熱い戦いにはメイド服の癒やしが必要なんでしょうか
「ようこそチーム<超急戦>へ。おこしやす~」
駐機カウンターに入ると、いつもの様子と違い、何機もの機体が並ぶ騒々しい感じだった。
整備士AIも何人も動いている。
全員メイド服なのが気になったが他人の趣味には口出ししないでおこう。
チームプレイをしていた時を思い出して、少し懐かしかった。
さっそく、桂間先輩のアバターが無重力を利用して飛んできた。
ポニーテールを含めほとんど本人そのままだが、ネコミミが付いている。
「ネコミミ浮いてますよ」
「今月のアイテムやん。可愛いやろ」
「そういうの勝手に足すとまた銀嶺先輩に叱られますよ」
純樹のアバターも髪が金髪な以外そのままだ。
「コールサイン使う?ウチ普段がナイトワンやからやりにくいわ」
「ホースじゃないんですね。桂馬だから馬かと」
「ウチのほんまの機体はあそこにある<スサ・キメリエス>やねん。加速、高機動重視やし、まさにナイトやろ」
白い<スサ・キメリエス>には黒い馬に跨がる騎士のエンブレムが描かれていた。
くスサ>タイプのシルエットは細身だ。加速はあるが最高速度は<クタナ>に劣る。ただし、取り回しに優れているので接近戦ではかなり強い機体だ。
今日はチームの旗機<ガドール・レラジェ>を出すのでサイン通りの機体になってない。
「じゃあ千成ちゃんでええよ」
「それ好きですね。じゃあ名前で行きましょう」
白い<ガドール・レラジェ>を初めて間近で見たが、やはりでかい。
隣にあるオレの<クタナ・ハルファス>が半分くらいに見える。
<ガドール>タイプが大きく見えるのはやはり後部にエンジンが三機付いているからだろう。加速に時間はかかるが、最高速度は<白の旅団>艦載機中、一番速いはずだ。
「じゃあ、マー兄ちゃんあっちで会おう」
「作戦は?」
純樹と桂間先輩が地を蹴って、<ガドール・レラジェ>に向かう。
それに合わせて整備士AIも動いていた。
-千成ちゃんのAI、ネコミミ付けられら。
「マー兄ちゃんはいつも通りでいいよ。二日前、-時間も付き合わされたから、こっちで合わせる」
-つまり、オレを基準にふたりは機体を敵のレーダーレンジ外に移動させながら、長距離射撃で支援するということだ。
囮をやることになるわけだが…それがベターか。
『ワイの荷電粒子砲の餌食にしたるわ』
黒木先輩のセリフを鵜呑みにすると、<赤の旅団>で荷電粒子砲を搭載できる機体<トトゥカン>タイプなどが出てくるはずだ。
それらも長距離射撃を得意とするから油断できない。
愛機<クタナ・ハルファス>に近づくと、爽やかメガネAIのソルトさんが話しかけてきた。
「って、その服どうしたの?」
「今日から制服はコレなのだそうで。昨晩チームのコーディネイトを担当しているというメンバーから調整をいただきました」
爽やかメガネAIのソルトは見事な執事になっていた。
元々スラッとしたメガネキャラなのでよく似合っている。
「まあ、メイド服でなくてよかったよ」
「私もそう思います」
コーディネーターというのは銀嶺先輩か?
