投手がみんな目立ちたがり屋だとは思わないでほしいのです
「さっきの突撃は確かに不正解だったね」
「飛騨くんについてった機獣も一掃してたんや。アレはおいしいわ」
-わざわざ得点を引き連れて、確かに敵に塩を送るようなものだ。
「敵を合流させなければ大丈夫だ。超荷電粒子砲は<グドラー・ゼパル>の四枚盾の中でないと準備できない」
とは、金田部長の生声アドバイスだ。
チャットのやり取りで、黒木先輩が<トトゥカン・アガレス>の方に搭乗しているのは間違いない。
今は単機なので、チャージするのは難しいはずだ。
オレはさっきの遭遇ポイントまで、圧縮炉加速で加速した。
「クロッキー潜ったわ。攻撃せずに今は移動だけしてる」
ネコミミ付の千成ちゃんがクローズチャットの時に開く通信モニターに出る。
「純樹。<ナグ・クロケル>が何グループか同じ方向に移動してないか?」
「う~ん、R2の宙域に見かけたような気がするな」
純樹もモニターに出る。
なるほど本人に似せると情報がスムースに入って来るな。
銀嶺先輩あなどりがたし。
とにかく、相手の合流を阻止しないと『赤の三連撃』の体制を作られて攻めにくくなる。
もしかして、金田先輩の<カタン・オリアクス>に照準したというのは、こっちの<ガドール・レラジェ>が砲台になることを想定して、『赤の三連撃』で攻撃を牽制することだったのかも。
これは防御力が異常に高いオレの機体でなければ突破できない。
「マー兄ちゃん、R5エリアで射撃が始まってる」
矢継ぎ早に発射される荷電粒子砲のエフェクトが<ナグ・クロケル>を薙ぎ倒している。
あのペースは二門。
<グドラー・ゼパル>の方だ。
射撃を始めたってことは合流したか、合流直前か。
オレはとにかくそちらの宙域に<クタナ・ハルファス>を奔らせる。
途中、<ナグ・クロケル>に狙われたが、いつもの衝突攻撃で片付けた。
油断しているとまた、敵に引かれてる途中を狙われる。
できるだけ、二機同時にアンカーフックをかけ、敵の減速を少なくした。
相手がどうやってオレを狙ったのか考えていたが、『三本線の一本が遅くなるグループを狙えばオレを狙える』ということなら、この戦法は判断に困るはずだ。
<グドラー・ゼパル>がまだレーダーに入らない宙域で、移動する<赤>の敵影を捉えた。
恐らくコレが黒木先輩の<トトゥカン・アガレス>だ。
『見つかってもうたか!来いや飛騨!』
向こうもレーダーにこちらを捕らえたらしい。
<トトゥカン>タイプも<クタナ>と同じ単発エンジンだ。
ただ、胴体自体が荷電粒子砲になっているので、砲を抱えているような機影となる。
機首をこちらに回して、兵装を開いた。
オレがロックオンしたので、モニターにその様子が拡大投影される。
<ナグ・クロケル>も減速したオレ達に群がってきた。
黒木先輩の<トトゥカン・アガレス>は前面兵装に盾を装備しないで、ビームライフルと六連装グレネードランチャーだ。
「<トトゥカン・アガレス>は二枚盾が多いのに珍しいですね」
『そういうお前は<クタナ・ハルファス>やのに二枚盾なんやな』
<ナグ・クロケル>が迫って来る。
お互いの援護射撃が群がるザコ敵を次々と撃ち落としていく。
爆発エフェクトをまき散らしながら通り過ぎる敵もいた。
『そう言えば、えらい他人行儀で、もしやと思たけど…』
黒木先輩がそんなことは気にした風もなく切り出した。
『飛騨。お前、ワイのこと忘れてる?』
「え?」
『なんやつれないなあ、中学ん時のライバル校やったのに覚えてないとか、悲しいで』
そう言われて思い出した。
「黒木廻」と「赤弓削文真」二人とも投手だ。
高校入学時に二人の名前をクラス割の張り出し名簿で見つけたのに、野球部にいなくて見間違えたのかと思っていた。
「川中の黒木先輩?」
『その通りや!』
これを皮切りに<トトゥカン・アガレス>がグレネードを撃つ。
ポポンッ!
グレネードが発射とほぼ同時に炸裂し、目の前が真っ白になる。
-光学兵器阻害?
