チートなんて言ってくれますが下積みあってのモノなんです
「黒木先輩。ボスについては?」
『お前の動画はチェックした。<ク・ラウ・バラム>の攻撃パターンは把握しとる』
宙域ボス-<ク・ラヴ・バラム>-が武装面を旋回させ始めた。
このボスは機獣の中でも足がないだけで人型に近い。
『そやから言うて互角ちゅう訳やないで、そっちは撃破の経験があるからな』
オレの<クタナ・ハルファス>は修繕素子が絶賛修復の真っ最中だ。
守備力残量は七十五パーセントまで回復している。
『ちゅうワケでや。お互いボス戦ではヘタな手出しはナシにせえへんか?』
オレは金田部長の了解を得た。
「いいですよ。その代り助けたりもしませんけどね」
『金田の毒がまわってきとるで』
ギンン
ボスの意匠が再び膨張する。
この間も散々やったがこれは何かデカイ攻撃が来る前兆だ。
『オプテロン。四枚盾展開!』
『了解』
機獣の武装面が回転し、オレと赤弓削くんたちの<グドラー・ゼパル>を捕えると大きな腕のような部分を交差するように構えた。
<グドラー・ゼパル>は四分割して胴体に沿うように収納していた四枚盾を細身の専用腕でクルリと回しながら構える。
それを組み合わせて、機体正面をスッポリ隠した。
ボスの腕に巨大な爪の様なビームが左右に4条生える。
それをクロスするように振った。
爪ビームはランダムに間隔を変え、1キロメートル以上伸びて、横凪ぎに飛んで来る。
オレは機体を反転させて爪の間をくぐる準備をする。
四枚盾を展開した<グドラー・ゼパル>はまともに動けない。
そこを爪ビームが横凪ぎに直撃した。
更にビームはオレの機体の上下をスゴイ勢いで通り過ぎていく。
数百回は繰り返した作業だが、あい変わらず下腹にグッと力が入る。
避けきれないところでは能動的防御を当てに行く。
せっかく回復した守備力残量は半分まで減少した。
『クローハマー。こちらオプテロン。状況クリア。想定のマイナス5パーセントです』
爪ビームの直撃に耐えるとか四枚盾ハンパねぇな。
『上出来や。回復するからちょい待っとけ』
黒木先輩の<トトゥカン・アガレス>が合流するが手出ししない約束だ。
オレはオレで早速、圧縮炉加速をかけて愛機を<ク・ラヴ・バラム>に突進させる。
この攻撃を皮切りに、ザコ敵の<ナグ・クロケル>も戻ってきた。
「純樹。支援たのむ。あと、オレが衝突攻撃で初手を入れたらボス本体にも攻撃だ!」
「了解。まずは通常弾試すよ」
「何コレ?飛騨くん、よく見たらおっさんやん」
クローズチャットで開いたオレのアバターを見たであろう千成ちゃんから文句が出た。
今夜あたり、さっそく銀嶺先輩から『調整』が入りそうだ。
「行くぞ!」
気を取り直して機体をボスの胴体に斜めに入れる。
ガガン
能動的防御でこっちは無傷。
しかし、質量差でこっちが一方的に弾かれる。
ゴゴゴゴンッッ!
合わせて純樹の超電磁砲がボスに着弾する。
自動連射でも使ったのか連続して着弾音がした。
オレは<防御無効>のテンカウントが終わらないうちに、もう一度機体を当てる。
<防御無効>効果中の超電磁砲の攻撃力が高く、ボスの守備力残量が一気に三万ほど減った。
合わせ技とはいえ一回の衝突攻撃で数日前の百倍だ。
<ナグ・クロケル>が衝突で減速したオレの機体に追いついてくる。
「十秒持ちこたえて。いま銃身の加熱処理中」
「いつもながら、やきもきやな。コレ…」
「こんなこともあろうかと。今週中に二十連射の効く新銃身が完成予定だ」
金田先輩が生声で告知する。見えないがメガネクイが目に浮かぶ。
コレわざと話題になるまで秘密にしてないか。
オレは<ナグ・クロケル>を釣ってボスから離脱する。
釣り損ねた<ナグ・クロケル>がオレの背後に回り込むが、その頃には<ガドール・レラジェ>の超電磁砲が復帰して始末してくれた。
釣った方の二機の<ナグ・クロケル>をアンカーフックを巻き上げて軽くぶつけた。
衝突した二機が減速して下がってきたところにオレの<防御無効>が待ち構えている。
すれ違さざまに能動的防御でぶつけると、二機は絡むようにきりもみして爆散した。
「なんか今、斬ったっぽかった」
拡大モニターしていたらしい千成ちゃんが感心する。
「盾ではなく、もはや剣だね。それは…」
「部長。弾、変えましょうよ?」
