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俺をエースと呼ばないでくれ  作者: たちまちいさか
23/40

どうしても緊張する相手の基準って人それぞれなわけで

「おはようございま~す」


文化系のあいさつは面白い、もう夕方なのに朝仕様だ。

翌日、将棋部の部室に行くと、誰もいないのか静かだった。


と、金髪で眉目秀麗を絵にかいたような美女がテーブルのところに座っている。

瞳の色も緑かかっていて完全に外国人だ。


「ちわス。えと、銀嶺(しろみね)先輩っスか?」


銀嶺静御(しろみね しずみ)という名前から、勝手に日本人だと思っていたが、どうやら違うらしい。


先輩からは、昨晩、思った通り、アバターを設定変更したいとメッセージがあった。

学生手帳の写真を送ったりといろいろさせられたが、留学先から帰るというのは聞いていなかった。


「は、はじめまして、飛騨です。二年です」


これだけの美人を前にすると、さすがにオレも緊張する。


銀嶺先輩はこちらを一瞥すると、フイと目をそらした。


-うお、クールビューティ…。

-マゾなら大喜びだろうが、体育会系にはちと腹立たしい対応だ。


-あれ?でもなんか、デジャヴを感じる。

以前もどこかで同じ目にあったような。


改めて見ると、銀嶺先輩は思っていたよりガッシリしていた。


いや、別にいやらしい目で見てなんてないが、胸なんか妙に浮いた感じが…。


-コレ…男だ。


「もしかして、シルヴァーニ…くん?」


顔をよく見ると、同じクラスのレオーネ・シルヴァーニだ。

クラスで一人だけ外国人なので、目立っている。


すぐ隣の席なので、編入後すぐに話しかけたが、さっきの感じで目をそらされたのだ。


「飛騨くん、これには事情があンだよ」


なんかスゴイ迫力でこっちにやってきた。


「黙っててくれよ。な?な?罰ゲームみたいなもんなンだよ」


女装で両腕をつかまれる。

見た目にスゴイ美人だが、やっぱり怖い。


「その格好でつかまれると、なんか怖い!とにかく放せ」

「だから騒ぐなって言ってンだろ」


「レオっち、着替えすんだ?」

スターンとドアを開けて、部室に入ってきたのは桂間先輩だった。


「取り込み中?じゃま!?」

「違います!」

お花畑が全開だ。


「どういうことっスか?」


レオーネは今にも泣きだしそうな顔をして、イスに座って落ち込んでいる。


「いや、女装(コレ)な、静御(しずみ)ちゃん指令なんよ」

「ウチの姉貴、いつもこンな感じでさ」


「姉弟?だって名前が…」

「姉貴は日本名で通しているからな」


「オレも銀嶺玲央(しろみね れお)って名前あるンだけど、名前とのギャップで小さい頃いろいろあって…」


「両親と相談してカタカナ名前にしたンだよ。その方がいろいろ楽になった」


静御(しずみ)ちゃん指令って?」

「なんかオレが姉貴の地雷を踏ンだらしくって、留学中、将棋部に入る時はこの制服を着ろと言われてさ」


「ウイッグはウチが貸してあげてん。化粧もウチやで綺麗やろ」

「綺麗にしてどうするんです?」


「その方がおもしろいやん」

-あんた鬼や。


「お帰り、私之彼女(マイプレシャス)!」

なんか金田部長が『金ちゃんさん先輩』で部室に入ってきた。


「いやコレは…」

「わかっているよ。レオくんだろ」

-あんたも鬼や。


「静御くん、今回はレオくんに何を悟らせたいだろうねぇ」

「悟る?」


「ウチの姉貴、何かを伝える時、言葉で言わないンだよ」

「ウチも理由は知らないんよ。ただ着替えの面倒見たってとは頼まれてな」


「ホント難しくってさ」

レオーネは頭を抱えてしまう。


「おはようございます」

そこに、純樹と角野さんが入って来る。


「姫が…姫がいらっしゃいます」