キラキラと舞うのは追尾阻害のようなもので、しばらくはその一帯のビーム兵器は直進できない。
それが目の前で更に発光し、爆発した。
能動的防御をしながら後退する。
<クタナ>の後退はスラスターだけでするため、ほとんどスピードが出ない。
拡散する熱エネルギーが強いため、機体にかなりのダメージを受けた。
『約束通り焼いたったで。こんなところで再戦できるとか人生はわからんもんや』
「これは…光学兵器阻害に荷電粒子砲をぶつけましたね?」
光学兵器阻害はビームを反射して閉じ込める玉のような衝突判定を持っている。
ゲームの物理処理としてはこの玉の中にビームのエネルギーを熱として閉じ込めているのだ。
荷電粒子砲ほどになると、玉一杯になるほどのエネルギーになるということか。
『ご名答。初手はまたいただきや』
「うまいね黒木くん。オープンチャットを見事に利用してる」
金田先輩が思わず感心する。
「人間は記憶をたどる時、反射神経が鈍るものだ」
「マー兄ちゃん、そっちに一匹送ったよ」
その声に反応して、背後から近づいた<ナグ・クロケル>をバレルロールでかわし、アンカーフックをかけた。
オレは降って湧いた高機動力に救われて、黒木先輩の視界から消える。
『何ぃ?!』
オレが釣った<ナグ・クロケル>は、オレを追いまわすことができないので、近くにいるもう一人の敵。
つまり、黒木先輩の<トトゥカン・アガレス>に突進した。
<ナグ・クロケル>のホーミングレーザーをかわしながら、黒木先輩がビームライフルで応戦する。
その間に、荷電粒子砲の通常タメを行っているようだ。
<ナグ・クロケル>が正面に入った瞬間、半タメの荷電粒子砲が狙い撃つ。
半タメの荷電粒子砲は貫通力がない。
<ナグ・クロケル>の爆散エフェクトを突き抜けるように、オレの衝突攻撃が<トトゥカン・アガレス>を捉えた。
「純樹!」
『やってもうた!』
恐らく、黒木先輩はステータス異常のアラームを聞く前に超電磁砲に撃墜されたはずだ。
「スゴイでふたりとも。見たかザマ見ろクロッキー!」
ここぞとばかりにオープンチャットで千成ちゃんが叫ぶ。
『どあほ!飛騨の切れ味が異常なだけじゃ』
「いい連携になってきた」
「こっちは雑魚敵撃墜もしてるんですけど」
確かに純樹の八面六臂の活躍がないと、この撃破はない。
「ありがとな相棒!」
「なんだよ。スッゴイ間放置したくせにさ」
「すねんなよぅ」
隣の椅子にいる純樹を肘で小突いて、現実でロータッチする。
「ふんっ。アイスおごってよね」
「了解」
「青春やん。青春やんか。ええなぁ」
「はい。そこ、お花畑展開しない。運転集中」
「そろそろ来るねぇ」
金田部長が言っているのは宙域ボス-<ク・ラヴ・バラム>-出現のことだ。
『復っかーつ!』
どうやら、黒木先輩が再発艦したらしい。
しばらく黙っていたのは何か情報の確認だろう。
『やられたで飛騨。これで一機撃破一機轟沈やな』
『クロ先輩、間違ってます。一機撃破二機轟沈です』
赤弓削くん、わざわざオープンチャットで訂正した。
『……まぁそやけど。飛騨とオレの話やん』
『それでもウチは二機轟沈です』
『ちょ、誰か言うたって、空気読めって』
「漫才みたいでおもろいわ」
『うっさいわボケ!』
「マー兄ちゃんストップ。おでましだ」
オレは念のため<グドラー・ゼパル>に向かっていたが、純樹がそれを止める。
<ナグ・クロケル>が散り散りに逃げていく。
ジ…ジジ…
そのすぐ後にレーダーにノイズが入った。
ギ…ジビギガ…ゴ…
オレの<クタナ・ハルファス>が畏怖を感じて唸っている。
機体に取り入れられた機獣のテクノロジーたちがボスの出現に反応しているのだ。
目の前で<防御無効>の意匠が発光していた。
ボスのドロップアイテムを装備するのは初めてだったので、こんな現象が起きることは知らなかった。
「なかなかスゴイ光景じゃないか」
観戦モニターしていた金田部長も思わず感嘆する。
グゴオオオオオオオォォォォンッッッ!
雄叫びのような音が機体の中に響く。
色彩の宙がほころび、ブロック状に点滅するあいまいな影のようなモノが出現する。
それは濃い闇になると、一瞬で鎧を着た巨大な獣機の姿となった。
ゴ・ギンン…
外郭の表面にライムグリーンの意匠が浮き上がる。
それがパンプアップして、高エネルギーが放出される。
この間はどんな攻撃も無効になるので、誰も手は出さない。
『出よったな巨人!第二ラウンドにふさわしいで!』
-黒木先輩。おいしいところ取りすぎです。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
ペース上げて行きますよ。
がんばります。
点滴、今は外れました。
とっても書きやすいです。
バイタルモニター付いたままですが(>_<。)
さて、次回は対戦でボス戦です。
黒木先輩、主人公食いそうな勢いです。
関西弁キャラはつおいなあ。
引き続きなにとぞお付き合いくださいませ。




