幼馴染みの兄貴分はもう歩き初めててやっぱカッコイイ
今日は<ソルブレイド・オンライン>の対戦で、部活をやったくらいの時刻まで学校にいた。
こんな感じは野球部を辞めてから久しぶりだ。
晩飯までに習慣になっているジムへ行き、リハビリとプールトレーニングをしていると、野球部の主将、幼馴染みの塚地駆琉と久しぶりに出会った。
「久しぶりだな。マサ」
「主将。お久しぶりです」
「オレは今日は整体だよ。調子どうだ?」
「筋力は戻ったみたい…です。少し投げてみたいくらい」
「オレの顔見たせいだ。敬語いいぞ。焦らず行こう」
屈託なく笑う彼が幼馴染みの顔になった。
「塚ちゃん。久々だ…」
「まあな」
塚ちゃんはケガをして以来、膝の整体を続けている。
肘を痛めたオレにこのジムを薦めてくれたのも塚ちゃんだ。
このジムには専門の理学療法士がいて、ゲガからの復帰を手伝ってくれる。
スポーツをしていると、ケガはつきものだが、したくてするヤツなどいない。
名選手の格言と経歴を見ても「活躍するにはケガをしないこと」とある。
しかし、オレは最終的に運だけがそれを左右していると思う。
オレも肘に違和感を感じたのは甲子園当日だったし、ケガを気のせいだと思いたい気持ちも強かった。
「金田のとこに世話になってるらしいな」
塚ちゃん情報早いな。
「パソ部かと思ったら、将棋部だって?あいつ相変わらずだな」
「なんだかいろいろあったみたいだよ」
「あいつ小学生の時から英語塾に行っててさ。『エリートだ』なんて思ったりしてたんだけど、やる事にはちゃんと理由があってな」
「そん時はおばあちゃんがイギリス人で。んで、じいさんが亡くなって淋しそうだから、ちゃんと母国語でお話ししたかったんそうだ」
「それで『マイプレシャス』とか言ってたんスね」
「それはネタだ。出所、映画にもなったイギリスの本だよ。『愛しい人』とかいう意味だって言ってたぞ」
なんか、オレも小さい時に観たような。
「同じ将棋教室に行ってたこともあって、中学でもよく話してたんだが、あいつ中三ん時、突然パソコンでプログラムするとか言い出してよ」
「その話、今日、本人から聞いたよ」
「それで、英語を使ってネットで外国人にバリバリ質問して、独学でプログラムを勉強したんだと。スゲぇよなあいつ」
「その時のAI。いま学校で作ってるらしいよ」
「マジっかよ。ホントにあいつ高校生か?」
-出た。オリジナル。
小さい「っ」今も入るんだ。
「とにかく、あいつ努力家なんだよ。思い込んだら一直線だ。ついでにいろいろ教えてもらっとけ」
「今日、さっそく勉強会したよ。プログラムの?」
「将棋部だろ、おい」
塚ちゃんは大笑いした。
「まあ、正確にはゲームについてなんだけど」
「なんの?」
「<ソルブレイド・オンライン>」
「あ~、純樹とやってたな。お前」
「確か、お前んとこのおやっさんもやってなかったっけ?」
「いや、辞めたらしくって、パソコンとゲームもらった。スペック、スゲぇの」
「おやっさん大変だな。海外赴任だろ?」
「いや、その話なくなってさ」
「今は在勤でパソコン会議ばっかしてるよ。んでパソコン新調して。おさがり…」
「ちょうど六時間ほどズレてるらしくて、飯の時間合わないだよね。ホントにいるのかな家に…」
「それはそれで大変だ」
「なんか飲むか?」
「じゃ、ミルクティーで」
「相変わらず甘いもん好きだな」
「あざっス」
ちょっと長話になってきたので、自販機のところで休暇することになった。
オレはミルクティーを開けて、タオルを肩にかける。
「そう言えば、川中の黒木先輩と赤弓削くんにも会ったよ。なんであの二人、野球部来なかったんだ?」
「オレは誘いに行ったんだけどな。黒木は中三で始めたバドミントンで全国行ってたらしくって。バド部に入部した」
塚ちゃんはスポーツドリンクを自販機から取り出す。
「赤弓削はなぁ。中三の時、エラー多かったろ。アレ、乱視が進んでたらしい。残念だけど、乱視だけは難しいな。高校の試合はナイターもあるし」
塚ちゃんも少し視力が悪い。それでも乱視がないからやっていけてる。
「中学で体育系は辞めるつもりだったらしい。高校では数学オリンピックに集中したいとか、言ってたし」
「数字オリンピック?なんだそりゃ」
「文字通り、数字の問題解いて競い合う大会だよ。黒木も出てるぞ、数学オリンピック。二人とも中学から『aクラス』ってな、上位ランクだ」
「さすが文武両道の川中だなあ」
「そういや黒木先輩と赤弓削くんは、なんで今はパソ部なんだ?」
「なんだそりゃ、初耳だぞ。金田かな?」
「黒木は三年になって、体育科から普通科に行ったよ。お前と同じで不調で退部してな」
「そうか…。純樹が桂間先輩もバド部だったとか言ってたけど」
「桂間か。あいつ二年の時大ケガしたんだ。その時はオレ同じクラスでな」
「そういや、あいつには世話になったよなあ。『チアはそろえられんけど、ブラバン口説いた』とか言ってな。あの応援団のときの学ラン、黒木のらしい…」
「野球部のことは聞かないんだな」
「塚ちゃんだって話さないじゃない」
野球部は先日敗退して、塚ちゃんの高校野球は終わった。
悔しくないはずはない。
負けたときの悔しさなんて、今までも、もういやと言うほど二人でかみしめた。
次期主将が誰なのか少し気になったが聞くのは野暮だ。
「いい傾向だ」
「必ず大学で一緒にやろうよね」
オレが投げるなら、捕手は塚ちゃんだ。
「勉強は手を抜くなよ。オレも推薦は無理みたいだからがんばるしよ」
「おう」
ちょうど、ジュースもカラになった。
「そいじゃな。リハビリがんばれよ」
「ああ。コレありがと。塚ちゃんも受験がんばって」
幼馴染みと再び約束を確認できてスッキリした。
再びプールに戻ると、下半身強化のため、オレは歩き始めた。
いつもありがとうございます。
ここまでお読みいただき
ありがとうございます。
さて、今回は憧れの兄貴分との再会です。
部活の先輩って引退すると妙に色気が
あるというか、哀愁があるというか。
「マイプレシャス」のネタは大好きな
指輪物語のお話からです。
ハリポタにも同じように出てましたので
主人公は勘違いをしています。
イギリスでは「陛下」とかいう意味でも
使われているみたいです。
金田は銀嶺の騎士のつもりなんですね。
さて、次は残念ミーツ残念。
ヒロインの会合です。
なにとぞお付き合いくださいませ。