千成ちゃんが銀嶺先輩は服を作るとかも言ってたし。
留学先からまでアクセスするとか、こだわるなあ。
「オーダーは全てクリアです。行ってらっしゃいませご主人様」
-ソルトさん、口調まで変わっとる。
『マスター』がよかったのに。
オレは機体を射出場に移動する。
チーム<超急戦>は<白の旅団>の中でも戦艦クラスを持つチームではないので、旗艦<イルクルムプリビルス>からの発艦になる。
「選択エリア5。コースオールグリーン。発艦どうぞ」
女性管制官!のセリフを聞くと俄然スイッチが入る。
オレは一気にゲームに心酔した。
発艦後すぐに圧縮炉加速をかけ、オレはとにかく速度を上げる。
対戦は指定されたサーバーにアクセスすると、それ以外のゲームユーザーが入れなくなるクローズド仕様だ。
ジャマされずに他チームと共闘も可能だが、他チームの機体を撃墜可能にすれば、撃墜によるポイントが入る他、戦線復帰までの十秒間のペナルティが敵のポイント稼ぎの阻害となる。
今回は二機での対戦なので、敵機撃墜より、ザコ敵を含めたエリア内のポイント稼ぎが勝敗を左右する。
最終的には、エリアボス撃破のエクストラポイントを取るのが重要なのだ。
この宙域のザコ敵は<ナグ・クロケル>という三機一体の動きで、仕掛けてくる機獣だ。
三百六十度、ドーム型の視界に首を巡らせたが、今のところ宙域ザコ以外の機影なし。
同じ色の機動残光が三本、絡むように動いている。
さっそく、いくつかのグループがこちらを見つけて追跡を開始した。
<赤の旅団>の機動残光にも注意しながら、<ナグ・クロケル>をできるだけ自分たちの発艦位置から横に移動するように引き付けた。
最初に追いついてきた三機の内、二機の機獣が見えない支援射撃で次々と撃墜される。
「ソロに慣れすぎたんじゃないの?誘導はナイスだけど、ひと声ちょうだいよ、マー兄ちゃん」
すぐ隣にいるが、ボイスチャットの方がやはり鮮明に声が聞こえる。
「了解。残りはオレがもらう」
-帰ってきた。ちょっと泣きそうだ。
それにしても、守備力五百をあっさり一撃とは恐れ入る。
オレはバレルロールで残り一機の敵弾ほかわすと、すれ違いざまに、アンカーフックを打ち込む。
機獣に引きずられる形で機体がいつもの横滑りを始めた。
機体がブレているうちにアンカーフックを巻き上げ、
<防御無効>を叩き込む。
ガガン!
<防御無効>の放つナノマシンがあらゆる防御スキルが無効にして衝突ダメージを生値で入れる。
ナグ・クロケルは一瞬で爆散した。
「本当に一撃なんやね。スゴイなぁ」
「さあ来い、もういっちょ!」
「やっぱ、ノックやんか」
千成ちゃんのワハハ笑いが聞こえる。
オレはバレルロールで敵弾をかわすと機体を急減速させて敵をやり過ごした。
すかさずアンカーを打ち出して一機を捕らえる。
と、目の前に光のエフェクト…。
これは、荷電粒子砲!
目の前にいたナグ・クロケルはオレが引っ掛けた奴を含めて三機とも荷電粒子砲になぎ取られて爆散した。
敵に引かれていたオレもビームエフェクトをくぐり抜ける。
能動的防御を当てにいったが、さすがに無傷とは行かない。
初手攻撃で敵にオレの<クタナ・ハルファス>の守備力残量が表示されたはずだ。
「マー兄ちゃん!」
「マジっかよ。敵に引かれているところを狙われた?!」
『聞こえるか<超急戦>?オープンチャットで話しながら戦ろやないか?』
「金田部長、オープンチャットで話そうって言ってきてますけど?」
オレはマイクを押さえながら背後の金田部長に伝える。
「いいんじゃない。その方が熱いだろう」
オレはマイクのスイッチを触ってオープンチャットをオンにする。
「参りましたよ。本当に『餌食』になるところでした」
『かかか、<白の旅団>はホンマ硬いなあ』
オレは圧縮炉加速を三連発かけて最大加速度した。
いまの射線上をたどる。
荷電粒子砲の唯一の弱点は溜めに時間がかかることだ。
レーダーに赤の敵が表示される。機影は一機だ。
移動する様子はなく、恐らくこちらを続けて撃とうとしている。
最大加速度なら一瞬の距離だ。
「これはワナだね」
金田部長の声が警告する。
「千成ちゃん先輩、右にプラス5!移動続けて!」
純樹がクローズチャットの方で指示を出す。
超電磁砲の援護射撃がオレの機体を背後から貫通するように何発も飛んでくる。
射撃位置をズラしながらなのに見事な射撃だ。
弾が自分を通過すると辛うじて、放電エフェクトが見える。
味方の弾はノーダメージで貫通だ。
その何発かが当たったらしい。
<グドラー・ゼパル>。
<赤の旅団>の艦載機中、大型クラスの複座式攻撃機だ。
味方の着弾でも、コンソールには敵の情報が表示される。
「減りが少ない、四枚盾を構えてる」
「任せろ!」
仮に今の速度なら荷電粒子砲を真正面から撃たれても、能動的防御の無敵時間でダメージはほとんどない。
『変なチキンレースになってもうたな…』
四枚盾を前面に展開した<グドラー・ゼパル>が視界に入った。
四枚盾展開中はほとんど移動できないので、俗に『砲台モード』と言われている。
『でも、特攻は不正解や!』
荷電粒子砲が発射された。
オレはバレルロールしながら能動的防御で回避する。
速度があるのでやはりノーダメージで通過できた。
が、続けざまにもう一発の荷電粒子砲が火を噴く。
体勢の悪いところを狙われたが、能動的防御を辛うじて当てて、ダメージを半分にする。
<グドラー・ゼパル>が搭載できる砲は二門。
-打ち止めだ!
