お勉強会でオレの師匠とオレの弟子ってことか
「さて、少し落ち着いたので飛騨くんの誤解を解いておこう」
対戦の終了処理の後、金田部長がホワイトボードの前に立った。
自然とみんながテーブルの周りに腰を下ろす。
「まず、飛騨くんは近接戦闘が多いから誤解が生じてしまったのだと思う」
「<ソルブレイト・オンライン>は物理処理をかなりリアルに表現しているが、そのすべてが全員に行われている訳ではないんだ」
ボードに大きな菱形を描いて、少し離れた場所に自機らしいひこうきの絵をいくつか描く。
『ひこうき』というのはそんな感じの絵だからだ。
「我々のように遠距離射撃をしている者はこういうことになる」
金田部長の話は次のようなものだ。
サーバーにたくさんの人間が同時にアクセスするようなゲームでは、主に『座標的な処理』と『描画的な処理』の二種類が行われている。
『座標的な処理』はどれだけ離れていても、ほぼ同時に行われている軽い処理。
『描画的な処理』は近接しているものに行われる、見た目の画像処理も同時に行われている重い処理なのだそうだ。
『衝突判定』はこの二つを合わせて表現されている。
ボス戦ともなると、少し遠いところからもボスが見た目に画像処理されているので、当然処理は全体に重くなる。
「おそらく、ボスの出現条件を満たしたときに、その空域にいた機体だけを専用サーバーに転送しているだろうね」
ボス出現の演出でザコ敵がいなくなったり、しばらく出現エフェクトをなどを出している間に転送しているらしい。
ほぼ処理落ちがないボス専用サーバーでも、衝突攻撃中の炸裂弾の着弾時、オレだけ処理落ちしていたのだそうだ。
金田部長がメモしながら見ていたのは、攻撃の組み合わせによってオレたちに処理落ちが起きないかのチェックだった。
最後の突撃時に超電磁砲の着弾を先にしたのは保険だったという。
炸裂弾、衝突攻撃+<防御無効>、炸裂弾、機体貫通、炸裂弾…
と、サンドイッチにすることで、処理が重い衝突攻撃の<防御無効>を確実に発動させた後で、機体貫通のダメージを処理させようとしたとのことだった。
また、「中味を定義する設定に物理性はない」というのは、シューティングゲームならでは、弾の命中を優先するための仕様によるとのことで。
金田部長は「あくまで推察で、私がならこうするという話だが」とただし付きで説明した。
1.貫通するかの判定。1/0?
2.弾丸の持ち点判定。命中後存在できるか。
3.攻撃力など効果によるダメージ計算。
4.装甲能力やダメージ軽減要素によるダメージ再計算。
5.命中した敵の守備力残量が「0」にならないか判定。
これなら実体弾でもビームでも同じ方法で判定できるのだそうだ。
貫通能力のある徹甲弾でも、命中時点で持ち点を消費すれば貫通はできない。
また、荷電粒子砲のような武器は、持ち点を高く設定することで、ボスすら貫通させることができる。
弾丸の攻撃なので、機体の衝突のような計算もなく、設定された攻撃力によるダメージが計算される。
あと、炸裂弾のようにダメージ軽減要素の影響を多く受ける攻撃の方が<防御無効>の効果を有効に活かせるというだけだったようだ。
マニアックな貫通設定を妄想したのがちょっと恥ずかしい。
それでも、ゲームではないような感覚を与えてくれる<ソルブレイド・オンライン>は偉大なゲームだと思う。
「ところで、今回の戦利品なんだが…」
金田部長が今回の対戦結果をディスクトップの画面に表示した。
各機の戦績などが表示されている。
「やはり、<ク・ラヴ・バラム>の撃墜者は飛騨くんだったようで、2セット目の<防御無効>が手に入ったよ」
「ボクが撃墜していたら何が出たんでしょうね」
ボスのドロップアイテムは撃墜者によって変わることが多い。
使えない武器が出ても、ボス撃破のありがたみが薄れる。
「これは入団祝いに角野さんに装備してもらってはどうでしょう。彼女も二枚盾ですし」
「獲得者は飛騨くんだ。任せるよ」
「じゃあ、もらってくれる?角野さん」
「わ、わた…たた…しが?…きゅ~…」
頭から煙を吹いて角野睦美はテーブルに突っ伏した。
「あれ?この娘、気絶してるね」
「お姫様ダッコ!」
桂間先輩かイスをスターンと弾き倒して立ち上がった。
「しません。桂間先輩お願いします」
ここまでお読みいただき
ありがとうございます。
とりあえず、閑話休題的なお勉強会でした。
次回はちょっと人間ドラマ的な
お話になります。
引き続きお付き合いくださいませ。




