今さらな感じなのに意外に気付いてないものもある
「改めて、歓迎するぞ。飛騨くん、角野。チーム<超急戦>によく来てくれた」
全員がテーブルのまわりに着席した。
まだ三日目だが、この光景にも慣れてきた自分を感じる。
ホワイトボードの前に立つ玉城宿里の隊長ぶりにもオレは順応しているらしい。
「それにしても金田。私に無断で<赤>と直接対決とは…。勝ったから良かったようなものの」
「まあ、新たに『盾』と『持ち手』を得られたことで、帳消しにしてくれたまえ」
玉城先輩と話す金田部長、確かにちょっとセリフ回しが変だ。
「誠に僥倖。確かにそれに関しては文句のない結果だな」
-僥倖って、いつの時代の人だよ。
「今日、集まってもらったのは他でもない。いよいよ四日後に控えた<旅団戦>に向けて、作戦の説明と、各員の課題の確認だ」
「それと、角野には後でプレイを見せてもらうぞ」
「了解です。隊長様」
-結局、それに落ち着いたのか。
でも、年上認定はしてないんだな。隊長がんばれ。
「では、作戦説明を。金田」
そこまで話すと、玉城先輩は着席する。
「さて、作戦名『スリングショット』の詳細についてだが…」
変わって金田部長が前に出た。
さっそくホワイトボードに向かってペンを持つ。
やっぱり、絵は描くのか。
「今回の<旅団戦>の相手、<赤の旅団>の旗艦<ハルバルガエナストス>の守備力は推定八千万ポイントだ」
「まずは各員、最大速度で直進。特に飛騨くんと角野くんは敵の艦載機が前に出るまでにとにかく少しでも前進だ」
「船足を強化するため角野機<クタナ・フォラス>には、現在、新しい圧縮炉を製造中だ」
「敵艦載機の予測射程圏がA地点、我々の目標到達点がB地点だ」
金田部長がホワイトボードの旗艦らしい絵の横にひこうきを描き足す。
「目標とするB地点は時間と距離などで計算した最も効率の良いスリングショットを実行できる地点だ」
「旗機<ガドール・レラジェ>はA地点まで前進したら、四枚盾を展開して、飛騨機、角野機を援護する。旗機の護衛は私と桂間機だ」
「飛騨機か角野機がB地点を突破したら、旗機はイジェクトし、再発艦する。この際に突入用ブースターを使って最大船速する」
「この時、旗機がリスタートで出現するのはC地点。そのまま前進してB地点を通過する」
ホワイトボードに3つめのひこうきを描き足し『C』と書く。
新ルールの適用で、チームの一番先頭の機体と発艦元の中間点がリスタート位置になった。
確かに、このルールならA地点より前から苦労なく前進できる。
突入用ブースターは、大型艦載機からの使える装備だ。
<旅団戦>では定番装備で、巡洋艦クラスも使用することが多い。
だいたいは<旅団戦>後半のクライマックスに『全艦突入!』の大号令で使用される。
「この際に合流できるなら、飛騨機、角野機にはアンカーフックで旗機にぶら下がって欲しいのだよ。飛騨くんは<ク・ラヴ ・バラム>の腕にかけられるぐらいだから不可能ではない…だろう?」
「練習は出来ますか?」
「幸い今日は正規の操舵士がいる。後で合わせてみるとしよう」
「計算では、B地点突破で十二分、A地点キープで十七分で敵旗艦に到達できる」
「およそ、八分から三分で旗艦を沈めることになるね。まるで料理番組ような忙しさだ」
金ちゃんさん先輩のメガネクイだ。
「当然、敵の艦載機や巡洋艦クラスも展開している中を突破するので、ピクニックとはいかないがね」
B地点付近に線を引く。
この中は敵の艦載機がすでに前進している領域だ。
「あと、問題なのは、旗機のイジェクトから再発艦までの間、飛騨機、角野機に支援がない事だね」
確かに超電磁砲の遠距離支援射撃がないのは痛い。
昨日覚えた回復弾の遠距離支援も受けられない。
「これに関しては、踏ん張ってくれとしか言えないが、やってもらえないか?」
「まあ、やるしかないんでしょうね」
艦隊戦で開始直後に敵陣深くに飛び込んだ経験などない。
タコ殴りになるのは必至だが、どうやって身をも守ったものか。
少し提案もあるので、後で相談しよう。
「対艦戦闘についてだが、以前説明したように、防御力の弱い側面対し、すれ違い様に行う」
「現在、二十連射可能な超電磁砲を開発中。明日完成予定だ」
突入に付いて行って、<防御無効>を入れられたら、より確実性が上がる。
「これについてはシミュレータを作っておいたので、香駒は試しておいてくれ」
「了解です」
「あと、レオくんにはアンカーフックと二枚盾の能動的防御を覚えてもらう」
「え?オレに!」
「付け焼刃ではなかなか上手くいかないだろうが、念のためだ」
「あ~、よろしく飛騨」
明らかに嫌がっているレオーネは見た目、美女が台無しな感じになっている。
「まあ、気楽に行こう」
「最後にコールサインを確認する。メンバーも増えたしな」
「私たち旗機は『オーブワン』。乗員はレオと香駒」
「金田は『ゴールドワン』。桂間は『ナイトワン』ここまでは変更なしだ」
それぞれのメンバーがコクリとうなづいた。
「そして、飛騨くんは『ワイバーン』だ」
そういえば何になるのかと気になっていた。
-悪くない。
「初めチェスにちなんで『ルーク』にしようかと思ったが、キミは常に敵陣に切り込んでいるからな。『飛』と『龍』にちなんだ」
「あざっス」
「角野は『ユニコーン』だ。こちらも『ビショップ』ではなくだ。『角』と『馬』で『ユニコーン』。どうだ?」
「最高です。ワイバーン。飛騨先輩にピッタリです」
-え、そっち?ほんとかみ合わないな。この二人。
「んん、静御は今回、留学中で欠席だ」
-あ、隊長、残念がってる。
「『ユニコーン』いいね。よかったね角野さん」
『私のことはいいんです。恐縮です。』
「『ユニコーン』って、カッコイイだけじゃなくちょっと可愛い感じもあるし」
『可愛いなんて。そんな、そんな』
「ぷしゅー…」
緊張が極みに行くと彼女はメガネのツルを両手で支えて、顔を隠すようにする癖があるらしい。
-ほらほら、ちゃんと喜んでますよ。
玉城先輩の眉の角度が、何だかさらに不機嫌になったような。
「そういえば、みんな将棋の駒の一字が入ってるなんて、出来すぎっスね」
ちょっと空気を換えようと、オレは話題を変えることにした。
みんなが顔を見合わせた。
-あれ、今…驚いた?
「ほんまや、気付かんかった」
「いやいやいや、それはないでしょ」
「本当だ。気が付かなかったぞ」
「隊長はさっき符号したコールサイン言ってたっスよね!」
ここまでお付き合いいただきまして
本当にありがとうございます。
人物出そろいまして、やっと
お話がまわり始めてます。
ところで、一旦看板をSFから恋愛に
かけかえました。
人の話が多いせいか、ラブコメと
してお楽しみいただいているみたいです。
なろうってほんとアドバイスまで
していただけるんですね。
ありがたいです。
次回は角野ムーちゃんの秘めたる力
発揮の回です。
今後ともなにとぞよろしく
お付き合いくださいませ。