<グドラー・ゼパル>の四枚盾にかすめるように<防御無効>を当てる。
「純樹、撃て!」
「言われなくても!」
無敵を誇る防御力の四枚盾が紙切れのように穴だらけになる。
無防備になった<グドラー・ゼパル>に三発の超電磁砲が、叩き込まれた。
『おまっとさん』
目を正面に移すと、赤の機体<トトゥカン・アガレス>が待ち構えていた。
目の前に広がるビームエフェクト。
能動的防御をしたが、通過できない。
「これは…荷電粒子砲じゃない」
目の前が真っ白になって、機体をぶつけ損ねたが、ビームから機体がそれて、二ミリほどだけ守備力残量が残った。
『こっちは超荷電粒子砲や!』
機体胴体に砲を搭載する<トトゥカン・アガレス>の特殊攻撃で、エンジンの圧縮炉加速を使用して、荷電粒子砲をチャージする。
チャージ時間が短く、打ち出すビームの持続時間も長い。
ただし、スラスターで機体を旋回する以外全く移動できないリスクを負う。
『逃がさんで!』
黒木先輩は辛うじて通り過ぎたオレを後部兵装のホーミングミサイルで追撃した。
オレも追尾阻害で応戦する。
ダメージがありすぎて、機体の速度が上がらない。
『クローハマー。こちらオプテロン。ステータス異常につき損害甚大。あ、轟沈しました。リスタート中です。先輩すみません』
『オプテロン。そっちはクローズチャットで頼むわ。ダダ漏れや』
機体が爆散してもチャットはつながったままなので、いつもながら微笑ましい。
それにしても、赤弓削くんブレないなあ。
-って、こっちもヤバい。
「マジっかよ!持た~ん」
こちらもミサイルが振り切れず爆散した。
「マー兄ちゃん。こっちは稼ぐから、復帰後、クロッキー先輩のマークお願い」
「申し訳ないっス」
「ドンマイ。まだ一機撃破一機轟沈やで」
「まあ、仕方ない。題して『赤の三連撃』。私がやってた手口だしね」
レーダーで機影が一機に見えていたのは、わざと重ねていたのか。
-金田部長、『ワナだね』だけじゃわかんないっスよ。
「ペナルティクリア。コースオールグリーン。発艦どうぞ」
女性管制官の声でオレは再発艦する。
『四枚盾構えた<ゼパル>瞬殺とか。なんかマジック使ったみたいやな』
<防御無効>のことはまだ相手に理解されてない。
「今度はやられませんよ」
「来いや飛騨。もう一回焼いたるわ!」
お付き合いいただきましてありがとうございます。
がんばってます。
実はいま入院してます。
点滴しながらです。
(゜-゜)←落ちる点滴見るのが好き
機体名を一気に増やしてすみません。
黒木の乗機は最初<バルバトス>だったん
ですが、有名になっちゃって、止めました。
筆が遅いと損ですね。
続けてがんばります。
なにとぞお付き合いくださいませ。




