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俺をエースと呼ばないでくれ  作者: たちまちいさか
22/40

幼馴染みの兄貴分はもう歩き初めててやっぱカッコイイ

今日は<ソルブレイド・オンライン>の対戦で、部活をやったくらいの時刻まで学校にいた。

こんな感じは野球部を辞めてから久しぶりだ。


晩飯までに習慣になっているジムへ行き、リハビリとプールトレーニングをしていると、野球部の主将(キャプテン)、幼馴染みの塚地駆琉(つかぢ かける)と久しぶりに出会った。


「久しぶりだな。マサ」

主将(キャプテン)。お久しぶりです」


「オレは今日は整体だよ。調子どうだ?」

「筋力は戻ったみたい…です。少し投げてみたいくらい」


「オレの顔見たせいだ。敬語いいぞ。焦らず行こう」

屈託なく笑う彼が幼馴染みの顔になった。


(つか)ちゃん。久々だ…」

「まあな」

塚ちゃんはケガをして以来、膝の整体を続けている。

肘を痛めたオレにこのジムを薦めてくれたのも塚ちゃんだ。

このジムには専門の理学療法士がいて、ゲガからの復帰を手伝ってくれる。


スポーツをしていると、ケガはつきものだが、したくてするヤツなどいない。


名選手の格言と経歴を見ても「活躍するにはケガをしないこと」とある。

しかし、オレは最終的に運だけがそれを左右していると思う。


オレも肘に違和感を感じたのは甲子園当日だったし、ケガを気のせいだと思いたい気持ちも強かった。


「金田のとこに世話になってるらしいな」

塚ちゃん情報早いな。


「パソ部かと思ったら、将棋部だって?あいつ相変わらずだな」

「なんだかいろいろあったみたいだよ」


「あいつ小学生の時から英語塾に行っててさ。『エリートだ』なんて思ったりしてたんだけど、やる事にはちゃんと理由があってな」


「そん時はおばあちゃんがイギリス人で。んで、じいさんが亡くなって淋しそうだから、ちゃんと母国語でお話ししたかったんそうだ」


「それで『マイプレシャス』とか言ってたんスね」

「それはネタだ。出所、映画にもなったイギリスの本だよ。『愛しい人』とかいう意味だって言ってたぞ」

なんか、オレも小さい時に観たような。


「同じ将棋教室に行ってたこともあって、中学でもよく話してたんだが、あいつ中三ん時、突然パソコンでプログラムするとか言い出してよ」

「その話、今日、本人から聞いたよ」


「それで、英語を使ってネットで外国人にバリバリ質問して、独学でプログラムを勉強したんだと。スゲぇよなあいつ」

「その時のAI。いま学校で作ってるらしいよ」


「マジっかよ。ホントにあいつ高校生か?」

-出た。オリジナル。

小さい「っ」今も入るんだ。


「とにかく、あいつ努力家なんだよ。思い込んだら一直線だ。ついでにいろいろ教えてもらっとけ」


「今日、さっそく勉強会したよ。プログラムの?」

「将棋部だろ、おい」

塚ちゃんは大笑いした。


「まあ、正確にはゲームについてなんだけど」

「なんの?」


「<ソルブレイド・オンライン>」

「あ~、純樹(あつき)とやってたな。お前」


「確か、お前んとこのおやっさんもやってなかったっけ?」

「いや、辞めたらしくって、パソコンとゲームもらった。スペック、スゲぇの」


「おやっさん大変だな。海外赴任だろ?」

「いや、その話なくなってさ」


「今は在勤でパソコン会議ばっかしてるよ。んでパソコン新調して。おさがり…」


「ちょうど六時間ほどズレてるらしくて、飯の時間合わないだよね。ホントにいるのかな家に…」

「それはそれで大変だ」


「なんか飲むか?」

「じゃ、ミルクティーで」


「相変わらず甘いもん好きだな」

「あざっス」

ちょっと長話になってきたので、自販機のところで休暇することになった。

オレはミルクティーを開けて、タオルを肩にかける。


「そう言えば、川中の黒木先輩と赤弓削(あかゆげ)くんにも会ったよ。なんであの二人、野球部来なかったんだ?」

「オレは誘いに行ったんだけどな。黒木は中三で始めたバドミントンで全国行ってたらしくって。バド部に入部した」

塚ちゃんはスポーツドリンクを自販機から取り出す。


「赤弓削はなぁ。中三の時、エラー多かったろ。アレ、乱視が進んでたらしい。残念だけど、乱視だけは難しいな。高校の試合はナイターもあるし」

塚ちゃんも少し視力が悪い。それでも乱視がないからやっていけてる。


「中学で体育系は辞めるつもりだったらしい。高校では数学オリンピックに集中したいとか、言ってたし」

「数字オリンピック?なんだそりゃ」


「文字通り、数字の問題解いて競い合う大会だよ。黒木も出てるぞ、数学オリンピック。二人とも中学から『aクラス』ってな、上位ランクだ」

「さすが文武両道の川中だなあ」


「そういや黒木先輩と赤弓削くんは、なんで今はパソ部なんだ?」

「なんだそりゃ、初耳だぞ。金田かな?」


「黒木は三年になって、体育科から普通科に行ったよ。お前と同じで不調で退部してな」

「そうか…。純樹が桂間先輩もバド部だったとか言ってたけど」

「桂間か。あいつ二年の時大ケガしたんだ。その時はオレ同じクラスでな」


「そういや、あいつには世話になったよなあ。『チアはそろえられんけど、ブラバン口説いた』とか言ってな。あの応援団のときの学ラン、黒木のらしい…」


「野球部のことは聞かないんだな」

「塚ちゃんだって話さないじゃない」

野球部は先日敗退して、塚ちゃんの高校野球は終わった。

悔しくないはずはない。

負けたときの悔しさなんて、今までも、もういやと言うほど二人でかみしめた。


次期主将が誰なのか少し気になったが聞くのは野暮だ。


「いい傾向だ」

「必ず大学で一緒にやろうよね」

オレが投げるなら、捕手(あいて)は塚ちゃんだ。


「勉強は手を抜くなよ。オレも推薦は無理みたいだからがんばるしよ」

「おう」

ちょうど、ジュースもカラになった。


「そいじゃな。リハビリがんばれよ」

「ああ。コレありがと。塚ちゃんも受験がんばって」

幼馴染みと再び約束を確認できてスッキリした。


再びプールに戻ると、下半身強化のため、オレは歩き始めた。

いつもありがとうございます。

ここまでお読みいただき

ありがとうございます。


さて、今回は憧れの兄貴分との再会です。

部活の先輩って引退すると妙に色気が

あるというか、哀愁があるというか。


「マイプレシャス」のネタは大好きな

指輪物語のお話からです。

ハリポタにも同じように出てましたので

主人公は勘違いをしています。

イギリスでは「陛下」とかいう意味でも

使われているみたいです。

金田は銀嶺の騎士のつもりなんですね。


さて、次は残念ミーツ残念。

ヒロインの会合です。


なにとぞお付き合いくださいませ。

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