「そうだね。<防御無効>で貫通力はいらないから、まずは炸裂弾でいってみようか」
金田部長が何やらメモをしながら指示を出した。
この宙域ボス-<ク・ラヴ・バラム>-の守備力は約五十万。
五行にわたってゲージが表示されているので、ゲージ一本は十万ポイントだ。
さっきの攻撃の合計が三万ほどあったので、確かに弾種を変えればもっと稼げる。
<ク・ラヴ・バラム>が機雷のように漂う極端に遅いファイアボルトを発射する。
オレはとにかく距離を取って、ボスの爪ビームに備えた。
そこにボスを貫くビームエフェクトが伸びた。
周囲を飛んでいたザコの<ナグ・クロケル>も巻き込まれて爆散している。
黒木先輩の超荷電粒子砲はボス相手でも圧巻の攻撃力だ。
単独で一万以上削った。
『出遅れたな。って、なんや!さっきの攻撃、チート級やな。ボスのゲージめっちゃ減っとる』
続けざまに荷電粒子砲の二連撃も入る。
恐らく、この後チームは次の射撃位置に移動するはずだ。
拡大モニターで見ていると、四枚盾を収納している<グドラー・ゼパル>に黒木先輩の<トトゥカン・アガレス>がグレネードを撃ち込んでいる。
「純樹。アレ何やってるんだ?」
「確かにソロには縁がないね。回復弾だよ。修繕素子を撃ち込むんだ。ウチにもあるから緊急なら声かけてよ」
「試しに今、一発くれるか」
「これは<黄の旅団>の特殊武装だよ。榴弾を扱える実弾兵器で使用可能だ。通常購入なら別旅団の武器はポイント三倍だが、最近は旅団間の物々交換がオーケーになったからね。ウチも手に入れやすくなった」
「マー兄ちゃん速度のそのまま」
すぐに弾の当たった効果が現れて、<クタナ・ハルファス>の守備力残量は半分から完全回復した。
「スゴイなコレ。回復魔法じゃないか。SFでいいのか?」
「<黄の旅団>は確かにファンタジー色あるやんな」
いつもお世話になっている修繕素子たち。
他旅団から来た子たちとも仲良くするんだよ。
オレもつられて変な妄想をする。
「すぐには弾倉交換できないから、早めに言ってよね」
「了解した」
後ろからボスの放ったホーミングレーザが迫ってくる。
ボスの攻撃パターンが変わってきた。
バレルロールでそれらを避けて、できるだけ黒木先輩たちと離れた場所を陣取る。
てきるだけ爪ビームをおしつけたい。
<グドラー・ゼパル>がさっきよりボスに近い場所で、四枚盾を展開して陣を張った。
黒木先輩の<トトゥカン・アガレス>も後ろに控えて後衛を務め、近づくザコを撃ち落としている。
ギンン
ボスの意匠が膨張する。
機獣の武装面が回転し、<グドラー・ゼパル>の方を向く。
チャンスだ。
「純樹。すぐ仕掛ける。援護だ」
「弾倉交換あるから<防御無効>までカウントダウンよろしくね」
ボスの腕に巨大な爪の様なビームが左右に4条生える。
オレの方を向いていないから無視して、加速をかけて<ク・ラヴ・バラム>に突進する。
『こっちが囮になっとるがな』
爪ビームが間隔を変えながら伸びいく。
黒木先輩は横凪ぎに迫るビームに向けて、グレネードを発射した。
光学兵器阻害の球体が爪ビームの一部を引きちぎる。
『しもた、コレはこっちが撃てん』
これはちょうど好都合だ。
<防御無効>の効果中にあちらに撃たれたらボスを撃破しかねない。
「接触までテンカウント!九…」
オレは体制を整えて、<ク・ラヴ・バラム>へアプローチする。
「五…四…三…」
かすめるように<ク・ラヴ・バラム>に接触するとアンカーフックを撃ちだして、ボスを軸にスイングバイを仕掛ける。
「今!撃て!」
ドガンッッゴボボボン!
着弾と炸裂音の二重奏がこだまして、ボスが振動する。
そこに、再び衝突攻撃を仕掛けて、三回ほどぶつけた。
<防御無効>の効果時間がぶつかる度に『9』に更新される。
「光学兵器阻害の効果は?」
「まだ残っとる」
「銃身加熱中。十秒待って」
ほとんど速度のなくなったところから、再加速で離脱する。
ちょうど、<防御無効>の効果切れと重なった。
心の中でカウントダウンする。
「これはスゴイね。九万ほど削ったよ」
最初の攻撃の三倍の量。ゲージがほぼ一本なくなった。
金田部長も口笛を吹く勢いだ。
「よっしゃーっ!」
みんなの歓声が響く中、オレも叫んでいた。
アップのパターン変えてみます。
今日もがんばってます。