角野睦美(すみの むつみ)のスイッチがなんか入った。


「キミ、誰?」

「だ…わた…」


『緊張で声になりません。私のお姫様。私、角野睦美です。一年生です。』

「オレ、男だよ。角野(かどの)さン」


「…に、偽者?影武者?」

「誰がだよ」


「それでも、今のレオっち。静御ちゃんそっくりやで」


「これが本物の静御ちゃん」

桂間先輩がスマホで以前撮った銀嶺先輩の写真を見せている。

-偽物、本物って、酷いなあんたら。


「姫です!私のお姫様です」

「あのなぁ、姉貴はそういうの嫌いだから本人には言うなよ」

角野さん、写真相手でも何か発動させている。


「レオーネくんはそのままの恰好ってことだよな」

「レオでいいよ。香駒にももう見られたしな」


「ボクも最初はビックリしたよ。レオ先輩が目覚めたかと思って」

純樹もそこそこ言いやがる。


「お前…射撃ン時、傾けるぞ」

「ごめんなさい。お願いします」


「レオ…くん、射撃って」

「『くん』もいいって。その代り、こっちも飛騨って呼ぶからな」


「オレがオーブワンの操舵士(パイロット)だよ」

-なんだよ。普通に話せるやつじゃないか。


「そういえば、なんで教室で声かけた時、目をそらしたんだ?」

「オレ、お前みたいにデカイやつ苦手なンだよ」

-なんだそりゃ。


「デフォルト、コワ面…」

「純樹。今度アンカーで引き回す」

それを聞いた金田部長がメガネクイをする。


「いいね。その案、試してみよう」


「と、言っても、引っ張られるのは飛騨くんの方だけどね。この後のブリーフィングで詳しく話すよ」


そこに、元部長で隊長の玉城(たましろ)先輩が入ってきた。


「諸君。おはよう」

昨日、対局があったので一日ぶりだ。


「私が留守の間に何があっただと?」

金田部長があらかじめ報告を入れていたのか、いささか不機嫌だ。


「姫です!私のお姫様です」

手当たり次第か角野さん。


「誰だ。キミは?」

「私、角野睦美(すみの むつみ)です。一年生です」


「あれ、話せるの?角野さん」

『はい。私、緊張するのは年上の方だけなので。』

角野さんは、昨日よりかわいくグレードアップしたスマホのメモ機能に素早く書いて見せた。

-この内容、見せられねぇ。


「三年の玉城宿理(たましろ しゅくり)だ。将棋部のOGだが、チーム<超急戦(ちょうきゅうせん)>の隊長だ」


「オージー?…OG!ということは年上ですか?」

「三年だと言っているだろう。角野」


「中学三年かと…」

「ふぐっ、なかなか無礼な奴だな。面等向かって言われたのは久しぶりだ」


みんな気を使っているんですよ。

-いや待て、オレも二日前に言ってるんですが、聞いてないことになってますよね?隊長。


「私より少し背が低いので、まさかと思いました」

「んな!」


「な、なな、なにを言っているのだ。気のせいだ」

玉城先輩は角野さんの前に立つと胸を張っている。

-いや、ちょっと背伸びしてないか?隊長さん?


「玉城先輩…なんかしっくり来ません」

角野さんが身長の件は気もにせず何やら考え込んでいる。


「下のお名前は?」

宿理(しゅくり)ちゃんやで。かわいいやろ」

桂間先輩が後ろから抱きついた。

その拍子に玉城先輩のかかとがついて、ドングリの勝敗があきらかになる。

-ご愁傷さま。隊長。


「宿理先輩。うん、いいですね。宿理先輩にします」

「だから、私のことは隊長と呼べ、角野~!」

玉城先輩、ちょっと涙目だ。

ここまでお読みいただきまして

ありがとうございます。


さて残念系出揃いました。

次回はミーティング回です。

チームメンバーの秘密が明らかに…


引き続きお付き合いくださいませ。

なにとぞよろしくお願いいたします。

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