JKがみんな会話レベルで文字打てる訳ではないそうです
『くそったれっ、結局、また機体貫通で決められてしもた』
「黒木くんの釣り餌…いや、協力のおかげだよ」
金田部長がオープンチャットに入る。
『ちっ、こんな時だけしゃしゃり出やがって』
黒木先輩の声が不機嫌になった。
『クロ先輩はいい餌でした。集団戦としては理想的です。次もお願いします』
『次てなんや、アンカーフック、マジで吐くで。お前もやれ』
『エストラポイント、デカすぎや。結局、対戦結果も負けやな』
『終了処理に入りますので、それではまた…』
総合ポイントはザコ撃墜数で負け、ボスへの攻撃で若干の勝ち。
撃破ポイントで逆転しての結果だった。
『ちょい待て。金田、聞いてるか?』
「なんだい?」
『飛騨のチートの秘密がわかったで、障壁無効やな?』
「ほう、あの一回で…さすがだね」
-え、金田部長、言っちゃうんですか?
『<ク・ラヴ・バラム>の腕とぶつかった時に状態異常が出とったが、履歴を見たら障壁無効やった』
そう言えば確かにぶつかっていた。
黒木先輩、ボスに好かれてたもんな。
『ボスの戦利品でアレと似たような能力を持ったモンが出たんやろ』
「<防御無効>という。せいぜい気を付けたまえ」
-金田部長、わざわざ本当に言っちゃうんですか?
『アンカーフックと<防御無効>か。ええ土産になったわ』
「また戦ろう」
『首、洗っとけ』
<赤>のふたりがログアウトした。
「これはどういう状況?」
ヘッドマウントディスプレイを外した純樹がジト目でオレを睨む。
この間、オレは角野睦美に顔を持たれたままだ。
「見つけました。私の英雄様…」
「英雄?」
彼女はハっとしたように慌てて手を放す。
「そ…その…あの…」
メガネを両手ではさむように直すと、携帯を取り出し何やら書き始めた。
『緊張で声になりません。私の英雄様。まさかあなたに会えるなんて。光栄です。私、角野睦美です。一年生です。』
「あ、ああ、どうも。飛騨です。二年です。キミ、文字打つの早いね」
『そんなことないです。ヒダさんとおっしゃるんですね。文字は飛騨ですか?』
「そうだよ。あってる」
『下のお名前は?』
「マサトオだよ」
「マー兄ちゃん、なんで小学生と話してるみたいになっちゃってんの?」
純樹が思わず突っ込む。
すまん、オレの対女子スキルは小学生の親戚仕様なのだ。
「か、香駒くん。…その『兄ちゃん』って?」
「ボクとは話せるんだ。マー兄ちゃんはお隣さんで、幼馴染なんだ」
「マイヒーローのお隣さん!香駒くん尊敬です」
「それで尊敬されてもボクは嬉しくない」
「角野さんは<ソルブレイド・オンライン>をやってるの?」
「はひ…は…」
『はい。半年前くらいからやっています。機体はクタナ・フォラスです。英雄様と同じ機体に乗りたいとも思ったのですが、英雄様が隊長機で私がその部下みたいにしたくて。機影が少し丸いフォラスがちょうどそんな感じになるので。もちろん、二枚盾です』
角野さんは興奮気味に書き綴った。
「二枚盾なんだ。スゴイね」
『すごくないです。恐縮です。真似事です。機体貫通スゴくかっこいいです。まさかライブで見られるとか、幸せすぎて、変なスイッチ入ってました』
「なんだかスゴイね。マー兄ちゃん。こっちでもファン作っちゃうとか」
純樹がなんか面白くなさそうにしている。
え?もしかして、この娘のこと好きだった。
-いかんな、千成ちゃんが感染してる。
-はっ!そういえば、桂間先輩は…。
あああ、両手口に当てて、キラキラした目でこっち見てた。
ニヤニヤが止まらない状態だ。
絶対、変な事たくさん考えてる。
「香駒くん、『こっち』とは何のことですか?」
「マー兄ちゃんは去年まで野球部のエースだったんだよね」
-エースって…。この野郎!
「エースとは、投手ということですか?」
「うちの学校の甲子園初出場、それと一回戦勝利に貢献した投手だったんだ。そこは本当に尊敬してる」
-純樹。お前。
「その時、肘を痛めてたのに黙って続投して、野球がしばらく出来なくなって、転入したクラスに馴染めなくて、ウジウジ図書室に逃げてくるような人ですが」
-純樹。お前~。
「ボクの自慢の兄ちゃんでさ。不器用で困った人なんだよ」
「純樹。お前…」
『甲子園、スゴイです。憧れます。野球よくわかりませんが、本で勉強して今度、応援に行きます』
「それが…、高校の間は復帰は無理なんだよね。今はこの将棋部で世話になっているというか。入部してないんだけど」
「とりあえず、チーム<超急戦>には入隊してもらったのだよ」
「え?<超急戦>って、<白の旅団>一位のですか」
「うん、将棋部が<超急戦>の正体だよ。私とは話せるんだねえ」
「はい、緊張するのはマイヒーローだけです」
『飛騨さんは、飛騨先輩は、その…飛騨先輩でいいですか?』
最早、文字ですら緊張してるのね。
「英雄様はちょっと恥ずかしいから、飛騨先輩と呼んでもらうのがいいかな」
『飛騨先輩、飛騨先輩。飛騨先輩。いいですね、飛騨先輩にします。飛騨先輩は超急戦でプレイするんですか?』
「ああ、そうなってしまったみたい」
『私もご一緒していいですか?邪魔にならないようがんばりますので』
「オレに許可を求められてもなあ。金田部長?」
「私から玉城に話は通すよ。大歓迎さ。ついでに将棋部の方も検討してほしいね」
「それは保留でお願いします」
「本当にハッキリ言うね」
ここまでお読みいただき
ありがとうございます。
妄想系残念美少女、角野ムーちゃん
フルスロットルで登場です。
図書室のモブだと思った方。
無口系と思われた方あれはブラフです。
「飛騨先輩、飛騨先輩。飛騨先輩。いいですね」は自分で書いてて、この娘らしい、ちょっと
危うい妄想部分があふれてて気に入ってます。
次回は、マニアックな話です。
お付き合いくださいませ。
よろしくお願いします。




