだ。昨日の今日だしね」

アバターでも同じことをやっているが、角野さんはメガネのツルを両手で挟むように触っている。

緊張するとこうするクセがあるらしい。


「じゃあ、後で…」

『はい。がんばります』

角野さんのアバターが床を蹴って、フワリと自機の方に向かう。


オレが愛機の<クタナ・ハルファス>に近づくと、執事姿の整備AIソルトさんが話しかけてきた。


「ご主人様、昨日のオーダー通り兵装を交換してあります」


角野さんと相談して、『支援のない数分間』対策に兵装を変更することにした。


射角が斜めだが、側面の兵装に5連装グレネードランチャーがあった。

左右の兵装ポットに装備すれば10発まで弾を装填できる。


これで、光学兵器阻害(ビームリフレクター)回復弾(リカバリーブレット)が使用できるようになった。


角野さんとお互いを支援射撃できればちょうどよいので、相談してオレの<クタナ・ハルファス>と彼女の<クタナ・フォラス>に装備することにしたのだ。


衝突攻撃(アサルト)>をするには、敵の方向を自動追尾するためにロックオン武器が必要になる。

オレの場合、元々は遅延型ホーミングミサイルを左右の兵装ポットに装備していた。


こちらを5連装グレネードに差し替えたので、胴体下の装備をホーミングレーザーに変更する。

反応と射速の速い30mmバルカンが好みだったのだが仕方ない。

ホーミングレーザーはエフェクトはキレイなのだが、()の遅い欠点がある。


角野さんの<クタナ・フォラス>は側面の兵装ポットが多いので、そこに遅延型ホーミングミサイルを装備することで、胴体下の装備を変更する必要がなかった。

少しうらやましい話だ。


「さて、状況を説明しよう」

ボイスチャットに金田部長の声が入る。


「キミたちは現在、作戦のB地点。敵の艦載機展開予想位置…つまり敵地の中にいる」


「一人か、もしくは二人で数分間、<ガドール・レラジェ>からの支援射撃のない状態だ」

ここまでは先日のブリーフィングの時に聞いた話だ。


「<ガドール・レラジェ>が再発艦して、数十秒でこの地点を最大速度で通過する訳だが、その前触れとして、支援射撃が再開される」


「今回、<ガドール・レラジェ>には荷電粒子砲(バスターランチャー)を装備している。敵艦載機を一掃して突入路を作るためと、飛騨くんと角野くんに<ガドール・レラジェ>の進路を示すためだ」


-なるほど、それは妙案だ。<ソルブレイド・オンライン>で味方の攻撃は当たらない。

<ガドール・レラジェ>のガイドレーザーのようなものだ。


「これが通過10秒前の合図となる。これを見たら急いで荷電粒子砲(バスターランチャー)の射線に入ってくれ」


「まずは<ガドール・レラジェ>の動きを体験してもらおう」


後方から荷電粒子砲(バスターランチャー)が発射されたので急いでその射線軸に機体を移動させた。

と、その横を<ガドール・レラジェ>らしい機影が一瞬で通り過ぎて行く。


「え?」

「ぴ?」


「速すぎっス!」

「まあ、初見はそんなものだろうねぇ。続けていってみよう」


このシミュレーターだが、リアルなことに荷電粒子砲(バスターランチャー)が発射位置は少しずれている。

射線軸で機体を待ったが、目視で真後ろから来る<ガドール・レラジェ>らしき光を見たと思ったら、次の瞬間には通り過ぎていた。


「くう~っもういっちょ!」

「ひわっ!」


とにかく、<ガドール・レラジェ>をこの目で見ないと気が済まない。

-慣れるしかないのか。


次のトライでも、アンカーフックを打つまでもなく見送ってしまった。


「ぬわ~速い!」

「はうううっ!」


-ん?角野さんの<クタナ・フォラス>が全く動いてなかったような…。


「角野さんドンマイ。とにかく慣れよう」

「ほわ~っ!」


-さっきから角野さんの変な声が聞こえるがなんだ?


「どうした?角野さん」

オレがボイスチャットで再び呼びかける。


『ち、近いです。ダメです。ダメです。飛騨先輩』

「あのさ。何やってんの?飛騨先輩」


後ろで突っ込んでいる純樹のジト目が目に浮かぶ。


「オレが何かしてる前提かよ」

『見つめられてます。緊張で何も手につかないです』


「ああ、そっち…」


そういえば、彼女と同時にプレイするのは今日が初めてだった。


「これは問題だねぇ」

-なんとも意外なところに問題があったものだ。


画面下にアバターが表示表示されているだけなのだが、なまじそっくりに作られているために彼女の中ではオレと目を合わせていることになるらしい。


-アバターの表情や口元は『言葉に合わせて適当に表示』されているだけなんだけどなぁ。


『私、目を見られるとダメなんです』


そういえば、メガネのツルを両手で挟むクセは、目をそらすのを隠しているようだった。


『それに…この状況(シチュエーション)萌えすぎです!心臓もたないです!』


-燃えるじゃないのか?文字の誤変換としておこう。


「ふむ、もともと角野は操作系を触りながら文字チャットしているので手間が多い。乱戦になると難しいぞ」

隊長-玉城宿理(たましろしゅくり)がため息交じりに話しかけてくる。


「加えて、ボイスチャット時に画面に表示される飛騨くんのアバターで彼女が取り乱しているからねぇ」

面白がりそうなところだが、金田部長も真剣に問題としてとらえているようだ。


「よし、飛騨くんのアバターにはマスクをかぶってもらうとしよう」

「隊長、楽しんでません?」


「そちらは静御(しずみ)くんに頼むとして、一旦、目元を隠してみようか」

金田部長が何やら操作している。

普段『ひこうき』を描くほどの画才だ。


玉城先輩と純樹のクスクス笑いが聞こえる。


不安を感じて、ヘッドマウントディスプレイのバイザーを上げて、金田部長の手元を見た。


オレのアバターの目元に黒い横棒が…。


静かだと思ったら、千成ちゃんは笑いすぎて絶息状態だ。


「大佐どの、黒横棒(コレ)、落ち着かないです」

「なに、すぐに慣れる」


「それ!犯罪者ですから!」

長くお待たせしてしまってすみません。

ここまでお読みいただきまして

ありがとうございます。


さて、<旅団戦>迫って訓練回です。

難産でした。まだ手直しするかもです。


<ソルブレイド>はユーザーに解放された開発ツールがあります。

更にそれを利用して他人が作ったツールをポイントを支払って買うこともできます。


金田部長ほどになると、これで、ポイント稼ぐくらいしてますね。


静御がアバターや整備AIをイチからデザインしてるのもツールを利用してます。


さて、次回は訓練の続きと事件発生です。


引き続きお付き合いくださいませ。.

なにとぞよろしくお願いします。

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